実の親子が、親子を演じる。
どこか「含むものアリ」な感じが、
よかったですね。
「星の旅人たち」70点★★★★
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カリフォルニアの眼科医トム(マーティン・シーン)のもとに
突然の知らせが届く。
一人息子のダニエル(エミリオ・エステヴェス)が
ピレネー山脈で嵐に遭い、亡くなったというのだ。
息子はフランスとスペインの国境から
スペインを徒歩で横断し、
聖地に行く巡礼の旅の途中だった。
現地に赴いたトムは、息子の意志を継ぎ、
リュックを背負って
800キロの巡礼道を歩く決意をするのだが――。
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死んだ息子の跡を継ぎ、
巡礼道を歩き始める父親の物語。
機知のあるユーモアが満載で
なかなかいい映画でした。
巡礼道は、イメージとしては
お遍路さんを思い浮かべるとなんとなくわかると思う。
そんなに「宗教!」という儀式でもなく、
様々な人がそれぞれの思いや願いを胸に
黙々と歩き、
道中の村の人々は
簡易な宿を用意したりして、彼らを見守っているんですね。
そんななか
始めはむっつりと孤高の旅人を気取る主人公だけど
しかし旅は道連れ。
っていうか、みんな同じ道を歩くので
いやでも顔見知りになり、
やがてそれぞれ事情を抱えたクセ者の男女がパーティーに加わり、
そしてキャラバンはゆく――となっていくんですね。
道々の風景も美しいし、
地元の農家などに集まった巡礼者たちの
ワインを囲んでの食卓、が最高に美味しそうで楽しそうでした。
(結局、メシかよ!笑)
なにより
監督、出演のエミリオ・エステヴェスと
主演のマーティン・シーンが実の親子だっていうのが
この映画では大きなポイントだと思います。
二人はご覧のとおり、名前も違うし、
私生活ではいろいろとアイデンテティの置き場を含め、
葛藤などもあったかもしれない。
それでなくとも父と息子には
いろんな感情がありますしね。
それを超えての二人の競演は
何も知らずに観ても、
チクンと心を射す、何かを感じさせると思う。
と、なかなか魅せる映画なんですが、
欲を言えば、逆にうまくまとまり過ぎていて
さらっとした感触があるのと、
やたら長く感じるのが残念。
なぜ長く感じるかというと、
巡礼道を丹念になぞっていて、
しかも
行く先々でちょっとした事件が起こり、
一晩あけて、またポップミュージックをバックに歩く、
という構成の繰返しが単純で退屈なのですよ。
シンプルさゆえ、ストレートに伝わるものはあるけれど、
もうちょっと凝ってもよかったかな、と。
この巡礼道、日本人も年間数百人が歩くそうです。
体力には自信があるんで
行ってみたいなあとちょっと思いました。
ちょっと、ね。
★6/2(金)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかで公開。
「星の旅人たち」公式サイト
あの映画がかなり良かったので、比べてしまいそうな気がして観に行きづらいです…。
同じ巡礼道ですね。
厳密にいうと
こちらはルートが短いコースのようですが。
チラシもそっくりだった!(笑)
右手に向かうか、左手に向かうか。
こちらの映画の特長は
ホントに“親子”の微妙なニュアンスにつきると思います。
ほのかに“哀”があるんですよねー。