ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ぼくたちの家族

2014-05-23 20:08:33 | は行

監督、これが20代最後の作品なのか!
どんだけ達眼~


「ぼくたちの家族」75点★★★★


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東京郊外のニュータウンに住む若菜一家。

玲子(原田美枝子)は
長男(妻夫木聡)と次男(池松壮亮)を育て、
小さな会社を経営する夫(長塚京三)と、のんびり暮らしていた。

が、玲子は最近ちょっと様子がおかしい。
物忘れが多く
真っ暗な部屋で電気もつけずボーッとしていたり。

長男と夫に連れられて病院に行った玲子は
なんと余命1週間と告げられる――。

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巧いなあ、石井裕也監督。


なんといっても
母親が突然病気になり、
どうしていいか分からなくなる男三人の

その
「どうしよう」加減が巧すぎる。

フリーズする夫
全てを背負うとする長男
冷静さを装う次男。

ここに娘が一人いたら、全然違うんだよなあと思いつつ、
他人事のようで、他人事じゃない
家族の内情に引き付けられました。


設定だけみると“お涙”な題材だけど
淡々としつつ思わぬアクションで来られるので、
いわゆる
病気モノの定番とは違う後味がある。


例えば冒頭、まだ元気な玲子さんが
友達とランチしていた街から
郊外の(田舎の)自宅まで延々と電車に揺られて帰る場面の

その時間の経過に写る
彼女のぼんやりとした、あきらめの感情とか

男たちが相談事をする、
地元の中華料理屋の中途半端さとか

病気とは直接関係ないような描写が
妙に心に残るんですね。

そこに
いきなりシビアなお金の問題が
ドカンと降ってきたり。

少女のようになっていく母親役の原田美枝子さんが
無邪気に本音をズバズバ言い出して
男たちがオロオロする場面には吹いたなー。

妻夫木氏の“男の不器用さ”も巧いけど
この映画では次男役の池松壮亮氏が
すごく自然で、光ってました。


★5/24(土)から新宿ピカデリーほか全国で公開。

「ぼくたちの家族」公式サイト
コメント
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