ルイガノ旅日記

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『憧れの東洋陶磁~大阪市立東洋陶磁美術館の至宝』@九州国立博物館

2023年07月16日 | 絵画や音楽
3年前の春以来、久しぶりに九州国立博物館に行ってきました。2020年の春と言えば、日本でも新型コロナの感染が広がりはじめた頃。その時の特別展は、17世紀から19世紀までのフランス美術作品を集めた特別展『フランス絵画の精華』でしたが、感染拡大防止のため会期途中で終了となったことを憶えています。コンサートや展覧会など多くのイベントが中止となり、デパートや飲食店の時短営業や休業が厳しく求められた時期。今なおコロナ感染は続いているとは言え、世の中の動きがずいぶん変わってきたことに感慨深いものがありました。


こちらは、反対側(太宰府天満宮側)からの眺め。左右対称の構造で、チタンブルーの屋根は160m×80mと、サッカー場がすっぽり入る大きさです。
太宰府天満宮に隣接する丘陵に建つ九博は、なだらかな曲線を描くチタン製の大屋根と、深く濃い藍色のグラスウォールが印象的な建物です。この日はあいにくの曇り空で、ガラスに映りこむ空と雲、樹木の緑が今ひとつ冴えませんが、晴れた日には周囲の自然と壁面が一体化して、この大きな建築物が自然に溶け込んで見えます。


九博では今、大阪市立東洋陶磁美術館のコレクションを展示する特別展、『憧れの東洋陶磁』が開催されています。【会期:7月11日(火)~9月3日(日)】


世界有数の陶磁器コレクションを所蔵する大阪市立東洋陶磁美術館の名品を軸に、112点が展示された会場。個人的に目に留まったものをいくつか紹介したいと思います。(一部を除いて写真撮影OKでした)


【白磁刻花蓮花文洗(はくじこっかれんかもんせん)】《重要文化財》11-12世紀 中国(北宋時代)大阪市立東洋陶磁美術館
「洗」とは、大型で底部が深く広い器のこと。蓮の花の文様が、アイボリー・ホワイトの肌理にほのかに浮かび上がっています。極めて薄い造りで、光が透けて見えるほどだそうです。


【紫紅釉盆(しこうゆうぼん)】15世紀 中国(明時代)大阪市立東洋陶磁美術館
天青色釉の上に酸化銅を加えて焼くことにより、外面は鮮やかな紫紅色をしています。ひびのように見える内側の線は、「蚯蚓(きゅういん)走泥文」と呼ばれる模様だそうです。


【粉青白地象嵌条線文簠(ふんせいしろじぞうがんじょうせんもんほ)】15世紀 韓国(朝鮮時代)大阪市立東洋陶磁美術館 
五穀を盛る祭器として使用された器。中国古代の青銅器「簠」を模し、四隅に鋸歯飾り、四面に雷文を施し、全体に白い粘土を塗りつけてあります。「簠」とは飯を盛る器のこと。いかにもどっしりとした作品です。


【青磁刻花牡丹唐草文瓶(せいじこっかぼたんからくさもんへい)】《重要文化財》11-12世紀 中国(北宋時代)大阪市立東洋陶磁美術館
瓶の肩から胴にかけて描かれているのは牡丹唐草の文様。深く彫られた部分に青磁釉が溜まり、文様に美しい陰影を与えています。北宋時代の耀州窯青磁を代表する世界的に知られた名品とのことでした。


【青磁管耳瓶(せいじかんじへい)】13世紀 中国(南宋~元時代)大阪市立東洋陶磁美術館
宋の時代、五大名窯の一つとして挙げられる哥窯で焼かれた作品です。


【青花牡丹唐草文盤(せいかぼたんからくさもんばん)】《重要文化財》14世紀 中国(元時代)大阪市立東洋陶磁美術館
正面、上方、横側、裏側から描き分けられた牡丹唐草文が特徴。放射状に描かれた花唐草文様はイスラム文化の影響を受けたものとされています。


【法花花鳥文壺(ほうかかちょうもんつぼ)】《重要文化財》15世紀 中国(明時代)大阪市立東洋陶磁美術館
法花とは立体的に表した文様部分に各色の鉛釉をかけ分ける技法。壺の二面に花樹にとまる一対の鳥が表されています。


【法花蓮鷺文有蓋壺(ほうかれんろもんゆうがいこ)】《重要文化財》15-16世紀 中国(明時代)九州国立博物館
地に藍釉を用い、胴部には蓮華文を中心に、波濤文様と白鷺文様があしらわれた蓋つきの壺。蓮華文の花など、文様の一部に白檀塗りが施されています。


法花壺で重要文化財の指定を受けているのは、上記2作品のみだそうです。


【青磁獅子形枕(せいじししがたまくら)】12世紀 韓国(高麗時代)大阪市立東洋陶磁美術館
背中合わせにうずくまる獅子が楕円形の板を頭に載せる形の枕。陶枕は暑い夏に適した実用的なものであるとともに、魔除けなどの効用もありました。


【三彩貼花宝相華文水注(さんさいちょうかほうそうげもんすいちゅう)】7-8世紀 中国(唐時代)大阪市立東洋陶磁美術館
シルクロードを通して西方からの文物が大量にもたらされた唐の時代の作品で、ギリシャの酒器「オイノコエ」が起源とされています。確かに、どことなく異国情緒が感じられる酒器ですね。


【博多遺跡群出土高麗青磁】《重要文化財》11-14世紀 韓国(高麗時代)福岡市埋蔵文化財センター
博多遺跡群や箱崎遺跡の発掘調査では、膨大な数の中国産陶磁器が出土していますが、それらに混じって高麗青磁も多く発掘されているそうです。中世の博多湾周辺には、大陸や半島出身の人々が多く居住していたことが窺われます。


【油滴天目(ゆてきてんもく)】《国宝》12-13世紀 中国(南宋時代)大阪市立東洋陶磁美術館
高台周辺を除いて全体に掛けられた漆黒の釉、その内・外面の黒い地に浮かび上がる銀色に輝く斑紋。「油滴」の名は、その美しさが油の滴のようであるところ由来します。こちらは、東洋陶磁美術館が所蔵する油滴天目で国宝に指定されています。


こちらも同じ油滴天目で、素人目には上の作品と区別がつきませんが、高台周辺の釉薬の流れ具合が多少異なっていました。こちらは、ここ九州国立博物館が所蔵する作品で、重要文化財指定です。


様々な魅力的な作品が展示される会場の中でも、この一角は特別な空気感が漂っているよう。それくらい美しい、二つの油滴天目でした。


【飛青磁花生(とびせいじはないけ)】《国宝》14世紀 中国(元時代)大阪市立東洋陶磁美術館
「飛青磁」とは、釉上に鉄斑を散らした青磁のこと。この作品は、とりわけ釉色と鉄斑の現れ方が優れており、ほっそりした頸と豊かに膨らんだ胴部の均整美が見事であることから、国宝に指定されています。


【織部切落四方手鉢(おりべきりおとしよほうてばち)】17世紀初頭 日本(安土桃山時代)大阪市立東洋陶磁美術館
17世紀初め、美濃東部(岐阜県土岐市付近)で焼かれた織部焼の作品。長方形の長辺を一段低くする「切落(きりおとし)」など、奇抜なデザインが特徴です。


【五彩金襽手瓢形瓶(ごさいきんらんでひょうけいへい)】16世紀 中国(明時代)大阪市立東洋陶磁美術館
八角に面取りした瓢形瓶の全面に、赤、黄、緑の絵の具で文様を施し、赤地部分には更に金彩が加えられています。「金襽手」とは、五彩磁器に金彩を加えて豪華絢爛な装飾を施したものを言います。


形も重さも実物そっくりに作られた茶碗型ハンズオンコントローラーを手で触りながら動かすと、正面の8Kモニター上に高精細画像を好きな角度から観賞できる「8Kで文化財 ふれる・まわせる名茶碗コーナー」。


私も体験してみました (^^ゞ


私が選んだのは、重要美術品に指定されている「大井戸茶碗 銘『有楽』」(東京国立博物館所蔵)。織田信長の弟で茶人の有楽斎が所有していたことから、この銘が付けられたそうです。8K画像、さすがに感動ものの高精細でした。


出品されたほとんどの作品を収蔵する大阪市立東洋陶磁美術館の外観。


10月には『古代メキシコ』展が行われる予定です。16世紀、スペインに侵攻されるまで、3千年以上にわたって繫栄したメキシコ古代文明。この特別展も楽しみにしています。

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4 コメント

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おはようございます (AZM)
2023-07-17 06:26:02
九州国立博物館を初めて拝見させていただきました。斬新的で見事な建造物ですね。さすが国立の博物館です。
8K画像はあまり体験できないと思いますので素晴らしい画像なんだと思います。
人間の目で見るより美しいのかもしれませんね
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re:おはようございます (Duke)
2023-07-17 09:09:47
azmさん、おはようございます。
九博は、竣工したての頃はその斬新なデザインに賛否両論があったそうです。
私は大好きで、見ていて飽きません。
行くと必ず写真を撮ってしまいます (^-^)ゞ
陶磁器などのことはよくわからないのですが、実際に見ると魅力的な作品がたくさんあり、期待以上の特別展でした。
8K画像は本当にきれいで、肉眼よりずっと高精細だと感じました。
技術の進歩ってすごいですね〜♪
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東洋陶磁美術館の (hirorin)
2023-07-17 10:45:51
今、そちらに行ってるんですね。
私は、何度も行ってるんですが場所がいいんですよね~
中之島公会堂や中央図書館の近くだし~
倒産した安宅産業のコレクション散逸をふせぐために建てられた美術館ですね。
大阪市や住友家もかなりお金出したとか。
松本清張の「空の城」のモデルの商社。友達が通学の時、安宅産業の上級社員が鉄道自殺したところを目撃してしまって、その日学校休んでました。

宮川香山展や超絶技巧の展覧会もよくやってるし、エリア的にも素晴らしいところなので大阪にいらした時は、ぜひ!

お写真、Dukeさんですか?若いですね~次回のメキシコ展も楽しみですよね。
返信する
re:東洋陶磁美術館の (Duke)
2023-07-17 11:38:24
hirorinさん、おはようございます。
何度も行かれてるんですか。
近くに素敵な美術館などがたくさんあっていいですね♪
この美術館のおかげで、安宅コレクションをはじめとする重要な文化財が散逸の危機を回避できたのですね。
いつになるかわかりませんが、大阪にはまた行きたいと思っています。
見るべきものが多いですし、何しろ食べものが美味しいですよね(笑)
「ふれる・まわせる名茶碗コーナー」、恥ずかしながら私です (^-^)ゞ
妻が撮ってくれていました。
はい、『古代メキシコ』展も楽しみです〜♪
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