パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

出口無し?

2006-02-05 11:02:08 | Weblog
 旧『月光』レズビアン特集のインタビュー、その他、リンクを張り直しました。興味のある方は、クリック、どうぞ。
『月光』インタビュー
Queer Japanの目次
レズビアン雑誌『カミーラ』編集長のインタビュー

 ところで、「デンマークのマスコミが掲載したイスラムの予言者、ムハンマド(マホメット)をテロリストに見立てた風刺マンガに対するイスラムの反発激化。事態収拾のメドたたず。」というニュースが世界を駆け巡っているが、それに関連して、ヨルダンの雑誌だか新聞の編集者が、「デンマークの国旗を焼いたり破いたり、大使館を焼き討ちしたりしている人々は、誰も問題のマンガをみていない」という理由で、「まずは、見てみようじゃないか」と問題のマンガを掲載して、たちまち首になってしまったという。もちろん、掲載誌も没収になったのだろうが、この報道を読んで、ちょっと笑ってしまった。後生、「ムハンマドのパラドックス」とかで語り伝えられるのだろうか、などと。しかし、これこそが「イスラム問題」の根っこにある問題を示しているとも言える。ヨルダンの編集者は、大変な勇気をもってそれを指摘したのだが、残念ながら時期早尚ということになってしまった。(そんなに「時間」はないと思うのだけれどね)

 たしかに、問題のマンガを見たことのあるイスラム人(変な言い方だな…つまり、イスラムを信仰している人々ということだ)は、指導階層にあるほんのひとにぎりだけで、一般大衆はまったく見ていない。しかし、これは大衆の知的怠慢というのではなくて、偶像(イメージ)崇拝の厳禁というイスラムの教義からきている。
 しかしよく考えると、予言者ムハンマドは、あくまでも神の仲介人であって、神(アラー)そのものではない。あくまでも「人間」なのだから、その「似姿(イメージ)」を描いたって何の問題もないはずだ。実際、イスラムの指導者層は、「人々の尊崇を集めている、民族の歴史的英雄を侮辱した」とか、「人々の尊敬を集めている宗教指導者を侮辱することの不適切さ」と論点を一般論にずらして抗議しているのだが、一般大衆は、ムハンマドへの侮辱=アラーへの侮辱と受け取っている。なぜなら、神の仲介人たり得る人間は、天地創造以後、神の直接支配で歴史が終わる終末にいたるまで、ムハンマドただ一人ということになっている(誰がきめたかというと、ムハンマド、その人なんだけど)から、実質上、ムハンマド=アラーってことになってしまう。
 これは、ムハンマドが教義を確立する際に見のがしたか、または意図的に仕組んだ論理的陥穽であり、イスラムが世界でトラブルを巻き起こす根本原因であって、これをただすためには絶対に宗教改革(宗教の世俗化)が必要なのだが、現状では、その兆しすら見えない。いや、トルコなど、「世俗化」の試みもないではないけれど、それは、「資本主義の導入による国力の発展」という視点から考えられているだけで、神学的には、復古調(イスラム原理主義)が幅をきかせている。
 というわけで、どこをどう探しても「出口無し」に見えるが、これからどうなるか。

 ちなみに、「神学論争」というと「無駄な論争」の代名詞になっているけれど、近代化に当たっては絶対必要な論争であったのだ。何故なら、それのみが「生活のスタイル」の根本変革を可能にするからだ。「宗教」は、社会の規模の種類、大小を問わず、そこに生まれ、生きている人々の生活スタイルをきめている。言い換えると、それが「宗教」の社会学的定義だ。「儒教」が「宗教」とみなされているのも、それが人々の生活スタイルを規定しているという意味で、「宗教」とみなされているのだ。日本も同じだ。日本人の生活スタイルは儒教と仏教のミックスだけれど、それを「世俗」として受け入れているのは、鎌倉時代の法然、親鸞らによる仏教の世俗化と、江戸時代における封建制度の確立に伴う、儒教の日本化があったからだ。(大陸の大家族制をコントロールするため、「老幼の秩序」をイデオロギー化した本家中国の「儒教」と、封建制を支える機能集団としての「家」の維持を目的に、江戸時代に形成された日本の「儒教」は、まったく似て非なるものである)

 ……で、ぶっちゃけた話、「神学論争」を軸にした宗教改革が望み薄なら、国力増強のための資本主義化とそれを支える民主主義の導入という「外的要請」が、イスラムの世俗化という目的を達成することができるかどうかということになり、ブッシュのアメリカはそれを狙っているわけだ。そして、新宿の片隅から「支持しま-す」と私は発信しているわけだ。なぜって、今のところ、それ以外に方法があるとは思えないからなのだが……。(もちろん、「近代化」なんて、必ず遂行しなければならないことでもないだろう、という意見もあるだろうが、でも、イスラム社会の大半の人々が、「オレたちは前近代の住人のままでいいのだ!」と考えているとも思えないのだ)

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4 コメント

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諸君・3月号 (うさぴょん)
2006-02-05 19:20:57
本屋で立ち読み・・・しようとしたら、半藤一利さんが見つかりませんでした~~~。クスン。

南原さんが立ち読みされたのは、もしかして2月号でしたのでしょうか?

(発売日で入れ替え時期みたいな感じがしたし・・・。)
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Unknown (南原)
2006-02-06 11:07:49
あ、半藤さんの発言が載っているのは「諸君!」の今月号ではなくて、「文芸春秋」の前号、または前々号、もしくは前々々号あたりではなかったかと思います。もしかしたら、「正論」あたりかも。

 暇があったら、図書館で、そこらへんを探してみて下さい。目次で、女系天皇問題に関する座談会(もしくは対談。でも、たぶん、座談会)をあたってみればよいと思います。

 …すいません、漠然としていて。
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春秋がくさい。 (うさぴょん)
2006-02-06 18:22:04
・・・ですよね。半藤さんだったら。

女系反対ぽいらしいとはちょっと意外で、でもちょっと納得。(半藤さん、昭和天皇好きみたいだし。←私も好きです☆マキャベリストなとこが歴史キャラとして。)

諸君の三月号も天皇継承系問題を特集していて、盛り上がっている人はとっても盛り上がっています・・・。

しかし、皇国史観の負の遺産を引きずったみたいなイデオロギーだけは、たいがいにして欲しいかと思ってしまいます。
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Unknown (南原)
2006-02-06 23:16:51
 なんのかんの言いながら、2ちゃんでも皇室スレはあっという間に伸びるしね。
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