パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

ロボット社会を想像しよう

2008-01-26 22:04:54 | Weblog
 「男子三日あわざれば、刮目して待つべし」と言うが、福田にはがっかりだ。小泉内閣の官房長官を辞してから首相として復帰するまで2年余の時間があったことについて、最初は、この間に勉強を重ねた上での満を持しての再登板であろうと、好意的に理解するようにしていたのだが、その期待は全然大はずれ、勉強なんてちっともしていなかったことがバレバレだ。いつもきょろきょろ自信なさそうな表情で周りを見るばかりで、「刮目して待つ」必要なんかぜんぜんなかった。いったい、なんのために首相になったのか、はたまたなりたかったのか、さっぱりわからない。
 しかし、マスコミも、「不勉強」の点では同じなので、いろいろ批判してみせるが、口先だけだ。

 たとえば、一昨日だったか、福井日銀総裁と太田金融担当大臣(かな?)が国会中継で、今年の経済成長が後半にいたって毀損したことについて両氏とも、明確に「姉歯事件後の改正建築基準法のせい」と言い切っていたが、太田大臣は、そう言った後、「いえ、基準法改正自体は正しいんですけどね」と付け加えていた。マスコミ報道によると、現在の混乱は「慣れていないから」で、時間が経てばOKらしいのだが、本当にそうか? 自分が火をつけたものだから、及び腰になっているだけではないのか? 「吉兆」だって、再開後は大繁盛だそうじゃないか。辛坊は、「《ささやきおばさん》に会いたいと、ミーハー気分で来ている人が大半じゃないの? 時間が経つとわからないよ」とか言っていたが、そのミーハー気分の中に「反マスコミ」的感情はなかっただろうか?(=ないわけがない)

 いずれにせよ、福田登板以後、めっきり官僚統制が復活してきている。いや、実際は、小泉がやめる半年ほど前から、官僚の態度がでかくなってきていたのは顕著なので、あの頃、何かがあったんじゃないかとにらんでいるのだが、それはともかく、辛坊、「規制も必要ならやるべし」と言い切っていた。そして、その例として、アメリカの航空会社が規制緩和で倒産が続出したことに触れていたが、なんて昔の話を! 大体、アメリカの航空会社は規制緩和による大競争を乗り越えて新体制への移行に成功したのではないか? 日本の場合、なぜできないのか?

 しかし、問題はその後。辛坊いわく、「いや、ニッポンはまだまだ大丈夫。ロボットがあるから」といって、日本が誇る(?)人型ロボットをいろいろ紹介していたが、あんなもの、何の役に立つのか! 人間に似ていない芋虫型ロボットとかなら使い道がありそうだが、人間そのものが、何十億もいるってのに。

 鉄道駅の改札口でうろうろしていると、ロボットがすっと近寄ってきて、「ドウシマシタカ?」とか聞いてくるのだが、仕掛けはどうなっているかというと、改札口の天井の四隅にカメラがついていて、それで立ち止まっている人を選別し、ロボットが動くという仕組みらしい。なんというローテク! こんなのを「日本が誇るロボットシステム」なんていったら恥かくぞまったく。それすらわからないから、「不勉強」だというのだが、辛坊以下コメンテーターたちは、「鉄腕アトム」の時代が間近だとか喜んでいた。(「喜んでください」とディレクターが事前に指示し、本番中は後ろで見張っているのだろうけど…なんて悪態をつきたくなるほど、アホらしい場面だった)

 しかし、よく考えてみたまえ。人間と全く同じ機能を持つ人型ロボットが完成し、量産体制に入ってサービス産業に従事するようになったら、どうなるかを。まず、第1に、給料はいらない。なぜなら、彼らは「生活」をしないからだ。仕事が終われば、倉庫にしまわれるだけだ。一方、ロボットに職場を追われた人々は、ロボットとは違って、「生活」をしなければならない。ということは、ロボットを導入した企業(あるいは国)は、その代わりに職場から追い出した人々の生活を無条件で保障する義務が生じるのだ。そして、その義務が果たされてはじめて、ロボット社会はその目的を達することになるのだ。だってさ~、もしも、ロボットに職場を追われた人々が、ロボット生産工場に雇われたりしたら、なんのためのロボット導入かってことになるじゃんかよ~、って、急に変な口調になってしまったが、せっかく人型ロボットのことを論じるならば、そこまで考えて話さないと全部ナンセンスになるよ、と言いたいのだ。

 ところで、「生活を無条件で保障する」って、つい最近どこかで書いた記憶が…そう、ベーシックインカム制度だ。ロボットが多くの労働をになうような社会でこそ、まさに、ベーシックインカム制度は可能になるのだが、実は、現在の欧米と日本は人型ロボットなんかいなくとも、すでに様々なロボットが大量に導入され、それが膨大な生産力を発揮する一方、多くの人々の職場を奪っている社会になっている、というのがベーシックインカム導入論者の意見なのだ。

 いつものこととはいえ、牽強付会なストーリーでごめん。(ちなみに、どこかの科学雑誌で「20世紀においてもっとも成果を上げた科学思想は何か」という質問をしたら、「生活世界」という答えがもっとも多かったらしい。「生活」は、科学におけるもっとも重要なタームになりつつあるのだが、これはまた、「生活」を持たないロボットがまったく時代遅れのコンセプトの産物でしかないことを証明しているのではないか)

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