パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

言い値

2010-12-12 18:44:35 | Weblog
 久しぶりにフリマに。

 ぞろっとした丈の長い、ホームレス風のロングコートがあった。

 「ロンドンをイメージした、ナガシマという(下の名前は忘れた)、少し前になくなったけど、ケンゾーなんかと同世代のデザイナーモノだよ」という。

 「少し大きいかも」と言われたが、袖を通すと、ぴったり。

 「どうせ私が似合うのはホームレス風なんだ」と割り切って、値段を聞くと、800円だと言う。

 1000円くらいだったら買おうかなと思っていたので、「じゃあ買います」というと、「700円でいいよ。」

 本当にホームレスに見られたのかもしれない。

 ガラクタの中に料理用と思われる秤があった。

 肉屋のカウンターなどにおいてあるようなやつだが、業務用ではなく、家庭用のようだった。

 何故って、業務用はもうちょっとごついだろう。

 そんな風に思って見ていると、太り気味の丸坊主で、前掛けのようなものを腰に巻いた、料理人風で、「仕事の合間にちょっと覗きにきた」といった感じの若い男性がこのはかりに興味を持ったみたいで、店主に値段を聞いた。

 店主は、「言い値でいいよ」と言った。

 丸坊主「言い値って…」

 店主「だからどんなに安くても、おたくの買いたい値段で売るよ」

 私は,脇で「ちょっと面白いことになった」と思い、聞き耳を立てた。

 丸坊主「本当にどんなに安い値段でも売ってくれるの?」

 店主「言い値でいいということはそういうことだよ。遠慮なく言って。」

 私は心中、「500円」と思った。

 でも、これまでの経験から言って、この手の品は思ったよりもするので、500円と口に出して言うのは恥ずかしいな、だから「言い値」って、困るんだよななどとあれこれ考えていると、丸坊主の男は、「う~ん」と唸った末、「2000円でどう?」と言った。

 店主はもちろん、即刻、オーケーだった。

 丸坊主「エー? 本当にいいの? じゃあ買う」

 さすが料理人(かどうかわからないが)、金持ち~。

 もし私だったらどう値づけしただろう?

 心中では「500円」なんだが、それはちょっと恥ずかしいので、色を付け、800円てところだろーなー。

 なんだ、買ったコートと同じ値段じゃないか。