みことばざんまい

聖書を原典から読み解いていくことの醍醐味。この体験はまさに目からウロコ。

#37 基礎教理 旧約聖書も新約聖書も隣人愛を教えている

2023年11月24日 | 基礎教理

 
Q.

新約聖書は旧約聖書に基づいて書かれているはずなのに、どうしても内容の違いがある。

例えば、敵に対して“目には目を”(出エジプト記、21-24)と言ってるのに対して、“敵を愛し、迫害するものの為に祈れ”(マタイの福音書、5-44)と全く正反対の事を言ってます。聖書を何度も読み比べてみたのですが、キリストがどのようにして旧約聖書の教えを発展させたのでしょうか?

 
A.

旧約聖書も新約聖書も聖霊によって記されたものです。

パウロがテモテに向って「聖書は霊感によって書かれた」と述べたときに、旧約聖書のことを指していたのです。

同一著者が書いたのであれば、聖書のすべての個所は調和していると考えなければなりません。

リベラリズムが「聖書は様々な人間の編集と加筆によりできた普通の書物である」といっていますが、それは単なる憶測でしかなく、それを証明できる資料はありません。進化論と同様に、「それらしきもの」を見せて、クリスチャンの心を惑わすものでしかありません。

もし高等批評が正しくて、聖書も普通の書物のように、誤りを含むものであるというならば、「どこが誤りであり、どこが正しいかを誰が判断するのか?」という問題が生じます。結局、「聖書は神の霊感によるものであり、誤りがない」という前提を立てることを拒否するならば、聖書を裁くのは人間であるということになり、聖書は「人を上から教える権威」ではなくなってしまいます。ここにおいて人類は指導者を失うことになるのです。

指導者を失い絶対の基準を失うならば、善悪の判断は人間の変わりやすい意見によって左右され相対主義に陥ります。時代によって、民族によって、地域によって、体制によって、個人によって様々な主観があるのですから、人類にとって恒久的・普遍的な基準は失われ、「何が正しくて何が間違っているか」を評価することは、「究極的な意味において」不可能になります。

時代が変われば、かつて罪であったものが賞賛されることになります。ソ連や中国は、神の普遍的な基準を捨て、人間の理性によって善悪の基準を設定することを選びとった結果、時代によって、指導者によって、社会の評価がコロコロと変わりました。最近まで権力を握って道徳の模範とされた人々が、社会の敵としてつるし上げを食らうということが、頻繁にあった。

そして、人々は神を失ったために、時代や社会の多数派の意見に迎合する以外にはなく、「信念」とか「忠実」という言葉は死語になりました。神の絶対的基準を失えば、人生はまったく冗談になってしまうのです。人生は生きるに値しないものになります。ただ、食べて、自己保身にきゅうきゅうとし、快楽と安楽を求めて、たかだか70年の短い生涯を、空しく送る以外にはないのです。

聖書が不変の神の言葉でないとするならば、人生はまったく生きるに値しないものになります。ですから、従来の聖書解釈の原則に加えて、「実存的解釈」というものを取り入れる必要があると考えています。つまり、「そのように解釈すると、人生にまったく意味がなくなってしまうような解釈をしてはならない」という基準です。

例えば、創世記の創造の話は誤謬であり、世界も生物も進化によって生じたというような解釈をすれば、「ではアダムとエバの堕落の個所は間違いなのか?ということは、人類は堕落したのではなく、我々には罪は存在せず、赦しを受ける必要もない。キリストの十字架の死は、単なる善意の改革者が体制側によって死に追いやられたことでしかない。」という結論を導き出す以外にはないのです。これでは、単なるヒューマニズムの亜流でしかなくなってしまい、永遠不滅の善悪の基準も何もなくなってしまいます。ただ社会の流れに流されていくだけの動物的な生き方しかできなくなってしまいます。

さて、旧約聖書において神は復讐を許したが、新約聖書においては敵を愛することを教えておられるというような、本質的な変化は聖書にはありません。「目には目を」は、刑罰の程度を設定するきまりであって、復讐を許容するものではありません。なぜならば、同じモーセ律法において「復讐してはならない」とあるからです。

「復讐してはならない。あなたの国の人々を恨んではならない。あなたの隣人をあなた自身のように愛しなさい。わたしは主である。」(レビ19・18)
旧約聖書も新約聖書も「隣人愛」を教えているのであって、旧約聖書の神は「裁きの神」で、新約聖書の神は「愛の神」であるというような違いはありません。

 

 

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