函館市とどほっけ村

法華宗の日持上人にまつわる伝説のムラ・椴法華。
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黒石市と岩内町

2016年10月24日 11時59分19秒 | えいこう語る

 

地元の祭りの写真コンテストで、最高賞の市長賞に内定したものを、被写体の中学生の少女が、いじめで自殺していたことがわかり、市長が賞を撤回していた。そのことが世間の批判を浴びたのが、青森県黒石市だ。批判に驚いたのか、再度受賞を決めたという混迷ぶりだ。自殺したことが賞の趣旨に馴染まないというより、いじめで自殺に追いやったことを糾弾すべきではないかと思う。地域社会での狭義の常識が表面化した、人間性軽視の出来事だろう。市全体の知的レベルが問われる、事件だ。

だが、似た事件が北海道岩内町で起きた。岩内町は泊原発の隣の町だ。ドキュメンタリ映画「二十歳の無言館」の上映で、主催者が町と教育委員会へ後援を申し込んでいたが「反原発色が強く、政治的主張を行う懸念があり、中立性を損なう恐れがある」として、後援を断ったという。上映会の主催者は、長野県で戦没画学生の遺作を展示する「無言館」の窪島誠一郎氏だ。

同じく後援を依頼された札幌市は「今回の映画は純粋に平和を考える内容である」として、後援を引き受けた。岩内町は、原発の交付金が入っている町だ。町並みの整備状況を見てもその恩恵が実感できる。泊原発の会社、北海道電力を慮っての政治的判断なのだろう。どこに政治的中立がなされているのか、全く得理解できぬ岩内町の判断だ。

岩内町は、昭和29年の洞爺丸台風の日に、大火が起きたことで歴史に名を記す町だ。かつて岩内町に作家の水上勉氏が訪れた時、その大火を小説にしてほしいと頼まれ、そこで上梓され映画にもなったのが「飢餓海峡」だ。戦後、荒廃した日本の闇を暴いた、邦画史上の最高傑作だ。

私も含め「飢餓海峡」で、岩内町を初めて知った方も多いに違いない。そして、岩内町の大恩人でもある作家水上氏の長男が,窪島氏なのだ。個人的な問題もあり、隠れた存在であったが、間違いなく親子である。「無言館」の作品自体反戦の思想が色濃いものだが、反原発につなげようとする考えに、岩内町の政治中立の欠片も見受けられない。自治体学の教授からは「住民の教養を深める支援になるのだから、後援するのは当然だ」との意見も出ている。

黒石市も岩内町も、この件をただの通りすがりの問題としてではなく、人間の尊厳と教養の問題として、住民に考えさせる場を与えてはいかがだろうか。地域社会には、往々にしてこのような問題が生まれる。このような問題を社会教育の場として論議できる環境があれば、地域の人間力は、さらに向上するに違いないと考えるのだが。


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