▼中島みゆきが歌う「地上の星」は、NHKテレビ「プロジェクトX」の主題歌だ。日本人が戦後の復興に賭けた心意気に、注視する内容だ。
▼挑戦者たちの心意気は「日本人ここに在り」を、国民に披露した。ドラマを盛り上げる主題歌は、国民の応援歌ともなった。
▼その番組が6日(土曜)から再始動した。さてこの新プロジェクトの真意はどこに。アベ長期政権下で、戦後築かれた「対米従属」の、制度疲労を国民は実感した。
▼アベ政治は「戦後レジームの解体」を掲げた。国民は「対米従属」からの脱却を期待したに違いない。しかしシンゾウはさらなる『対米従属強化』に出る。
▼このアンバランスが、ますます国家を混乱させ、国民の精神構造を曖昧化した。現キシダ政権はアベ政権踏襲と言いながら、さらに国家混乱の政治体制を続ける。それがアベ政治の踏襲ということなのか。
▼第一回目の「新プロX」は『東京スカイツリー完成』までの内容だ。国家の威信をかけた職人たちの、‟日本人魂”ここに在りを、彷彿させる充実した内容だった。
▼この放送は「旧プロX」の「東京タワー建設」の内容に酷似していた。戦後失った日本人の真の魂を、取り戻さなければならないと、今の国民に訴えかけているのだろうか。
▼「東京タワー建設」は、敗戦後の暗い国家イメージを払拭する「金字塔」的役割を果たした。その建設に関わる職人たちの、責任感と心意気に触れ、感動したのを記憶している。
▼「新プロX」の「東京スカイツリー建設」は、日本の未来を象徴させる「金字塔」の建設にかける、職人たちの気質に、再び感動した。
▼職人魂のように、国家の威信を身をもって実践するという、国家観溢れる内容だ。今の日本にとって、特に忘れてはならない大切な精神ではないかという、そんな思いを伝える番組の構成を感じた。
▼しかし田舎者の私は「東京」という名に、ちょっぴり憧れと嫉妬と悔恨のような、複雑な感覚をもつ。
▼敗戦後の国家の繁栄は、「東京」を中心に始まったからだ。それは東京一極集中を加速させ、地方は置き去りにされ、過疎となったのを、戦後の日本人は、身をもって実感している。
▼東京の復興(スクラップ&ビルド)の時代、私は東京で4年間過ごした。古き良き建築物や、風情ある町並みは、一夜にして解体され、東京は人の住む懐かしく、心が癒される環境が、崩れていくのを実感させられた。
▼一言にいうと、南こうせつが歌う♪「神田川」の詩の世界が、すべて幻になったという状態だ。と言っても今の若い人にはわからないだろう。
▼♪二人で行った横丁の風呂屋
いつも私が待たされた
洗い髪が芯まで冷えて
小さな石鹼カタカタ鳴った♪
▼そんな情緒があった東京が、2023年度の「危機を乗り越え成長する都市ランキング」で、ニューヨークに次いで、世界2位となった。
▼「経済力」「知識と技術」「環境・社会・企業統治」「不動産」の4分野の、分析結果からだという。戦後80年程の間に、世界2位とは素直に喜びたい。
▼しかし、将来の経済力を左右する『環境や社会の多様性』などに関するものは、上位10位から漏れたという。神宮の森の開発なども影響したのだろうか。
▼私の大好きな札幌市。数年後には新幹線が到着する。駅周辺開発が進み、巨大ビルが林立しているという。
▼札幌の特徴は、ビルが立ち並んでいても、まちの上空に青空が広がっている、そんな大地の中にある都市だ。今や新幹線開業を控え『リトル東京』化しているようだ。
▼このような札幌の都市開発に、私は違和感を抱く。東京のまねではない、北海道の自然あふれる「SDGs」の見本となる、未来都市に挑戦してほしいと願うからだ。
▼と思っていたら、札幌市内の丸山公園で、市民が楽しみにしている桜の下での「ジンギスカン」が中止されたという。
▼周囲の住民の、ゴミが捨てられる、うるさい、臭いがするという苦情からだという。春を待ちわびた道民の、満開の桜の下。そこではジンギスカンでビールなのだ。
▼桜の季節に、札幌中がジンギスカンの匂いに包まれる。それが広大な北海道の札幌の、風物詩ではないか。トウモロコシ(玉蜀黍)の焼く匂いと同様に。
にぎわいて幅広き街の春の夜の
成吉思汗の焼くにほいよ
▼石川啄木なら、このように読むに違いない。
大都会にならなくてもいい。新幹線などなくてもいい。
▼北の大地に、サッポロという。自然環境に調和した、夢のまちをつくってほしいものだ。
ジンギスカンを囲んで、人間も熊も鹿もキタキツネも楽しむ、そんな夢のまちであってほしい。
▼そして、「新プロジェクトX」は、過度な日本人魂を奮い起こさせる内容で、あってはならないと願う。
▼総務省に管理された『新プロパガンダX 』であれば、放送魂も腐ってしまう、国営放送に成り下がってしまうからだ。