私は今、フィレンツェにいる
生まれた町から遠く遠く離れた空の下
それでもあなたのいる空よりは遠くない
今ここに生きてふと思う
私はあなたの生きたかった人生を生きてるのではないかと
でも私はあなたの身代わりに生きているのではない
私のほとんどはあなたで出来てるのだから
私の選ぶ道があなたの選びたかった道と同じだとしても不思議はない
きっと私は、あなたが生真面目な気質の中に閉じ込めた好奇心
いつも私の事が心配で修学旅行にまで付いていくと言ったあなたは
今でも私の事が心配ですか?
人よりも自分の信じた道を行こうとする私を
今でも叱るでしょうか?
もう二度とあなたの厳しい声を聞く事は無い
もう二度と私のしどろもどろな言い訳をあなたが聞く事も無い
もうあなたがどこにもいないことを知っている
それでも今日だけ、あなたに声をかけるとしたら
どうか知らせたい
私は今、しあわせです
何もない、本当に何もない弱々しい身だけど
今、この美しい景色の前にいて
それを写真に撮ることができて
今ここに生きて、しあわせです
だからどうか私の事を案じたりせず
あなたがずっと安らかでいられますように
最愛の父の命日に、冥福を祈って