高校卒業したら「湯布院の森」号に乗って湯布院へ旅行に行こう。それが私たちの約束だった。でもそれは、私の受験失敗によって敢えなく先送り。そして彼女は地元の大学へ、翌年私は進学で上京し離ればなれに。それでも、いつか行こうねぇ、そういいつつ15年、16年？ま、数えるのも億劫なくらいの月日が経ち、ようやく旅立ちの日が来た。
なんだか不思議だ。15年も約束が果たされなかったのも不思議だし、15年後の今叶うのも不思議。
でも15年も果たされなかった約束という残念な感じでなく、15年経って果たされた約束という特別なドラマティカルな感じがする。それはお互いが社交辞令ではなく、いつか行こうって本気で言い続けていたから。しかしである、15年も疑うことなくのんびりと、行こうねぇっていいつづけていたなんて実にまぁ私たちはのんびりさんだ。この調子でのんびり暮らしていたら300才くらいまで生きてしまいそうで恐ろしいが。
とにもかくにも15年後の3月「湯布院の森」号に乗り込み、私たちは卒業旅行に出発した。