夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

河合神社

2014-04-23 23:17:06 | 旅行
この日は、後鳥羽院の和歌と信仰との関わりの深い神社巡りで、下鴨(しもがも)神社へ。
京阪電車に乗って出町柳駅で降り、徒歩十分ほど、まず摂社の河合神社へ参る。


河合神社は下鴨神社内にあり、神武天皇の母神・玉依姫命(たまよりひめのみこと)を祀る。
女性の守護神・美麗の神として近年ことに崇敬を集めているそうで、多くのご婦人方が参詣されている。
美人になる御利益があるというが、女性の美への欲求は、かほどに強いものであることを感じる。


河合神社の境内には、方丈の草庵が再現されていた。
『方丈記』の作者・鴨長明は、下鴨神社の禰宜(ねぎ)の家に生まれたが、早くに父親を亡くした。和歌や琵琶に優れ、一時期、後鳥羽院歌壇でも活躍するが、その後、河合社禰宜への道が閉ざされ出家。大原山に隠棲し、やがて日野に移り、方丈の庵を結んだ。


『方丈記』にあるように、「広さはわづかに方丈(四畳半ほどの大きさ)、高さは七尺がうちなり」という草庵の中には、阿弥陀画像が掛けられ、「和歌・管弦・往生要集ごときの抄物(抜き書き)」と思しき物も置いてあった。
究極の簡素な住まいで、
「ただ仮の庵のみ、のどけくして恐れなし。程せばしといへども、夜臥す床有り、昼をる座あり、一身の宿すに不足なし。」
とか、
「ただ静かなるを望みとし、愁ひなきを楽しみとなす。」
と『方丈記』には書かれている。しかし、私はどうしてもこのような寂しい住まいを、「自らこれを愛す」と言える境地にはなれそうにないと思った。山里での孤独な生活を風流に楽しめるほど、私は心を強く保つことができない。

境内には、鴨長明の資料展示もあり(有料。共通券を購入)、複製品が多いものの、長明と『方丈記』の勉強になり、気づいたらここだけでかなりの時間を過ごしていた。

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