夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

旅立ちの島唄(2)

2013-07-25 23:38:28 | 映画
年が明けて、父と姉の美奈、その娘のメイとで初詣に行って帰ると、家の前に姉の夫・克也の姿が。
姉は克也との話し合いの後で、一緒に帰ることになったと優奈に言い、
「心配かけてごめん。…ずっと優奈に悪いと思ってた。お母が家を出て行ったのも、あたしのせいだから。」
と打ち明ける。
どうやら、美奈は高校に入学するので那覇に来たときに、親元を離れるつらさに耐えられず、母の明美が島を出て、姉と一緒に暮らし始めたらしい。もともと島の暮らしになじめなかった母は、そのまま那覇で働きつつ、パート先で恋人ができたりして、帰れなくなってしまった、ということのようなのだ。
結局、母と父の仲は修復できず、優奈が高校受験のため、父と那覇を訪れた際、久しぶりに家族が集まって夕食を共にした、その席で、父は二人が離婚することになったと話す。
翌日、父の母校である那覇東高校を受験した優奈は、面接で島を出ることについて尋ねられ、
「ずっとお父と一緒だったから、これからお父が一人で暮らしていくことを考えると…。」
と言ったまま、声をつまらせてしまう。


やがて、優奈が中学を卒業するときがやって来た。
「ボロジノ娘卒業コンサートが始まります。村民の皆さまは、ふるってご参加ください。」
と放送があって、多くの島民たちが会場に集まってくる。…ふと、人々が何かを見てざわめく。優奈の母の明美が、会場に姿を現したのだ。
出番前。母親は優奈の髪を結い上げ、化粧をし、着物を着させてやる。
そして本番。優奈は母親と父親が見守る前で、別れの曲「アバヨーイ」(南大東島の島唄)を歌う。


以前、優奈はこの歌を民謡教室の新垣先生から教わるとき、
「優奈、この歌は泣いて歌ったらだめさ。耐えて歌うんだ。泣かずに耐えて歌ったら上等さ。」
と言われていた。
その言葉の通りに、優奈が涙をこらえ、島民たちと両親の前で歌うシーンは、最初からこの場面が映画のクライマックスにくることはわかっているはずなのに、見ていて胸がいっぱいになってしまった。

〽小さいときから住み慣れていますが 立身のために島を離れます
※さよならさよなら 島の面影を心に染めて

お父と一緒にきび畑に鎌を持って草刈りに行ったことが
懐かしく思い出されます

いくら島育ちの田舎者であっても 心配しないでお母
見守っていてください

お父お母の愛情はいついつまでも忘れません
一生懸命勉強して親孝行も忘れません

実際は島の方言で歌われているのだが、ここには、字幕で出ていた訳(というのだろうか?)の方を挙げておく。
曲名の「アバヨーイ」はさよならの意味。


15歳の少女・優奈を演じた三吉彩花は、彼女自身が撮影期間の一月ほど前に中学を卒業し、親元を離れたばかりだったので、共感を持ってこの役に取り組めたという。また、映画の中で「ボロジノ娘」として数曲を歌った島唄や三線は、作品に入る前の一~二ヶ月で練習したのだそうだが、ラストの「アバヨーイ」は見事な歌いぶりだった。

優奈の両親を小林薫・大竹しのぶが演じ、脇をしっかり固めていたことで、作り事でない、今そこにある家族の危機や、離島暮らしの悲哀も伝わってきた。見ていて胸を痛める場面、つらい場面もたくさんあるが、その分だけ健気でまっすぐな優奈の生き方や、父親の不器用な愛情に心を打たれる。
過日、『週刊文春』の「原色美女図鑑」で三吉彩花が取り上げられ、この映画のことが話題になっていたのを読んで、公開されるのを楽しみにしていたが、想像以上に素晴らしい内容で、機会を逃さず鑑賞できた幸運に感謝している。

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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
沖縄 (風の靴)
2013-07-27 10:06:16
おはようございます

大変内容の濃い素晴らしい映画だったようですね。

俳優陣も演技で定評のある方々ばかりですし、更に作品に魅力を添えたのではないでしょうか?

沖縄民謡は独特ですよね。

あの個性的な音色の沖縄三味線といい・・・

ゆったりとした中にも、素朴で力強くて沖縄といった風土だからこそ生まれたものといった気がします。

同じ日本とは思えない様な美しい景色も魅力的ですよね、私も沖縄は一度は行ってみたい土地です。

こちらの映画は是非私も観たいです。

特に今の季節なんかは、あの大きなスクリーンで沖縄の南国ムードたっぷりの空気感まで味わえそうで素敵だと思います(笑)

ちかさださんありがとうございました(笑)
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