夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

天の羽衣

2015-11-13 21:25:48 | 日記

先日、『竹取物語』の学習が終わった後、学生たちに「天の羽衣」の場面の感想文をノートに書いて提出させた。
(今は大学ノートといっても、なかなか洒落たものが多い。)
私自身、かぐや姫が月の世界に帰ってゆく場面は、何度か授業で取り上げている(参照)が、そのたびに発見や感動がある。学生たちの感想を読んでいても、

・かぐや姫がすごく落ち着いていて、姫としての自覚があるんだなと思いました。何年も会っていなかった天人たちを従えるのはおもしろいなと思いました。
・どれだけ長い時間が経っても、人間のもとは変わらないような気がします。
・この物語は、どんなに権力や財力があっても、思い通りにはならないものがあると伝えたかったんだと思う。
・昔の人々は、月には、人間よりはるか上の文明があると思っていたから、この話が書かれたんだと思います。
・まだ科学が発達していない時代なので、空想性や伝奇性に富んでいて、とても面白かった。
・ハッピーエンドでないところがまたいいのかなと思いました。
・古い時代に書かれた物語だからこそ、今とは違う感情の伝え方や物の考え方があるということが分かりました。
・この世界で経験した楽しかった思い出などのすべてが消えてしまう直前はとてもつらいと思う。でも、かぐや姫はそれすらも忘れられるが、翁や帝のような残された立場の人は一生つらい思いが消えないかもしれない。それは悲しいと思う。
・この話から、当時の人々の生活や、現代と違う点同じ点を知ることができた。言葉はとてもむずかしいけど、その人の感情が分かる部分もたくさんあり、おもしろかった。今の時代の僕たちが小説を読むように、当時の人々も竹取物語を楽しんで読んでいたと思うと、何か不思議な気持ちになった。
・絵本では何回か読んだけで、内容が少し違っていて、驚きました。月の世界の人たちの感情がない世界も少しあこがれましたが、物事に感動できないのは嫌だと思いました。かぐや姫が何故地上に降りてきたのかが気になります。
・私は一番、かぐや姫が帝のことが好きだったのだということにびっくりしました。ジブリの作品の印象が強かったので、原作を読んで新たなことが分かったのでよかったです。

といったように、この場面を原作で読んで、それぞれ心に響くものがあったことが伝わってくる。
面白かったのは、アニメ映画『かぐや姫の物語』(参照)と話が違うので驚いた、という印象を持つ学生が何人かいたことだ。
あれは、『竹取物語』の高畑流解釈で、原作とは別物だから、と話したが、こんなところからも、オリジナルを知ることの大切さを伝えることができたような気がしている。