夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

牧水と旅

2015-11-11 22:34:52 | 短歌
若山牧水顕彰全国大会の話題の続き。

先生の基調報告に続き、俳人の長谷川櫂氏が「牧水はなぜ旅をしたか」と題して講演。(長谷川氏は牧水の研究家としても有名。)
氏の講演から、私の印象に残ったところをまとめると…。

若山牧水は、旅によってしか自分の人生をまかなえない、旅をすることでしか生きられない人だった。
旅は死と連続している、死の世界とつながっている。永遠は死の世界の向こう側にしかない。死への憧れは、生の世界から離脱していきたいという願望と一体のものだった。酒も旅と同様、牧水にとっては、この物憂い人生から一時的にせよ、引き離してくれるものだった。

  幾山河越えさりゆかば寂しさの終てなむ国ぞ今日も旅ゆく

の「さびし」は、単に孤独ということではない。形而上的な、宇宙的な寂しさであり、それがなくなる国はどこにあるのだろう、と感じつつ今日も旅を続けて行くと牧水は歌っている。
宇宙的な孤独、永遠とつながっている、あるいはそこに触れている。よい歌・句や詩には必ずそれがある。萩原朔太郎、西脇順三郎、谷川俊太郎なども然りだ。


(牧水二本松公園の歌碑。「けふもまたこころの鉦をうち鳴しうち鳴しつつあくがれてゆく」)

長谷川氏の講演は、牧水と旅との関わりだけでなく、短歌、また詩歌の創作や鑑賞についての示唆にも満ちあふれており、たくさんのことを学ばせていただいた。