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テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 掌の中の切符 ~

2023-06-16 22:06:46 | ブックス

「こんにちわッ、テディちゃでス!

 きょうはァ~わがしィ!」

「がるる!ぐるるるるがる!」(←訳:虎です!和菓子の日です!)

 

 こんにちは、ネーさです。

 今日6月16日は《和菓子の日》、

 疫病退散と人々の健康を願ってお菓子を神前に供えた

 《嘉祥(かじょう)の儀》を由来とする記念日だそうです。

 あらゆるイノチよ健やかであれと願いつつ、

 さあ、本日の読書タイムは、こちらの御本を、どうぞ~♪

  

 

 

         ―― 憧れの住む東京へ ――

 

 

 著者は岡崎武志(おかざき・たけし)さん、

 2023年1月に発行されました。

 《上京》をライフワークとする岡崎さんの、

 『上京する文学 漱石から春樹まで』『ここが私の東京』に続く

 《上京》テーマ作の第3作です。

 

「むかしィむかしはァ~きょうとォ!」

「ぐるるがる~!」(←訳:現代は東京~!)

 

 《上京》の《京》が京都を意味した江戸時代から、

 時は流れて、現代の《上京》とは

 《東京へゆく》こと。

 

 冒頭の『まえがき』で、著者・岡崎さんは

 菅原都々子さんの歌『憧れの住む町』(1950)を引用し、

 東京こそ『憧れの住む町』に他ならない、

 と考察します。

 

 成功を夢見て、

 居場所を求めて、

 或いは、

 見知らぬどこか、故郷でないどこか、を求めて辿り着く

 都市・東京――

 

「こうしているゥいまもォ~」

「がるるるるぐるがるる!」(←訳:たくさんの人が上京中!)

 

 この御本で岡崎さんが取り上げている

 《上京したひと》は、

 

  第一章『赤瀬川原平(あかせがわ・げんぺい)』

  第二章『須之内徹(すのうち・とおる)』

  第三章『浅川マキ(あさかわ・まき)』

  第四章『田中小実昌(たなか・こみまさ)』

  第五章『山之口獏(やまのくち・ばく)』

  第六章『耕 治人(こう・はると)』

 

 という、昭和を中心に活躍したアーティストさんたちです。

 

 私ネーさ、ちょっとびっくりしましたのが、

 赤瀬川原平さん……

 東京出身かと思っていたら、

 生まれたのは横浜で、その後は芦屋へ、門司へ、大分へと、

 お父さんの転勤によって

 原平少年は居を移していったのでした。

 ようやく東京の地を踏んだのは、18歳――

 美大を受験するための《上京》だったんですね。

 

「ちかくてェ、とおいィ~…!」

「ぐるるがる!」(←訳:それが東京!)

 

 一方、『芸術新調』にエッセイ連載を持ち、

 銀座にギャラリーを構え、

 昭和きっての画商、として知られた

 洲之内徹さんは、愛媛県松山市の出身です。

 

 洲之内さんは名門・松山中学の卒業生で、

 つまり、正岡子規さんや高浜虚子さんや、

 近現代日本文学史のスターさんたちと同窓、なのですが。

 

 17歳で上京、難関を突破し、

 東京美術学校建築科に入学した須之内さんを待っていたのは、

 過酷な顔をした《東京》でした。

 マルクス主義に傾倒し、

 左翼活動に身を投じた洲之内青年は、

 特高警察に捕縛連行されてしまったのです。

 

「あわわうゥ!」

「がるるるる……!」(←訳:たいへんだ……!)

 

 この上なく苦い、《上京》の記憶。

 しかし、洲之内さんの《上京》はそこで終わりません。

 帝都《東京》ではなくなった

 都市《東京》へ――

 第二次世界大戦終結後、

 洲之内さんの新たな《上京》物語が始まります。

 

「やぱりィ、とうきょうゥにはァ~」

「ぐるるがるるる!」(←訳:憧れが住んでる!)

 

 美術家さんたちが希求する、

 憧れの住む町・東京。

 

 御本の表紙を彩る

 数え切れないほどの『東京行きの切符』、

 その切符を握りしめて車窓に目を凝らす

 数多の人びとを想いつつ、

 皆さま、ぜひ、一読を♪