「こんにちわッ、テディちゃでス!
きょうはァ~わがしィ!」
「がるる!ぐるるるるがる!」(←訳:虎です!和菓子の日です!)
こんにちは、ネーさです。
今日6月16日は《和菓子の日》、
疫病退散と人々の健康を願ってお菓子を神前に供えた
《嘉祥(かじょう)の儀》を由来とする記念日だそうです。
あらゆるイノチよ健やかであれと願いつつ、
さあ、本日の読書タイムは、こちらの御本を、どうぞ~♪
―― 憧れの住む東京へ ――
著者は岡崎武志(おかざき・たけし)さん、
2023年1月に発行されました。
《上京》をライフワークとする岡崎さんの、
『上京する文学 漱石から春樹まで』『ここが私の東京』に続く
《上京》テーマ作の第3作です。
「むかしィむかしはァ~きょうとォ!」
「ぐるるがる~!」(←訳:現代は東京~!)
《上京》の《京》が京都を意味した江戸時代から、
時は流れて、現代の《上京》とは
《東京へゆく》こと。
冒頭の『まえがき』で、著者・岡崎さんは
菅原都々子さんの歌『憧れの住む町』(1950)を引用し、
東京こそ『憧れの住む町』に他ならない、
と考察します。
成功を夢見て、
居場所を求めて、
或いは、
見知らぬどこか、故郷でないどこか、を求めて辿り着く
都市・東京――
「こうしているゥいまもォ~」
「がるるるるぐるがるる!」(←訳:たくさんの人が上京中!)
この御本で岡崎さんが取り上げている
《上京したひと》は、
第一章『赤瀬川原平(あかせがわ・げんぺい)』
第二章『須之内徹(すのうち・とおる)』
第三章『浅川マキ(あさかわ・まき)』
第四章『田中小実昌(たなか・こみまさ)』
第五章『山之口獏(やまのくち・ばく)』
第六章『耕 治人(こう・はると)』
という、昭和を中心に活躍したアーティストさんたちです。
私ネーさ、ちょっとびっくりしましたのが、
赤瀬川原平さん……
東京出身かと思っていたら、
生まれたのは横浜で、その後は芦屋へ、門司へ、大分へと、
お父さんの転勤によって
原平少年は居を移していったのでした。
ようやく東京の地を踏んだのは、18歳――
美大を受験するための《上京》だったんですね。
「ちかくてェ、とおいィ~…!」
「ぐるるがる!」(←訳:それが東京!)
一方、『芸術新調』にエッセイ連載を持ち、
銀座にギャラリーを構え、
昭和きっての画商、として知られた
洲之内徹さんは、愛媛県松山市の出身です。
洲之内さんは名門・松山中学の卒業生で、
つまり、正岡子規さんや高浜虚子さんや、
近現代日本文学史のスターさんたちと同窓、なのですが。
17歳で上京、難関を突破し、
東京美術学校建築科に入学した須之内さんを待っていたのは、
過酷な顔をした《東京》でした。
マルクス主義に傾倒し、
左翼活動に身を投じた洲之内青年は、
特高警察に捕縛連行されてしまったのです。
「あわわうゥ!」
「がるるるる……!」(←訳:たいへんだ……!)
この上なく苦い、《上京》の記憶。
しかし、洲之内さんの《上京》はそこで終わりません。
帝都《東京》ではなくなった
都市《東京》へ――
第二次世界大戦終結後、
洲之内さんの新たな《上京》物語が始まります。
「やぱりィ、とうきょうゥにはァ~」
「ぐるるがるるる!」(←訳:憧れが住んでる!)
美術家さんたちが希求する、
憧れの住む町・東京。
御本の表紙を彩る
数え切れないほどの『東京行きの切符』、
その切符を握りしめて車窓に目を凝らす
数多の人びとを想いつつ、
皆さま、ぜひ、一読を♪