テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

どこから、誰の手で。

2015-01-25 21:39:20 | ブックス
「こんにちわゥ、テディちゃでス!
 きょうはァ、おおものォでスよゥ!」
「がるる!ぐるるるがる!」(←訳:虎です!とびきりのね!)

 こんにちは、ネーさです。
 ええ、本日の読書タイムで御紹介いたしますのは、
 2014年の読書界に特別な波紋をもたらした作品――
 或る“再生”の物語を、どうぞ~!

  



         ―― 神つなげ! 彼らが本の紙を造っている ――



 著者は佐々涼子(ささ・りょうこ)さん、2014年6月に発行されました。
 『再生・日本製紙石巻工場』と副題が付されています。

 さあ、皆さま、御本を手に取って読む前に、
 ちょっとだけ、眺めて、観察してみてください。
 この本で使われている紙は、
 どこから来たんだろうか?と。

「たぶんッ、きッとォ~?」
「ぐるがる?」(←訳:石巻から?)

 日本製紙石巻工場。
 そこは日本、いえ、世界でも指折りの巨大な製紙工場です。
 石巻工場から出荷される紙は、
 日本の出版界の生命線ともいえるほど
 高いシュアを占めている、のですが――

 その地を、地震と津波が襲いました。

 忘れようもないあの日、
 2011年3月11日のことです。

「いしのまきはァ、うみのォそばッ、なのでス!」
「がるるるるぐる!」(←訳:避けようがない!)

 御本の15ページには地図が掲載されています。
 日本製紙石巻工場は石巻湾に隣接している、
 ほぼ海べりにある、と説明したら
 工場がこうむった被害のいかに甚大であったか、
 お分かりいただけるでしょうか。

 地震の揺れをどうにか耐えて、
 工場の総務課主任さんの命令のもと、
 社員さんたちは高所へ避難、
 けれど――

 水はいくらか退いたものの、まだ余震続く中、
 工場に戻った社員さんたちが目にしたものは……。

「もうゥ、そうぞうをォ、ぜッしていまス……」
「ぐるがるるるるるる……」(←訳:涙が止まらなくなる……)

 ノンフィクションライターのお仕事をしている著者・佐々さんは
 震災の後、編集者さんから、
 紙がなくて困っている、と聞かされ、
 日本製紙石巻工場の被災を知りました。

 震災から2年が経過し、
 佐々さんは工場の取材を開始します。

 あの日、製紙工場で何がおこったのか。
 
 そしてあらためて知ることになります。
 日本製紙石巻工場が造り出す紙が
 日本の、海外の書籍や雑誌の多くに使用されていること、
 紙を造り出す仕事に就いておられる方々の、
 凄絶な経験、
 製紙にかける思いを。

「ぶんこぼんもォ、たんこうぼんもッ!」
「がるるーるるぐるるる!」(←訳:ワンピースもナルトも!)

 そう、多くの“紙の本”、
 私たちが愛する紙の本は、
 ここ石巻工場があってこそ生まれ得たもの――

 再生する、復興する、と
 口で言うだけではなく、実行する。

 この御本は、被災、
 そして再生の過程を丹念に追った稀有な記録です。
 過酷な情景も描かれているので
 読み進むことがつらくなる箇所もありますが、
 どうか、考え、想いを馳せてみてください。

 本の紙がどこから、
 誰の手によって育まれ、
 ここに来るのかを。



 
コメント
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