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テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

ステンドグラスの屋根のもと。

2012-11-22 23:10:37 | ブックス
「こんにちわァ、テディちゃでス!
 やッほほゥ! れんきゅゥ~でスよッ!」
「がるる!ぐるがるるる!」(←訳:虎です!明日はお休み!)

 こんにちは、ネーさです。
 明日11月23日は勤労感謝の日で祝日……実際には、
 今日もお仕事よ!お休みじゃないのよう!
 という御方も大勢おられることでしょうが、
 気分だけは祝日で!
 本日は、特別な日にふさわしい特別な一冊を御紹介いたしますよ。
 こちらを、どうぞ~!

  



              ―― 最果てアーケード ――



 著者は小川洋子さん、2012年6月に発行されました。
 『BE・LOVE』連載コミック『最果てアーケード』(有永イネさん画)の
 原作として書き下ろされた作品が、この御本です。

「あーけーどォ、でスかァ~♪」
「ぐるるがるる!」(←訳:お店がずらり!)

 アーケード――
 フランス語ではパッサージュ、だったかしら。
 通路は屋根に覆われていて、
 雨や風の心配をせずに、
 ずらりと並ぶお店をひやかしながら、
 お買い物ができるところ、ですね。
 京都の錦市場あたり、
 大阪では天満橋、
 東京では阿佐ヶ谷や吉祥寺のアーケードが
 よく知られていていますが……

 この御本の“主役”ともいうべきアーケードは、
 《世界で一番小さなアーケード》。
 
 といって、その小ささを売り物にしているわけではありません。
 ギネスに申請するでもなく、
 飾り立てるでもなく、
 薄暗く、ひっそりと目立たないまま、
 はたして営業しているのか、いないのか……?

「むゥ! しつれいィなッ!
 おみせはァ、ちゃんとォ、えいぎょうゥしてまスよゥ!」
「がる!ぐるるるがるがる!」(←訳:ほら!お客さんもいるよ!)

 これは失礼いたしました。
 本当ね、あまりにさりげないので見落としていましたが、
 小さなアーケードは古びてこそいれ、
 多様なお店が営業しているようです。

 物語の語り手――《私》は、
 『父が大家だった』ことから、
 この小さなアーケードで生まれ、育ちました。

「あーけーどはァ、じぶんのォ、おうちッ!」
「ぐるがるがるるぐる!」(←訳:世界にただひとつのね!)

 レース屋さん、
 義眼屋さん、
 揚げたてドーナツの輪っか屋さん、
 レターセットやカードを扱う紙屋さん、
 古今の勲章を売る勲章屋さん……。

 ここまで記せば、分かるひとにはお分かりでしょうか。
 IT? デジタル?
 そんな類のお店は、
 このアーケードに侵入することを許されていないのです。
 世界でたったひとつのものばかりが集まるこの場所には。

「ここにはァ、にあわないィのでス!」
「がるがるるる!」(←訳:必要ないもん!)

 《私》が愛犬と暮らすこのアーケードは、
 はたして本当に
 『最果て』――世界の果てなのでしょうか。
 もしかしたら、こここそが、
 世界の中心であるのかもしれません……。

「ほッきょくのようにィ?」
「ぐるがるがる!」(←訳:南極のように!)

 そう、
 人影が薄くとも、
 ここなしに宇宙は存在し得ない、
 そんな場所。

 短編10作品から成る、
 静かな子守唄のような、
 一瞬の午睡のような、
 《魔法の時》を抱えたものがたり、
 すべての活字マニアさんに、おすすめです!