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テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

《仁愛》、求ム。

2011-08-14 23:17:17 | ブックス
 こんにちは、ネーさです。
 今日は赤トンボを見ましたよ~!
 小っちゃくて可愛いわあ~♪♪

「こんにちわッ、テディちゃでスゥ!」
「がるる!ぐるるぐるるがる!」(←訳:虎です!ボクらだってカワイイよ!)
「そーだッ、そーだッ!」

 ……えーと、早くもUターンラッシュが始まっているそうですね。
 ふぅ~また忙しくなるなぁ、という御方、
 これから海外へ飛ぶわ!という御方にも、
 本日ご紹介いたしますのは、ヘヴィ級な一冊!
 さあ、こちらを、どうぞ~!

  



              ―― 不死細胞 ヒーラ ――


 
 著者はレベッカ・スクルートさん、原著は2010年に、画像の日本語版は2011年6月に発行されました。
 英原題は『HeLa THE IMMORTAL LIFE OF HENRIETTA LACKS』、
 『ヘンリエッタ・ラックスの永遠なる人生』と日本語副題が付されています。
 この御本は、調査と執筆に10年以上を費やした、
 著者・レベッカさん渾身のノンフィクション!
 或いはサイエンス・ドキュメントと呼ぶべきでしょうか。

「さいえんすゥ??」
「がるぐるるぅ?」(←訳:科学ですかぁ?)

 ええ、レベッカ・スクルートさんは
 サイエンス・ライターとして知られるジャーナリストさんなのです。
 ただし、この御本に関していえば、
 メディカル・ドキュメントとも申せましょう――
 一時期、医学会で大きな論争をよんだ、
 或る《細胞》の“誕生”が、テーマなのですから。

 『HeLa』。
 研究者さんたちは、その細胞を『HeLa(ヒーラ)』と呼称しています。
 医学会ではきわめて重要な、
 数々の研究の礎地となった細胞なんです。
 ポリオワクチンの開発、
 インフルエンザ治療薬の開発、
 クローニング、
 遺伝子マップの作成、
 そして、もし癌の治療法が確立されるとしたら、
 それはこの細胞の研究が基盤になっているものだろう、
 とも言われる、
 人類への貢献度は計り知れない、
 巨大な可能性を秘めた《細胞》が、この『HeLa』。

「ふァ~、そんなァすごいィものがァ、あるのォ?」
「がるるぐるぐる!」(←訳:びっくりだね!)

 『HeLa』細胞は、でも、
 どこから来たんでしょう?
 誰の細胞なんでしょう?

 著者のレベッカさんは、あるとき、疑問を持ちます。
 生物の教科書には
 ヘンリエッタ・ラックスという名前が載っていました。
 これが、『HeLa』?
 ヘンリエッタの細胞が、『HeLa』?

 でも、それだけ。
 教科書には、ヘンリエッタさんがどんな人物であったか、
 どこに生まれ、どこで暮らしていたのか、
 何の言及もありません。

「むむゥ! みすてりィ、みたいッ!」
「がるぐる!」(←訳:不思議だ!)

 ヘンリエッタさんを追って、
 その人生を追って、
 残された家族を追って、
 レベッカさんの調査が始まります。
 
 時代によって変わる医学会の方針、
 倫理や人種差別、
 ヘンリエッタさんを失った一家にのしかかる不安、
 今も解決されていない法的な問題……

 《医は仁術である》――
 読みながら、何度もこの言葉を思い返し、想い浮かべました。
 仁術の恵みを、
 ほんの少しでも、
 ヘンリエッタさんは受けることが出来たのだろうか……?
 そこに仁愛があれば、
 彼女の家族の苦悩を、
 減らせたのだろうか……?

 レベッカさんのこの力作は、
 2010年度の米国読書界で高く評価されました。
 重いテーマの御本は夏休みには合わないや!と
 考える御方もおられるでしょうが、
 読めば深く考えさせられる一冊になること間違いありません!

「かつじィまにあしょくんッ、よむべしィ!」
「がるぐるがるるー!」(←訳:重さに負けるなー!)

 激おすすめのノンフィクション、ぜひ!