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テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

水辺の宇宙はケロケロと。

2010-03-17 23:29:04 | ブックス
「……ぬきあしィ、さしあしィ、しのびあしィ……しィッ!
 みなさまァ、おしずかにィ!」

 あのぅ? テディちゃ?
 なぜに、忍び足、なんですか?

「がるるるっ?」(←訳:泥棒ごっこしてるの?)

「しッ!
 ネーさッ、とらくんもォ、おしずかにィ!
 とんぼがァ、にげちゃうゥ!」

 ……テディちゃ、あの、残念ですが、
 そのトンボくんは、本物のトンボくんではないんですのよ。
 えへん、説明いたしますから、さあ、こちらを、どうぞ~!



                   ―― 生きてる ――


 
 文と構成は小泉吉宏さん、’09年10月に発行されました。
 『伊藤若冲《池辺群虫図》より』と副題が付されています。
 若冲さんといえば、ここ数年間で江戸期を代表する画家さんだと
 認識されるほど有名&人気になってしまった御方ですが、
 この《池辺群虫図(ちへんぐんちゅうず)》という絵は――
 
「えッ? えええッ??
 これはァ、えェ~ッ?? えなのォ~ッ??」
「……ぐるーるる?」(←訳:それって駄洒落なの?)

 ええ、そうですとも。これは、絵、です。
 若冲さんの代表作、記念碑的作品とも言うべきシリーズの中の一幅、
 水辺の動物や植物を描いたものですね。

 この御本は、若冲さんの《池辺群虫図》の部分拡大図版と、
 小泉吉宏さんの文章によって構成されています。
 漫画家、絵本作家、小説家であり、
 『ブッタとシッタカブッタ』『大摑源氏物語 まろ、ん?』他の著で知られる
 小泉さんの文言は……詩、
 あるいは尊い御坊さまのふとした独り言のようにも聞こえます。

 そのひとことひとことの、、
 溜め息のような、ささやきのような、
 言の葉の美しさ、重さ、深さは、
 これはもう、実地に読んでいただくしかない、のですが。

「ふむむゥ~……?
 ふしぎなァ、ごほんッ、なのでスねェ??」
「ぐるがるるっ?」(←訳:詩画集なのかなぁ?)

 禅宗の経文を彷彿とさせる小泉さんの文と、
 若冲さんの画は、互いを引き立て合い、共鳴し合います。
 もともと京都の相国寺へ寄進するために描かれた画ですから、
 思索的、哲学的な詩句とは
 ひとかたならず通じあうものがあるのかもしれません。

 文も画も素晴らしいのですが、
 この御本にはすてきなオマケもついています。
 巻末には、
 太田彩さん(宮内庁三の丸尚蔵館主任研究員さん)のあざやかな解説と、
 《池辺群虫図》の中に描きこまれたいきものたちの名前が
 ずら~り67種類も!
 これはナミアゲハ、
 並んでいるのはダルマガエル、
 オタマジャクシはニホンヒキガエルのもので、
 こちらにはニホンアマガエルが隠れていて……と、
 図解されているんです!

「おおッ、いもりもォ、いるゥ!」
「がるぐるるー!」(←訳:クツワムシもー!)

 若冲さん大好き!という御方はうっとり、
 小泉さんファンの方々もしみじみと余韻に浸ってしまう
 おすすめのアートブックです。
 カエルさんやヘビさんが目覚める春の日和にぴったりの、
 ファンタジックな一冊ですよ~!

「おじゃまじゃくしィ! きゃわゆいィでスゥ!」
「ぐるがる~ぐるるっ!」(←訳:すぐヒキガエルになっちゃうぞ)」
「……じゃァ、あまがえるのォ、おじゃまじゃくしをォさがそうゥッ!」

 オタマジャクシは絵の中だけにしてくださいっ!