―― 金色クマ発見物語 ――

「むひょッ？
　またまたァ、きんぴかちゃんッ？」

　ほほほ、ネーさはやりましたわよ、テディちゃ。

「ほぺッ？　なにをォ？？」

　昨日ご報告しました、
　『ペプシＮＥＸ』オマケの《スターウォーズ☆ベアブリック》Ｃ-３ＰＯちゃん、
　ネーさも欲しくなりまして、
　スーパーマーケットの売り場へＧＯ！
　そこにはちょうど、オマケ付き『ペプシＮＥＸ』がずら～りと！
　入荷したばかりらしく、整然と並んでおりました。
　金ぴかベアちゃんは、いずこ？！
　見渡すネーさの目ン玉は、幾つもの箱の中から、ただひとつ、
　　　きらり！
　と光を発する或るベアちゃんを捕捉したのです。
　おお、あれは！

「ふァ～、たけとりィものがたりィ、みたいィ～……？」

　まさしく、金ぴかＣ-３ＰＯベアちゃん！
　やったわ！！
　テディちゃ、勝利の舞を！

「♪うッほほォ～、うほほッ♪……ッて、
　テディちゃはァ、《いうぉーく》じゃないィでスッ！」

　こうして、ネーさのコレクションに金ぴかベアちゃんが加わりましたそうな。

「ふゥ～んだッ！
　テディちゃのォ、こぶんにィ、しちゃうんだもんねッ」

明治のミヤコのユーモアミステリ♪

　この題名を一見して……爆笑です。

「ふァ？
　どォゆゥことォ、でスかッ、ネーさ？」

　何故って、テディちゃ、
　これが某作家さんの某作品名をモジったものであることは、
　ミステリ小説好きにはあまりにも明らかなんです。
　さあ、果敢にもメジャーどころに真っ向勝負を挑んだ御本とは？
　こちらを、どうぞ！


　
　　　　　　　　　　――　なぜ絵版師に頼まなかったのか　――


　
　著者は北森鴻さん、’０８年５月に発行されました。
　『絵版師』は、『えはんし』と読みます。
　副題に『明治異国助人（おたすけガイジン）奔（はし）る！』とあります。
　
「ふむむゥ～、めいじィ……」

　はい、頃は明治。帝都となった東京で。
　新設された東京大学で教壇に立っているのは、
　エルウィン・フォン・ベルツ先生。
　明治政府がドイツより招聘した医学者さんです。
　そのベルツ先生のもとへ、
　西国の松山から新しい書生さんがやってきました。
　葛城冬馬（かつらぎ・とうま）くん――まだ１３歳の少年です。

「ふァ～、１３さいッ！
　そのとしでェ、しょせいさんッ！　きッとォ、あたまいいィのでスねッ！」

　いえ、冬馬くんが書生に採用された決め手は……マゲです。

「……ふァ？」

　マゲ――つまり、ちょん髷、ですね。
　冬馬くんの頭頂には、髷がちょこんと乗っていたのです。
　ざんぎり頭が世にはびこるこの御時世に、髷はなんとも珍しい！　素晴らしい！
　ええ、そうです、その点が、
　ニホン趣味全開なベルツさんの嗜好にフィットしたんですね。

「ふはァ～……」

　ベルツ先生のもとで働き始めた冬馬くん、
　日本語を話すのは完璧なのに読み書きが不得手な先生のために
　新聞の朗読などいたしますが……おや？
　この奇怪な見出しはなんでしょう？

　　　　　　　　　《　何故エバンスに頼まざりしか　》

　　　　　　　　横浜で起こった米国水夫同士の決闘？
　　　　　　　　水夫の一人がそう叫んでいたと？

　ベルツ先生に命じられ、事件の詳細を調べるべく、
　冬馬は横浜埠頭へ向かいますが……エバンスとは、絵版師のこと？
　絵版師って、そも、何のことやら？

「むゥ。えばんすゥ……えはんしィ……えばんすゥ……えはんッ？」

　表題作をはじめ、全５作品ともその題名が……笑えます！
　すべて名作のパロ？　もじり？
　にやりとしながら読んでゆくと、驚かされます。
　パロディとは、ひと味、ちがう？
　ふざけているようで、真面目な？
　
「ふゥむゥ、ふしぎィなァ、おはなしィでスねッ」

　大森貝塚発見で名を馳せたエドワード・シルベスター・モース教授さん他、
　明治期の異人学者先生も続々登場する背景は華やかです。
　誕生して間もない帝國ニホンへの、彼らイジンさんたちの想いも重なり、
　謎が謎を呼び、こんがらかって……
　ううむ、冬馬くんの将来が心配になってきました。
　探索任務と書生ライフ、上手くゆくのでしょうか？

「いまのうちにィ、にげたほゥがァ……」

　冬馬くんが逃げ出す前に？ミステリ好きさんは取り急ぎ読了を！