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wunderkammer









天気は冴えないが、今日は待ち合わせにヴィクトリア&アルバート博物館の中庭を指定した。
気の早い子供は水浴びをしているのに、わたしはじっと座っていると寒くなってきたため、約束の時間まで世界の欠片のほんの一部を見て過ごすことにする。
wunderkammer 、驚異の部屋。
ロンドンで wunderkammer と言えば、スローン卿の驚異のコレクションを元に設立された大英博物館だが、ヴィクトリア&アルバート博物館の蒐集熱も負けず劣らず熱い。灼熱。
「こんなものまで、こんなに大量に...」という感じでは、もしかしたらV&Aの方が勝っているのではないか。例えばあの銀のスプーンばかりが詰まった木製のケース、それを納める部屋...


ところで、英語 (museum) を始め、ヨーロッパ言語 (musee, museo) では、それらの語はギリシャ語のムセイオン、「ミューズの祀堂」が語源になっている。
日本語にはそれにあてる訳語として博物館と美術館の2つがある。

ウィキペディアによると、「文久元年(1861年)の江戸幕府による遣欧使節に随行した市川清流は、その日録にBritish Museum に対し「博物館」という訳語を初めて与えた。(中略)ウィーン万国博覧会への出品準備として1872年(明治5年)に開かれた湯島聖堂博覧会(文部省博物館)の出品物をもとに東京国立博物館が日本ではじめての近代的な博物館として設立された。」
「「美術」は、1873年(明治6年)、日本政府がウィーン万国博覧会へ参加するに当たり、出品分類についてドイツ語の Kunstgewerbe および Bildende Kunst の訳語として「美術」を採用したのが初出とされる(山本五郎『意匠説』:全文は近代デジタルライブラリ所収)。(中略)あるいは西周 (啓蒙家)が1872年(1878年説もあり)『美妙学説』で英語のファインアート(fine arts)の訳語として採用した(「哲学ノ一種ニ美妙学ト云アリ、是所謂美術(ハインアート)ト相通シテ(後略)」とある)」そうで、19世紀の万博博覧会への出展がきっかけでこれらの訳語が考えられたようだ。
それにしても「博物館」とは巧い。もし、wunderkammer をヒントにしていたら「驚異館」にでもなっていたのだろうか。大英驚異館(笑)。

現代の法制度上は博物館が一番大きなカテゴリーで、美術館は動物園や植物園や科学館などと共に博物館に含まれる。つまり、一般的に博物館とは珍しいものを博覧した場所、美術館はその中でも「美」を博覧するに特化した場所だと言えるだろう。


あるいはこのように感じるのだがどうだろう。
博物館に蒐集されたものは「世界はこのようなものがたくさんたくさん集まって成り立っているのです」という一種の回答であり、美術館に収められたものは「世界とは何なのか」「美とは何か」という終わりなき問いかけである...

もちろん博物館にも美術的なものはたくさんあるので、厳密に分けられるわけではないが、

まさにそのように世界は驚異と美にあふれている。
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