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Brugge Style
l'opera
L'Opéra de Minuit、真夜中のオペラ。
オペラといっても総合舞台芸術のオペラではなく、フランス菓子のオペラ、真夜中のお茶タイム。
秋をイメージし、オペラを作成したのにお客さんに出し損ねた。
オペラ(<舞台の方ね)のシーズンも始まり、数週間前まで作っていた軽やかなフルーツのムース系のケーキよりも、濃いチョコレートとエスプレッソの苦味の効いたケーキが秋の夜長にふさわしいかなと。
ビスキュイ・ジョコンド(アーモンド・プードル入りのスポンジ)、アンビバージュ(エスプレッソのシロップ)、ガナッシュ(チョコレートのクリーム)、クレーム・オ・ブール・キャフェ(エスプレッソのバタークリーム)、グラサージュ・ショコラ(表面の艶々のチョコレート)を薄い層で重ねて作る、見た目も味もとても都会的でシックなお菓子。
かっこいいケーキといえばこれを思い出すかな、わたしは。
レシピにはさまざまあり、重ねる層がくっきりと分かれているレシピもあれば、溶け合うように馴染むように仕上げるレシピもある。わたしは断然後者が好みだ。
工程にはとても時間がかかるが、作るのは難しくはない。
ただ、最後、2センチx10・5センチに綺麗に切り分けるときに最も緊張する...ここで失敗したら元も子もない。
知り合いの家にある、ベーゼンドルファーのインペリアルの黒鍵のよう(と、自画自賛)。
ウィーン菓子じゃないけど!!
ベルギーのおやつの時間は4時。
パリのオペラ・ガルニエの客席をイメージしてとか、オペラ・ガルニエ近くのカフェで考案されたとか、起源には諸説あり。
「オペラ」とは、イタリア語で「作品」、もとはラテン語のopus オプスであり、「仕事」「労働」「創作物」という意味を持つ。
やがて、芸術的要素(音楽、歌唱、演技、舞台装置など)を融合させた、総合舞台芸術「オペラ」を指すようになった。
「オペラ」という名前のケーキも、こうした「作品」や「芸術的な創作物」という意味合いが含まれていると解釈できるかもしれない。
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草の露、白し。季節のムースをもういちど
暑さ和らぐ夏のおわりか、草の露白き秋のはじめか。
材料がちょうどいい具合に残っていたため、お客さんに備えて桃のムースのケーキに再挑戦。
前回は桃とシャンパーニュで、高名なカクテル、ベリーニ風...夏。
今回は、桃とシェリー酒を合わせてみた。秋。
桃とシェリーのカクテルはあるのかしら。
デコレーションも多少変えてみる。
前回は桃のスライスを半円に並べたが、今回は直線的に。
まあ誰も気が付いていないよね...
9月に入り、英国南部地方はもう夏はどこかへ...
もう一回くらい、暑い週が戻ってくるのが毎年9月だが、今年はどうかな...
メロウでとてもいい季節だ。
わたしはとても忙しい9月になりそう。
ケーキを作って遊ぶくらいの暇があるくらいなのがちょうどいいのだが。
おまけの写真は、白露で白いのではないが、散歩途中で見つけた刈られたあとの枯れ草白きフィールド。イースト・サセックス州のすばらしき田舎にて。
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英国桃で ベリーニ風ムース
夏を惜しみ、英国産の桃でケーキを作った。
British Peach、またはEnglish Peach、黄桃の一種である。
英国産の桃は、気候変動で収穫が増えているという話を新聞で読んだのはもう数年前のことだ...
ビスキュイ、桃のムース、ホワイト・チョコレート、シャンパーニュとレモンのジュレ。
イメージはシャンパーニュのカクテル「ベリーニ」。
ヴェネツィアの老舗バア、Harry's Barで1940年代に生まれたこのカクテルは、白桃のピュレとシャンパーニュ(伝統的にはイタリアのプロセッコ)を組み合わせる。
薔薇のようなオレンジ・ピンクの色が、ヴェネツィア・ルネサンスのジョヴァンニ・ベッリーニ(Giovanni Bellini)の絵画の、聖母マリアのローブの色イメージさせることから、「ベリーニ」と名付けられたと...
ヴェネツイア アカデミア美術館で撮影
ヴェネツィアでベッリー二の作品巡りをするのがわたしの至上の喜び
む、次は黄桃ではなく、白桃で作って作法通りフランボワーズで色付けしよう...
ハリーズ・バアは今でも大運河近くでがんばっている。
わたしは行かないが、よく前を通りかかる。
ベリーニは国際バーテンダー協会の公式カクテルで、桃のピュレをマンダリンに置きかえるプッチーニ、いちごのロッシーニ(<わたしはこれが好物)、ザクロのティントレットなど、このカクテルのヴァリエーションは多い。
いちごでロッシーニ風のムース・ケーキも試そうかな、『スタバート・マーテル』を聴きながら、まだ英国いちごが出回っているうちに。
ちなみに美食化だったロッシーニのな名を冠した料理は多いですね!
と、話が芋づる式に...伸びていく。
ふるっふるにしたく、ゼラチンを危険なほどギリギリの量で作成。
羽が生えて飛んでいってしまいそうな軽さ。
ベッリーニの天使のように。
夏の午後10時、桃と同じ色のろうそくの光の下で。
8月もあとわずか。
ヴェネツィアの優雅な滅びを思い出す。
あるいは、子供の頃の、あの、夏休みが終わりゆく感覚を思い出す。
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ヴィクトリア・スポンジ・ケーキ
英国の料理は全くハナシにならないレベルだが、アフタヌーン・ティーはそのコンセプトが売りで、なかなかいける。
アフタヌーン・ティーや英国パブは世界中にあるが、どこを探しても「英国料理の店」はないでしょう...
日本でもアフタヌーンティーは根強い人気があると聞く。
ところで、ティー・ルームやカフェならどこにでもあるケーキ類は、スコンを筆頭に、チョコレート・ケーキ...
こういう記事があった。
英国人の好きなケーキ、ベスト30。
トップ10を見るとこういう感じ。
バナナ・ブレッド
ヴィクトリア・スポンジ
チョコレート・ケーキ
レッド・ベルベット・ケーキ
スティッキー・トフィー・プディング
キャロット・ケーキ
チーズ・ケーキ
フラップ・ジャック
ベイク・ウェル・タルト
コーヒーとクルミのタルト
わたしはそこまで甘いものが好きではないので、このリスト、手を出したことがないものばかり...
英国で11歳から女子校に通った娘にとっては、どれも馴染みのあるものばかりだそうだ。
しかし、どれも「激甘で、重くてバサバサ」で、おいしいと思ったことはほとんどないと。
「激甘で、重くてバサバサ」、弁護するとしたら、紅茶を何倍もおかわりしながら食べるのには、ふさわしいのだろう。
オランダの農家で買った、手作りのとてもおいしいフランボワーズジャムが消費しきれないほどあるので、初めてヴィクトリア・スポンジ・ケーキを作ってみる気になった。
「激甘で、重くてバサバサ」を避けるべくして焼いた、私家版「ヴィクトリア・スポンジ・ケーキ」。
フランボワーズのジャムと、バタークリームをはさむ。
バタークリーム、上質の無塩バターとイタリアン・メレンゲ、ゲランドの塩、少量のホワイト・チョコレートで。
手作りのバタークリームって、ほんとうに美味。
デコレーションもかわいく...と努力したが、歯を剥き出しにしているモンスターみたいになった(笑)
しかし、「甘くなく、ふんわり軽くて、しっとり」は、達成し、あっという間にお客さんと家族が平らげた。
バター・クリームのような色合いのオールド・ローズ。
ヴィクトリア・スポンジケーキは、19世紀に繁栄を極めた大英帝国を象徴するヴィクトリア女王が好んだというケーキである。
毎日のアフタヌーン・ティーで必ず所望されたとか。
英国人が「英国の伝統」と考えている、少なくないものが、この時代に作られたといっても過言ではない。
アフタヌーン・ティーも19世紀に生まれて定着した。
うむ、この家庭的なケーキ、「家庭」を重要視し、そのイメージを積極的に君主制の一部として打ち出したヴィクトリア女王にふさわしいかもしれない。
「家庭」は、19世紀ヴィクトリア朝的な価値観、道徳観と密接に関係している。
女王が君主としてだけでなく、家庭の一員、母親、妻として、親しみやすさや、また地に足ついた安定的な姿を示すことが、国民の支持を得るために重要だった、と。
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イスパハンの王様のケーキ
今年の1月6日、カトリックの祝祭、公現祭は、ブルージュ到着が遅れて「王様のケーキ」(ガレット・デ・ロワ GaletteDesRois、オランダ語ではDriekoningentaart: 三人の王のタルト)を食べ損ねた。
公現祭は、年末に誕生したイエスキリストの元に東方の三博士が訪れ、世界中あまねく救い主の光が「公現」したことを祈念する。
この日には、王様のケーキを食べる。
王様のケーキにはひとつ小さなフェーヴ(元々は乾燥豆、現代ではさまざまなフィギュア)が入っており、これを引き当てた人はその日一日王様になれるのである。
また、この日をもってクリスマスの片づけをする。
今年ブルージュのパティシエVan Mullemは、ジュエラーとコラボレーション、特別な王様のケーキを製作した。
5日間、毎日1つだけ、2500ユーロ(約40万)相当の18金のペンダントをフェーブとして入れた王様のケーキを販売したのである。王冠をかたどったペンダントだったらしい。
カトリックの祝祭ゆえ、わたしが現在住んでいる英国イングランド(英国国教会)では王様のケーキは買えない。
それで毎年自分で作っているのだが、今年はやっと昨日焼いた。
友達からピエール・エルメのイスパハン(薔薇、フランボワーズ、ライチの組み合わせ)の王様のケーキが一番美味しかったと聞いたので、レシピを探して真似してみた。
手前味噌だが、フランボワーズの爽やかな酸味がアーモンドクリームと好相性で美味しかったです!
フェーブはまだ引き当てられていません...
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