私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

「しょうらしい」吉備の酒

2011-09-21 10:46:42 | Weblog
 台風が、また、日本列島を襲って日本各地に災害を巻き起こしています。今度は愛知県など中部地方が狙い撃ちされているようです。その為のでしょうか、昨日から急に気温が下がり、随分と涼しい気温になりましたった。
 それにしても、どうしてこうもまでも自然の猛威が日本ばかりを襲うのでしょうかね。やっぱり、散々な悪評を醸し出した誰かさんの発言ではないのですが、これは神による日本に対する「天罰」そのものではないのでしょうかね。人の傲慢さに対する神の見せしめではないでしょうか。

 とまあ少々「しょうらしい」事を書いてみました。なお、この「しょうらしい」と云う言葉は吉備の方言で、「将にその通りで、真っ当な理に適っている」というぐらいな意味です。
 「あいつぁ ちかごろ しょうらしゅうに よう はたれえて おるのう」

 彼岸までの例えで、ようやく秋が来ました。というわけではないのですが、昨夜、本当に久しぶりに日本酒を飲んでみました、まあ、その何とまあうまいこと。その時、テレビのローカル放送で、哲多町のワインの放送があり、女性アナウンサーが「おいしい」と顔をほころばせていましたが、
 「そんあもんよりよっぽどこれのほうがうめえぞ」
 と、教えてあげたいような気分に浸りながら、ちびりちびりと、牧水ではないのですが「静かにのむべかりけり」と、久しぶりに秋になった夜を楽しみました。

 「やっぱりさけはうめえのう」何回となく、ただ、ひとりごとを言いながら、我が家の山上様の御前でせす。

 そうそう、吉備には、古来よりこんな歌があります(万葉集より)

     ふるひとの たまへしめたる 吉備の酒
                     病めばすべなし ぬきすたばらむ

 「古人乃 令食有吉備酒 痛者為便無 貫簀賜牟」を「フルヒトノ ノマセルキビノサケ ヤモハスエナ ムキスタマハム」と、契沖は読ませています。

 ここにある吉備の酒と云うのは、今でも有名な備後の西条辺りのお酒ではないだろうかと云う人もいますが、ここで言うお酒は黍から醸造した吉備酒だと思われます、黍の取れる地方と云う意味で吉備になったのです。阿波国や安房国は粟の国です。また、紀の国は木の国なのです。黍が沢山収穫さる国です。その吉備から当然お酒が作られていたのです、それが吉備の酒として有名だったのです。だから、特に備後の酒をと云うことではなく、吉備の国の何処にでもあるおいしい酒と云う意味です。
 なお、蛇足ですが、あのスサノウノミコトがオロチ退治した場所は本当は出雲ではなく、吉備地方だと云う学者のいます。その根拠は、当時、日本はまだ縄文の時代ですから、当然、米などはまだ作られてはおらず、出雲でもそうですが、日本中の何処をさがしても、あのような大量の酒を作る所はなく、従って、スサノウノミコトノのオロチ退治用のお酒が作れるのは、唯一の吉備の国だけしかなかったのです。だから、八頭の大蛇(おろち)が出没していた所は吉備の国でなくてははならないと主張されるのです。
 まあ、そんなことはどうでもいいのですが、要するに、この歌の意味は、あなたが送ってくれた吉備の酒は、うま過ぎて、それこそへどを吐くほどいくらでも飲めますよ。だから、お酒とついでに、吐いた時に、それが飛び散らないようにするための簀の子も一緒に送っていただきたいものだと、余りにもおいしかった吉備の酒に対する感謝の意を表する歌らしいのです。       
 念のために、古人とは大友旅人で、六四歳の時のことらしいです。