環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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進化してきた福祉国家⑩ スウェーデンについて私たちが知っていること

2007-09-05 11:54:08 | 社会/合意形成/アクター

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ところで、私たちはスウェーデンという国について、どんなことを知っているのでしょうか。まず、今年4月、前期の講義の初日に、大学生75人に聞いてみました。彼らの回答は次のようでした。


上の図で、青字のものはスウェーデンではなく、ノルウェーやフィンランドと関連します。

マスメディアを通じて断片的に紹介されるスウェーデンの姿を、次の図に示しました。この図は私の本 『スウェーデンに学ぶ持続可能な社会』(朝日選書 2006年2月発行) の13ページに掲載されているものと同じです。




「ノーベル賞の国」「福祉国家」「森と湖の国」。これらは、多くの日本人が抱くスウェーデンのイメージです。このようなイメージとは裏腹に、スウェーデンは科学技術と社会制度のバランスがよくとれた懐の深い国です。図の中央の略図でスカンジナビア3国(スウェーデン、ノルウェー、フィンランド)の位置関係がわかります。

スウェーデンの福祉政策に詳しい訓覇(くるべ)さんによればこの3国は「社会保障国家」ではなく、 「福祉国家」です。

すなわち、他の欧米の先進工業国とは違ってすべての国民を対象とし、「一定の生活水準」を保証する というわけです。

スウェーデンの様々な社会事象が新聞、雑誌、テレビなどのマスメディアを通じて断片的に日本に紹介されています。その多くは好意的であり、福祉先進国(時には福祉大国:以下同じ)、環境保護先進国、原発先進国/脱原発先進国、人権先進国、科学技術先進国、開かれた民主主義の国、女性の社会進出が盛んな国など様々なイメージが登場します。

次の図はその一例を示したものです。前の図と内容的にはほとんど同じものです。毎年10月になりますと、「ノーベル賞の国」となります。これらの従来からのイメージに、1990年頃から、「出生率(合計特殊出生率)の増加」、国連の平和維持活動(PKO)の関連でスウェーデンの「国連平和維持軍」などの新しいイメージが新たに加わりました。



これらの表現方法は様々な社会事象を総合的に判断しないで、それぞれを個別的なテーマとして取り扱っているという点で非常に日本的だと思います。福祉、環境、原発、人権、科学技術、民主主義などは一見独立した事象のように見えますが、これらの事象ははたしてバラバラに起こるものなのでしょうか?

 実はそうではないのです。本来、これらはお互いに密接に関連しあっているはずです。多少の濃淡はあるものの、外交政策、経済政策、交通政策、農業政策、住宅政策などの国の重要政策も相互に関連しており、直接あるいは間接的に福祉政策、環境政策、エネルギー政策に連動します。

一般に、日本のスウェーデンに関する記事や書籍はテーマごとにその分野の専門家の記述によるものが多く、分析的で、社会事象全般を包括的にとらえるという視点に欠けています。このことは何もスウェーデンを理解するときの視点に限ったことではなく、日本の様々な社会事象を理解するときも同様です。

ですから、それぞれの事象を個別的にとらえるのではなく、この図に示したように、「福祉国家」という概念を中心として「それぞれの事象の多くが有機的に関連しあっている」と理解するのがよいと思います。スウェーデンが福祉国家だから、長年かかつて築き上げた福祉国家の維持・発展のために「環境保護」が必要であり、「原発先進国」と言われながらも「脱原発先進国」でもあるわけです。

240年を超えると言われる運用の歴史を持つ「情報の公開制度」、190年を超える「オンブズマン制度」に加えて、福祉国家建設の過程で醸成され 「開かれた民主主義」など、いずれもスウェーデンの現実主義から生まれたものです。福祉国家であるがゆえに、「人権尊重」の関心が高く、男女平等を含めた様々な「平等社会」を理想として掲げ、その実現のために努力してきたのです。 



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