環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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なぜ先駆的な試みを実践し、世界に発信できるのだろう⑫      プライバシーの保護

2007-09-03 21:44:33 | 社会/合意形成/アクター

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昨日のブログで、世界最初の「情報公開制度」をつくったスウェーデンでは、公開を制限される情報として、国家の安全、外交関係、民族関係および個人のプライバシーに関する情報などがあることをお話しました。

今日は、そのような中から個人のプライバシーを保護する法律についてお話しましょう。今日の話は、「スウェーデンあの日・あの頃」というカテゴリーに分類されていることからおわかりのように、15年前(1992年)頃までの話です。

工業先進国24か国で構成するOECD(経済協力開発機構)加盟の24か国のうち、17か国が1989年末までになんらかの形で個人情報を保護するための法律を制定していました。

1980年9月、欧州評議会で「個人データの自動処理に関する個人の保護のための条約」が締結され、スウェーデン、フランス、スペイン、ノルウェー、西ドイツの5か国がこの条約を批准しましたので、1985年10月にこの条約は発効しました。
 
加盟国24か国の先頭をきって、1973年にスウェーデンで「Data Act(データ法)」という法律が成立しました。ついで、アメリカで「Privacy Act(プライバシー法)」と呼ばれる類似の法律が作られ、その他の国々でも、相次いで、同様の趣旨の法律が制定されました。

日本では、スウェーデンに遅れること15年、1988年になってこの分野の関連法が制定されました。この法律は「行政機関の保有する電子計算機に係わる個人情報の保護に関する法律」という名前の法律で、法律の名前が他国の類似の法律に比べて、大変、長くなっています。


法律の名前が長いということはこの法律の適応範囲が狭められていることを意味します。法律の名前からおわかりのように、この法律は「規制対象を行政機関の保有するものでなければだめだ」と限定しています。

ですから、民間機関の保有するものはこの法の対象外なのです。それでは、行政機関が保有しているものはすべて規制対象になるのかといいますと、こんどは「電算機に入っていなければだめだ」と言っています。この様に、日本の法律は、一般に、問題が起きた後にその問題に対処するために制定されることが多く、運用中に新たな関連の問題が起きた時にはじめて、既存の法律を改正して規制対象を広げることになるのです。

スウェーデンでは法律の制定当時から行政機関の保有しているものと民間機関が保有しているものとを区別せず、両者に規制の網をかけています。私たちのプライバシーをこれまでに犯してきたものが何か、これから犯す恐れのあるものは何かを考えれば、当初から両者に網をかけるのは当然のことだろうと私には思えます。

一方、日本の法律では、行政機関の保有する個人情報のみがとりあえず規制対象になっておりますので、おそらく、何年かこの法律を運用している過程で、民間機関の保有している個人情報で私たちのプライバシーが犯された状況が生じた時に、つまり、何らかの犠牲者が出た時になって、はじめて法の規制対象に「民間機関の保有する情報」が追加されることになるのでしょう。

すでに、日本では予期せぬところからダイレクトメールが届くような状況にあり、近々、民間機関の保有する個人情報による様々な被害がでてきそうな徴候がすでにあると思います。このような心配をしておりましたら、1991年12月23日付けの毎日新聞に「生命保険の連絡票、通知票:個人データ原本、出回る 契約者リストも、都内の情報会社に」と題するニュースが掲載されました。今後、日本のプライバシーに関する法律がどの様に展開して行くか注目したいと思います。
 
以上の話は、15年前、つまり1992年ごろまでの話です。世界初の「個人情報保護法」(1973年成立、98年改正)を持つスウェーデンは、日本の近未来を考えるときにこの分野でも参考になるでしょう。ちなみに、日本の「個人情報保護法」が全面施行されたのは、2005年4月1日からでした。


法治国家では法律が社会のシステムを構成する重要な要素の一つであり、国の機能、自治体の機能や国民が法に縛られることを考えますと、法のたて方、法の制定時期、法の内容などが重要なことがおわかりいただけるでしょう。日本は「治療志向の国」であるために、法律の制定が遅いこと、法の対象が狭いことが特徴と言えるでしょう。


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