外苑茶房

神宮外苑エリアの空気を共有し、早稲田スポーツを勝手に応援するブログです。

嫌悪施設

2011-06-23 20:41:57 | 社会全般
海外からビジターたちがやってきて、はや三日間。

毎日、朝から晩まで、あれやこれやと資料提出を求められたり、彼らの目の前で日常の業務プロセスを実践して見せたり。

かと思えば、確かに美味いけれどバカ高い天ぷら屋さんやステーキ・レストランに彼らを招待したりと、様々なエネルギーを消耗しています。
(´∀`)

そんな高価なお店ですから、直前であっても、普段は容易に予約を取ることができるのですが、ちょっと今週は勝手が違います。

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大手企業の株主総会が目白押しの、この時期です。
新しく役員に昇格する方、勇退される方、そして、役員の異動に伴う部課長クラスの人事異動も、一斉に行われます。

加えて、今年に限っては、4月の定期異動が、3.11大震災の影響で凍結されていた企業が少なくありません。

そんな背景があって、今年のこの6月と7月は、恐らく記録的なスケールの人事異動と転居が発生するのではないかと、私は想像しています。
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ところで、静岡県浜松市に本社工場を置く、世界的な四輪・二輪メーカーのスズキ(自動車)が、事業拠点の再編を行うと発表しました。
記事へのリンク

報道によれば、今回の大震災、津波、そして原発事故を教訓にした経営判断とのこと。
具体的には、海岸からの距離、そして原発からの距離を判断基準として事業拠点を再配置して、いざという時でも会社の被害を最小限度に収まるような態勢にするのが目的だそうです。

同社の場合、静岡県への集積度が高く、かつ、浜岡原発の近くにも施設を持っているだけに、その危機感は半端なものでなかっただろうと、容易に想像できます。

このような危機感は、静岡県に事業拠点を有する他の企業においても、きっと共通するものでしょう。
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不動産の価値を見極める基準として、「不動産鑑定基準」というものがあります。

不動産鑑定は、元々は金融機関の内部で蓄積されてきた担保評価に関する長年のノウハウが積み重なって、ある種の学問レベルにまで達したもの。
ちなみに、この基準に基づいて、様々な不動産の価値を客観的に見極めるプロフェッショナルが、国家資格である不動産鑑定士です。
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この不動産鑑定基準では、不動産の価格を形成する要因を、不動産の効用及び相対的稀少性並びに不動産に対する有効需要の三者に影響を与える要因と定義しています。

その価格形成要因は、一般的要因、地域要因及び個別的要因に分けられます。

その中の地域要因に、「嫌悪施設」という言葉が登場します。

嫌悪施設とは、周辺の人々に嫌われる施設のことです。
周辺に嫌悪施設がある場合、不動産の価値を見極める際にマイナス要因となります。

嫌悪施設に関しては、これまでは次のように説明されてきました。

○住宅地の品位を低下させる施設(パチンコ店や風俗営業など)

○騒音、悪臭、汚染を生み出す工場などの公害発生施設(大気汚染や騒音、悪臭などを発する工場など)

○嫌悪・危険施設(墓地やガソリンスタンド、高圧線鉄塔、ゴミ焼却場、火葬場など)

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3.11大震災・液状化・津波、そして原発事故を境に、そして今回のスズキの経営判断を見ても、不動産の鑑定基準も変わってくるでしょう。

外洋に面する海岸からの距離、そして原発からの距離が、否応なしに不動産の価値に影響してくる、それも半径50キロ・100キロという単位の広範囲のエリアに影響してくるということです。

心情的には、現時点において、原発が「危険・嫌悪施設」の筆頭に挙げられるのは避けられないでしょう。
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海江田経産相が、原発の安全性を地方自治体に説明して回っています。
しかし、その説明を国民がどのように受けとめているか、本当に説得力があるかどうかは、今回のスズキの経営判断をみても明らかでしょう。


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