ふみさんの日々雑感

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文庫「死都日本」石黒耀著

2008-12-28 19:19:56 | 映画・ドラマ・小説・マンガ
分厚い文庫は、たった24時間の出来事をドキュメンタリーのように追った。九州の南部で発生した人類が始めて体験する“破局噴火”が、四国へ中国地方へ大阪へ名古屋へ、そして東京へと、その影響を広げて行く。それに、対しての政府の対応は・・・国民は・・・。あっという間に読み終わった。

この本が刊行されたのは、2002年9月。でも、日本の状態があまりにも今に似ている。不況で、総選挙があり、長く続いた政権は野党第一党にその政権を渡す(今年、そのはずだったが)。目に余る公人の汚職や不祥事、横領。政治・行政の腐敗と破局的な財政赤字と社会保障の後退。

火山学者の黒木と記者の岩切が、旧式4WDのカリブで火砕流の中を火砕サージの中をラハールの中を知識と知恵とで生き抜くのが圧巻。まるで、実況放送の映像をみているようだ。

何と言っても新しい首相が“日本のヒトラー”と言われながらも、“K作戦”となずけて、その日の為に無理難題を押し通して、考えられる限りの事を秘密裏に準備する。日本人が生き残る為に、世界を脅迫する為の秘密の武器も衛星で打ち上げて(実際に使わない事願いながら)。

アメリカ大統領達の話が真実をついていて面白い。「あの国の政権が自己保身のためとは言え、どれほどひどく国民から搾取して我々に貢いでくれたかを考えると、私は少々日本国民に気が咎める」「あの国の旧政権与党は6兆ドルに及ぶ国債や地方債を乱発して、大半を政権支持層で使ってしまった為に、行政は異常な赤字状態だ。」「あの国は大衆からの略奪経済で成り立っている」と。

今の日本の状態を見ると、本当に作者の言うとおりだと思えてくる。

日本列島が、それこそ、火山灰で覆われて死の国になってしまう。そして、それは北半球を覆って何年にもわたり火山の冬の時代になる。世界的に食料危機が訪れる。

戦争で「国敗れて山河あり」と言うが、国が敗れても美しい自然があれば人々は生きて行ける。でも、国があっても、山が川が自然が無くなれば人々はどうして生きて行けばいいのだろう。

権力と富を持っている人達が国を捨てて逃げ出すのか、生き残った全ての国民が助け合って生きて行くかは、国を統べる政治家の責任である。

ラストの首相の国民に向けての(外国向けでもあるが)演説に感動した。作者が日本の首相に求める熱い思いを感ずるし、共感する。

国土を失い、今と未来に対して恐怖に打ちひしがれている国民に、日本の再生を力強く具体的に語るのである。その為に、力を貸してくれと。

その熱い演説を聴き(読んで)、私自身も感動した。そして、この人のような政治家が小説の中だけにしか存在しない事を悲しく思う。



コメント
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