シネマトリックス

面白かった映画、つまらなかった映画、見なかった映画は空想で・・今はたまののんびり更新です。

「らしさ」って何?

2008-03-07 23:18:09 | Weblog
99年デヴィッド・リンチ監督作「ストレイト・ストーリー」

「ロスト・ハイウェイ」と「マルホランド・ドライブ」の間に撮った本作は、いわゆる「リンチらしからぬ」1本として有名ですね。

ずっと前に、後半のみ鑑賞したのだが、昨日全編を無事見ることができました。

「年取って何が最悪なこと?」
「そうさな、若い頃のことを覚えていることだな」

この映画ってたぶん、40代以上になっていないと「カラダに来ない」んじゃない?

冒頭カメラは、田舎町のとある家の庭を、上の方からゆっくり滑るように降りてくる。

「おお~~この芝生に指でも落ちてんじゃね~~?」という気になる。

いやいや、この映画には猟奇的なパーツもフリークスも出てきません。

どうやら人生のファイナル・コールが聞こえ出したストレイトじっちゃん。

10年前にケンカした兄貴、病に倒れたらしい。

じっくり考え、「会いに行く」ことにする。

でも車は運転できない。何で行くの?

500キロ離れているんだよ。

ストレイトじっちゃんは、時速8キロのトラクターでテケテケテケテケ。

道中、様々な人々との出会いがある。これがまた、みんな優しいのよね~~

そして、ついにじっちゃんは兄貴の家にたどりつく。

ラスト、ここで交わされる言葉の何たる少なさ。でも、それでいいの、ハグしなくていいの。

「リンチらしくない」とのことで違和感バリバリの方もいるようですが、私は別の意味で「リンチらしい」と感じました。

「ここでこう感じろ」とぎゅ~~~と押し付けてくることなく、「好きに受け取らせてくれる」・・そんなリンチっぽさ・・この作品からも香りたちます。

いろいろなシーンが素晴らしかったけれど、じっちゃんが戦場で仲間を誤射して死なせてしまった話をするシーン・・演じるリチャード・ファーンズワースの瞳が涙でいっぱいになるシーンのスーパーリアル。

そして、娘を演じたシシー・スパイセクもまた見事!

この人もまたカメレオンのように役によって姿を変えますね~~


あまり単純に「心温まる」とか言いたくない、それでくくってしまうのはモッタイナイ・・

この映画と出会えた年齢が10代20代でなかったことに感謝します。