波打ち際の考察

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波屋山人

吉備

2018-07-10 21:37:27 | Weblog
倉敷市真備町の洪水被害が心配だ。

ただ、洪水や土砂崩れの恐れが以前から指摘されているような地域は、そもそも居住に向いていない。
東京にも、川が決壊したらたいへんな被害が確実視されている地域がある。
リスクを直視せず、災害に直面してからあわてるのは、あまりにも場当たり的だ。

現代では、インターネットを使ってハザードマップも等高線図も地質マップも古地図もすぐチェックすることができる。
家の購入を考えている人は、そういったものを見ておくべきだと思う。
先祖代々安定した土地に住んでいる人たちは、危険なところには住まない。
災害のリスクを無視して危険な地域に平然と住むのは、一種のモラル崩壊状態かもしれない。


真備町(まびちょう)は吉備真備(きびのまきび)に由来しているようだ。
それにしても、吉備真備は不思議な名前。なぜ「きびのまび」ではなくて「きびのまきび」なのだろう。むかしから「まきび」だったのだろうか。。。


素人の語源推測は、ほぼ無意味。こじつけが多く、初歩的な言語学的間違いも多い。
そういうことはよく認識しているけど、語源が不明なものについては、ついいろいろ想像してしまう。
とりとめのない連想を少しメモ。


【吉備】
吉備(きび)とよばれる、現在の岡山から広島に広がる地方には、かつて王国があったと言われている。
出雲、吉備、大和など各地にあった勢力が、古墳時代には大和王権に収斂した。

「きび」の語源はよくわからないが、きび団子で有名な雑穀、黍(きび)に由来するのではないかという説がある。
黍(きび)は黄実(きみ)が語源だといわれているらしい。

だが、「きび」の語源は、古くは「君(きみ)」だったかもしれないと私は想像している。
「び」と「み」は発音が似ているので入れ替わりやすい。
(私は幼い頃、果実の「ぐみ」のことを、ずっと「ぐび」だと思っていた)

岡山北部には「美作(みまさか)」という地域がある。
これも語源が不明だけど、「吉備の先」という意味にも読めるのではないだろうか。
「美作」は「備先」と字を変えて表現できるかもしれない。

「きび」が「きみ」であれば、吉備の国は、君の国、公の国だった可能性がある。
では、きみ(君、公)とは何か。

【君】
「きみ」の語源は文献を見ても定説はないようだが、言葉としては、きし(岸)、きり(霧)などの語源が参考になるかもしれない。

日本語の神秘学とでも言えそうな言霊学を参考にさせてもらうと、岸(きし)の「き」は、切る、に通じているらしい。カ行は区切るイメージ。
際(きわ)は、遮断された、切り取られた縁(ふち)、というようなイメージだろうか。
霧(きり)の語源は、切る、断ち切るなど、切断・遮断のイメージから来ているらしい。
霧によって眺めが遮断される?ということなのだろうか。

そこで、君(きみ)の語源について、私なりの推測を記してみよう。
「き」は切り取り・遮断のイメージ。「み」は、身や実に通じる。空洞ではないもの、中がつまった、ボディ、実体、主体といったイメージ。
もしかしたら、「見」にも通じるのかもしれない。「見る」「診る」とは、中がつまったモノを把握すること。

「きみ」は、「見える実体の際(きわ)、境目」のようにも読み取れる。
言ってみれば、「きみ」は、見えるものと見えないものをつなぐ存在。
それは、神様と人をつなぐ存在。ジャーマンであり、祭主であり、神官でもある。
そういった人が「きみ」と呼ばれるリーダーとなり、やがて「おおきみ」と呼ばれる権力者となったのかもしれない。
おおきみ=後の天皇は祭祀をつかさどり、最高位の神官としての地位にあった。
見える実体と、見えない世界の際(きわ)に立つ「きみ」は、漢字で表現すれば「き(切・断)+み(身・実・見)」というような感じだろうか。

出雲や大和の神話は広く知られているけど、古代吉備にも、「きみ」と呼ばれる祭祀王がいたのかもしれない。

【播磨】
余談だが、古代の吉備の国は、現在の兵庫県の西部(現在の西播磨地方)にも広がっていたと言われている。
「播磨」の語源も不明のようだが、私は、「ハリの木(ハンノキとも言われる)の生えているところ」の意味ではないかと思っている。
「播磨」は、「榛間(ハリマ)」の可能性がある。
播磨にはいくつか「~ま」という地名がある。「飾磨(しかま)」は、鹿に関係があるらしい。鹿がいるところ、「鹿間」の意味だとも考えられる。そういった地名がある地方では、「~ま」という地名がある場合、「ま」は場所、空間、地域という意味で使われている可能性が考えられる。
(ちなみに、「山」も、とんがったところの意味だと考えられる。ヤは矢もそうだけど、とんがった、ベクトルを感じるイメージ。大和の語源は山人=やまと、やまんと、だったかもしれない。縄文人というか先住民が最後まで勢力を保ったのは内陸部。弥生人というか倭人というか海洋民族は沿岸部から勢力を広げた。近畿や中国四国地方は、現在でも沿岸部よりも内陸部のほうが二重まぶたの比率が高い印象がある)

また、兵庫県西端の赤穂市や相生市のあたり(旧赤穂郡)は、播磨国風土記に記載がないので、編纂された頃(奈良時代初期)は播磨ではなく吉備の勢力下だったのではないかとも言われている。

【イマンド】
この旧赤穂郡の歴史資料を見ていると、少し気になる記述があった。
謎の地名「イマンド」の由来について、「ヒマンド(火万燈)」だという説が紹介されている。

しかし、この説には疑問がある。そもそも、「ヒマンド」が「イマンド」に転訛するのだろうか?
フランス語では語頭のHは発音されないが、日本語では語頭のHは重要だ。
「引く(ひく)」と「行く(いく)」では全然意味が違う。日焼け(ひやけ)が嫌気(いやけ)に転訛することはない。「暇」が「今」に転訛することもない。語頭の「ひ」と「い」ははっきり区別される。
ヒマンドがイマンドに転訛することは考えにくい。
(いざり歩きの「いざ」と「ひざ(膝)」は関係がありそうだが...)

また、そもそも「万燈」という表現は当て字っぽいのであやしいが、「万燈」にはそれだけで火の意味があるので、あえて頭に「火」をつけて「火万燈」などと表現する必要はない。
強引な当て字の可能性が高い。

このイマンドという地名は、古代山陽道に面している。
古代山陽道からイマンドあたりで交差する道に入っていくと、旧赤穂郡の役所(郡衙)があったところに数百メートルで到達するようだ。現在も、赤穂郡上郡町中野には「政所(マンドコロ)」という地名が残っているという。
街道からマンドコロに入って行くあたりは、入政所、イリマンドコロ(イマンドコロ)からイマンドに転訛したと考えるほうが自然ではないだろうか。
近くに「マンド」を含む地名があれば、関連が考えられる。
当て字のような「火万燈」説よりは、「入政所」語源説のほうがまだ説得力があるのではないかと思う。
(井原、井山、井田、井浜などといった地名は、井戸との関係を推測されているけど、入り原、入り山、入り田、入り浜から転じた可能性もある)


<参考>
・霧の語源
https://books.google.co.jp/books?id=z7dVDwAAQBAJ&pg=PT47&lpg=PT47&dq=%E9%9C%A7+%E8%AA%9E%E6%BA%90&source=bl&ots=1kke2ovPKg&sig=QIqbz0JR3hEnVLowh5oA9kPhwFw&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwjZ2Iebw5XcAhUDGpQKHZeRC8oQ6AEIeDAG#v=onepage&q=%E9%9C%A7%20%E8%AA%9E%E6%BA%90&f=false

・岸の語源
http://gogen-allguide.com/ki/kishi.html
「きる(切る)」の「き」に接尾語の「し」が付いたとする説が妥当であろう

・播磨
http://arakawasaitama.com/hanaindex/subhannoki.html
開墾地に植え護岸や稲掛に用いたことから古語のハリ(墾)から「墾(ハリ)の木」と呼ばれそれが「榛(ハリ)の木」に変化したという。そしてr音 はn音に変化しやすいのでハリノキがハンノキになったと言われる。

・飾磨
http://saigyo.sakura.ne.jp/shikama.html
「飾磨」は「しかま」と読む。
播磨国風土記にも出てくるほど古い地名で、由来は「鹿がいて啼いた」とされる。

・イマンド(火万燈?)
http://minpou-k.news.coocan.jp/mp201612/minpoh16-12.html
ここはイマンド(火万燈がなまった)という所で、赤松円心が高田城(抜石城)の高田兵庫助を攻めるとみせて牛や馬の角に松明を付けて兵数を何倍にも見せ、関心を引き付けておき、実は裏手の野桑から攻め落とした所です。

交差点から南へ約700m行くと高田小学校のある中野字政所です。役所があった所で、道脇に処刑された罪人を弔う石碑が昔を偲ばせます。

・イマンド(火万戸?)
http://minpou-k.news.coocan.jp/mp201805/minpoh18-05.html
円心は、高田の火万戸(現在の宇治山)に無数の松明を用意し、ここから攻めると見せて、北側の鞍居側から攻め上って落としました。



コメント (7)
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