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小さじ半の実で、アリ50匹を1年間賄う草

2016-11-22 06:25:42 | 日記
線香花火の閃光

 細長く伸びた葉と細かな実が一杯に着いた穂、一見してイネ科の植物だと
分かります。
では「イネ科の何?」
そう尋ねられるとチョト辛い。
 私が簡単に区別を付けられるのはほんの数種類だけ、姿かたちが似ている
のでイネ科は面倒です。
だから見かけても、大抵の場合素通りしてしまいます。

 毎週火曜日はウォーキングの途中で見かけた山野草を取り上げています。
今週は イネ科 スズメガヤ属 カゼクサ です。

 細くて長い葉は根元から伸び、その中心に立ち上がった茎の先端には穂が
付いています。
穂にある実は小さいし、穂全体も他のイネ科の仲間の様に特徴のある目立った
姿はしていません。
 強いて言うなら、線香花火が四方八方で小さく瞬いた瞬間を切り取れば、
こんな形になるかもしれません。

 この草は根が良く張っているので、茎を鷲掴みにして引っ張ってもなかなか
抜けません。
大抵の場合抜きにくい草は嫌われるものですが、カゼクサを悪く言う人は余り
いません。
 それもその筈、人の邪魔になる様な畑にはほとんど顔を出さず、道端などの
目立たない場所を好んで根を張っています。
一生懸命草取りをする農家の方々にとっても、カゼクサは関心の薄い存在です。

アリのありあり

 そもそもが見分の難しいイネ科の所属、しかも人目に付かない場所に生えて
いる草となれば、誰にも注目されなくて当たり前です。
 ところがすっかり忘れられたそんな草を、懸命に探し求める生き物がいます。
クロナガアリです。
虫の死骸などを食べる一般のアリと違い、このアリは草の実を主食にしています。
中でも好んで食べるのがカゼクサの実。
 一粒の大きさはおよそ1mmですが、それが小さじ半分程あれば50匹の働き
アリを1年間養えると言います。

 働きアリは巣穴の周囲30mを歩き回って、カゼクサなどの実をせっせと集め
て巣穴に運んで貯蔵します。
暗くて湿った巣穴の中で、もしも実が芽を出してしまったらさあ大変。
食料は消滅、巣穴は破壊されてしまいます。
 そこでクロナガアリはある種のフェロモンを出して発芽を押さえているのだ
そうです。
 大抵の草の実は秋になって穂からこぼれ落ちて来ます。
その為ほとんど実が無い夏の間、クロナガアリ達は地上から姿を消して巣穴の
奥で暮らしています。

 一方で見て見ない振りをして通り過ぎる者がいて、一方に愛してやまない相手
がいる。
自然界のバランス感覚の何と絶妙な事。
コメント
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