Me & Mr. Eric Benet

私とエリック・ベネイ

エル・グレコ展@東京都美術館

2013-02-28 18:55:19 | 私の日々
黒をバックにした赤、青、黄の色彩。
キリストやマリアを描いた宗教画。
エル・グレコに対して固定したイメージを抱いていた。

美術展、肖像画から始まっていく。
一作品目は自画像。
自画像とは鏡に映る自分との対話。
エル・グレコの目に自分はどのように映っていたのか。
あるいは人からどのように見られていると思っていたのか。
親しみのある人物であったことを感じさせる自画像。
どの角度から観ても彼とのアイコンタクトが成立する。

肖像画が何点か続くがその人の内面、
善なる部分を引き出して描いたと思われる作品達。

キリスト教史における聖人たちの肖像画が次のコーナーに配される。
深い信仰を持つ画家の殉教した聖人、世を捨てて信仰の道へと入った先達への畏敬の念が、
一つ一つの作品に込められている。

展示はマリア像、キリスト像へと進んでいく。
教会の壁面、天井画として描かれた物。3作品で遂になるものもある。
教会内部で距離を持って観るはずの作品を混雑する美術館では接近して観ざる負えない。
「無原罪のお宿り」の前ではしゃがんで下の角度から絵を見上げてみる。
「オリーヴの山のキリスト」
追手の迫る中、切迫する状況を察したキリストは三度祈るように弟子達を促すが、
知る由もない弟子達は眠ってしまう。
その様子が一枚の絵の中に描かれている。
「十字架のキリスト」
苦しみや悩みを離れて安らかな境地に達した様子がS字型の構図で表現されている。

キリストを愛し、信ずる画家が独自の解釈を作品へと加えていく。
それはその時代に受け入れられたものもあれば、認められない作品もあった。
一筆ごとに自分の作品から人々の菩提心が育まれ、キリストと心を通わせることができるよう、
深い祈りの中に作成されたはずだ。

エルグレコが一つの作品を描くのに、自身の宗教観、信仰心、自分と向き合いつつ、
真摯な想いで描き連ねた作品群に圧倒される。