Me & Mr. Eric Benet

私とエリック・ベネイ

金子三勇士 7/22 @NHK FM 「リサイタル・ノヴァ」

2012-07-23 11:34:24 | ピアニスト 金子三勇士
金子三勇士、一昨年の夏にもNHK・FMに登場したが、
その時は公開収録もあり、私もNHKのスタジオでの演奏に立ち会い、
後日の放送も聴くことができた。
観客の笑いや拍手、また他の出演者達との寛いだ会話の内に、
番組は進められた。

今回はスタジオにて収録され、観客はなく司会者と二人だけの会話、
ぐっと改まった雰囲気になる。

「6つのルーマニア民族舞曲」 バルトーク作曲
「“ミクロコスモス”から“オスティナート”」 バルトーク作曲

民族的なピース、音の洪水のようなバルトークの曲が続く。
この二つの曲はいつもとてもビジュアル的だと思う。
音楽から幻想的な視界が拓けてくる。

「セーケイ民俗の歌」 コダーイ作曲
民族的でありながら、近代音楽を感じさせる調べ。
ピアノの残音が演奏後もしばらく続く。

金子三勇士、バルトーク、コダーイは最も得意とするところ。
日本では余り馴染みのないハンガリー音楽の素晴らしさを
使命感を持って伝えようとしている。

「“慰め”第3番」 リスト作曲
今回は「慰め」と記載されているが、今までの演奏会では「コンソレーション」
とタイトルが書かれてきた。
豊穣な音の流れ、ロマンティシズムに心が満たされていく。

「メフィストワルツ 第1番」 リスト作曲
演奏会では勢いや激しさが印象に残る曲だったが、
NHKの録音室からの放送を聴いていると、この曲の持つ美しさ、
そしてユーモラスなところも印象的だ。
リストが遊び心を持って作曲した曲だということがわかる。

「ピアノ・ソナタ ロ短調から 最後の部分」 リスト作曲
(3分55秒)
ずっと聴き込んで来て金子三勇士のテーマ曲ともいえるこの30分に及ぶ大曲。
3分55秒聴くことにどういう意味があるのかと最初にプログラムを見た時に思った。

この曲の最後の部分にあるメッセージ、特に終わりの三音、
そこに集約されたリストの世界観、未来への予言、
何かが終わる、それが世界なのか人生なのかは不明だが、
終わった後にも救いを感じさせる、そこに込められた祈りにも近い曲の力、
その部分に焦点を当てた司会者と三勇士の説明と共に演奏を聴けたのは、
大変意義があることだったと思う。
そしていつものように三勇士がピアノから指を放った後も音が続いていく。
コンサートでは拍手でかき消されてしまい、聴こえない部分も聞き取ることができた。

トークの中では今までのこのブログのカテゴリー「ピアニスト金子三勇士」
で書いてきたことと重複する部分は省き、新たに語られた部分のみに絞ると、
「6歳から16歳までハンガリーにいて、
ほとんどハンガリー人という自分のアイデンティティーの中で、
日本人としてのDNAを探求して行きたいと思い帰国へと至った。
帰国して6年たった今、
今後、日本とハンガリーとの融合という部分を楽曲の中で表現していきたい。」
そのような内容だった。

ラジオから流れる金子三勇士の演奏を聴くのは2年振り。
演奏会では視覚に頼りがちだし周囲の観客の反応などにも惑わされる。
じっと聴覚だけを頼りに聴くことは新鮮な感動があった。
また今回はハンガリーの作曲家に絞ったことで凝縮されたハンガリー色に満ちた演奏となった。