Me & Mr. Eric Benet

私とエリック・ベネイ

永遠のモータウン Standing in the shadows of MOTOWN

2012-07-18 10:04:35 | その他のライブ
モータウンのファンクブラザーズで活躍したベーシスト、
ボブ・バビットが亡くなったというニュースが昨日入ってきた。

2006年4月、コットンクラブにThe Funk Brothersの来日することが決まり、
「永遠のモータウン Standing in the shadows of Motown」
映画館では観られなかったのでDVDを購入した。

その中で最も印象に残っているインタビューは、
Meshell NdegeochelloがBob Babbitに
「黒人ばかりの中に入っていて、逆差別を受けなかったか?」と問い、
「皆、いつも良くしてくれた。」と言葉を選びつつ答えながらも、
声を詰まらせてしまうところだった。

私の思い違いかもしれないともう一度、このシーンを観てみた。
ミシェル・ンデゲオチェロはボブ・バビットに
伝説のベーシスト、ジェームズ・ジェマーソンの後釜になった重圧、
またキング牧師が暗殺された後の暴動などもあり、アフリカ系アメリカ人に交じって、
アフリカ系の人たちの集まる場所で演奏することに問題はなかったかと聞いている。

映画として通して観るとずっとクリアだった映像がこのシーンだけ、
ガサガサとした雰囲気の中でざらついた不明瞭な音声と映像になる。
そして質問されているボブの落ち着かない様子、手や表情のアップになる。
「親しみを皆、示してくれたよ。」と言いながらも
それは真実ではなかったことが容易に推測される。
(これはメンバーではなく観客のことを指している)
それまで淡々としていたミシェルも気持ちを抑えられず、
顔をくしゃくしゃにしてボブの体をさすった。
私は以前観た時に、ボブが泣いているように思えてもらい泣きしたのだが、
ここのシーンだけ見た人はそれを感じないかもしれない。

この映画はモータウンの楽曲に貢献しながら知名度のなかった
ファンクブラザーズにスポットを当て、
多くのエピソードやゲストアーティストにより往年のヒット曲を再現している。

ベーシスト、ジェームズ・ジェマーソンがモータウン25周年の時に、
招待されることもなく自分で2階席を買って見にやってきて、
その2か月後には故人となったというエピソード、
ギタリスト ロバート・ホワイトが、
ダイナーでオーダーしようとした時にちょうど"My Girl"が流れてきて、
ウェーターに「この曲のイントロのギターリフは自分なんだよ。」
と言いかけてやめてしまった、どうせ信じてもらえないと思ったから、
そんなエピソードが散りばめられている。

この映画に出てきたファンクブラザーズで既に他界した人も数人いる、
そしてゲストスターとして出演しているジェラルド・レヴァートも。
歴史に残る名曲数々の作詞作曲をしてきたアシュフォード&シンプソン、
ニコラス・アシュフォードも昨年他界した。
二人の2009年の来日時のブルーノートのライヴの様子は忘れられない。
振り返ればモータウンの歴史には、
タミー・テレルやマーヴィン・ゲイの悲劇的な死もある。

ファンクブラザーズの来日(この時にボブ・バビットは同行しなかった)
生きる歴史を観る思いで、個人的には感動したが、誘った何も知らない友人は、
ゲストとして参加したヴォーカリストの方に注目してしまっていた。

映画の最後はチャカ・カーンとモンテル・ジョーダンの歌う
"Ain't No Mountain High Enough"で終わる。
最初にこの映画を観た時にチャカとモンテルがなぜ座って歌っているのかと思った。
今はそれがわかる。
立って動きながら歌ったらチャカとモンテルのショウになってしまう。
ファンクブラザーズへのリスペクトとして座ったまま二人は歌ったに違いない。

映画はミシェル・ンデゲオチェロの言葉で締め括られる。
「ピッツビルとは建物ではなくて、そこの中にいる人々のことだった。」