Me & Mr. Eric Benet

私とエリック・ベネイ

金子三勇士 Halloween Live @トッパンホール 10/30

2010-10-31 02:04:01 | ピアニスト 金子三勇士
トッパンホール10周年記念コンサート、そして金子三勇士CD発売記念のコンサートでもある。
トッパンホールからの案内状、「ハロウィンの日、ドレスアップしてお越し下さい。
普段クラシックを聴かない方もぜひ。」と10月最後の週末、楽しいイベントへといざなう。

何人かの方からお天気の心配のメールを頂いた。
お着物でいらっしゃるつもりの方々。
「絶対に晴れます。今までリサイタルで雨が降ったことはありませんから。」と豪語した私。
金子三勇士、オーケストラやアンサンブルの時には天候が崩れることはあっても、今まで、
単体のリサイタルはいつも天候に恵まれてきた。晴男なのだ。

照る照る坊主をつるしこそしなかったが、この日が晴れるようにと強く念じていた。
昨日の朝になって、これはもう台風は避けられないとあきらめた。
後はいらっしゃる方々が雨の中、無事にコンサートに到着されることを祈るのみ。
しかしながら、昨夜いらした方にとっては豪雨の宵、
来た甲斐のある忘れられないリサイタルになったのでは。

リスト   ハンガリー狂詩曲 第2番 嬰ハ短調
リスト   愛の夢
リスト   ラ・カンパネラ
コダ―イ  セーケイ族の民謡
バルトーク ルーマニア民族舞踊
リスト   ピアノソナタロ短調

アンコール
ショパン    前奏曲第15番 変ニ長調 「雨だれ」
スカルラッティ ソナタ

台風の中、それぞれ電車が徐行運転になったり車が渋滞したり。
反対に大学が休校になって間に合ったという方もいらした。
素晴らしい音響とピアノ、木のむくもりが柔らかくステージを包んでいる。

最初のハンガリー狂詩曲、客席の緊張感もあり、演奏者は観客、ホールとの距離を、
計りながら滑りだした。
一度、舞台の袖に入り、戻って来て「愛の夢」
今までも何度も聴いてきた曲だが、この日が一番、豊かな奥行きを感じさせた。
愛すること、生きることが演奏の中に集約されている。
曲の終わり、誰も拍手をする人はいない。
会場が、観客が一つの祈りとも言える大きなエネルギーとなって演奏者と一体になっている。
「ラ・カンパネラ」生で聴くのは初めてだったが、美しい音の連なり、
金子三勇士ならではの曲に仕上がっていた。
自然界の音を聴いているような心地良さを作り出している。

コダ―イ、バルトークはハンガリーの民族色たっぷりの中に現代的な味合いがある。
リスト、ピアノソナタ、まるでリストが天から降りてきて金子三勇士に宿ったように思えた。

アンコールは昨日の天候にちなんで、またショパン生誕200周年ということもあり「雨だれ」
続くスカルラッティ、金子三勇士の手に掛かるとチェンバロで演奏されたバロック音楽も
ピアノを通して新たな息吹を与えられる。
この曲はリサイタルの最後を飾るに相応しく斬新で涼やかだった。

拍手が鳴りやまずスタンディング。
金子三勇士、この日に足元の悪い中、会場まで足を運んでくれた観客達に感謝の言葉。
演奏後の余韻を大切にするため、あえてマイクを使わず地声で話した。
私はそれがとても三勇士らしくて良いと思った。

終了後はホワイエにて金子三勇士のインタビューが始まる。
この日の燕尾服、ポケットチーフはハロウィンに相応しくオレンジ色。
全部は聞き損ねたが、「彼女ができたら何を望むか?」という質問、
「舞台の袖で自分の演奏を聴いて欲しい。」
「将来、目標とするところは?」
「世界の平和に貢献できるアーティストになりたい。」
このふたつはしっかりと聞き取った。


抽選でスポンサーからのプレゼント、金子三勇士、本人からのプレゼントが。
当選者は壇上で2ショットの記念撮影。
場内は「いいなぁ。」の声が沸いた。
金子三勇士本人からのプレゼントは普段愛用しているタオルのセット、
猫柄、ピアノの鍵盤柄、私も心の中で「いいなぁ。」

17歳の時から彼を観てきて今は21才。
既に大物の風格が漂う。
職人芸ともいえる域に達している。
初夏に行ったサントリーホールのツィメルマンのリサイタルと重なった。

台風の中、本物のファンに囲まれての感動の夜になった。
帰り道、外に出ると雨足が弱くなっている。
いらした方々も胸に灯った暖かな光に照らされながら、
心豊かに家路に着かれたに違いない。

一人の少年がピアニストとしてプロになることを志し、
1stアルバムが発売され、デビューコンサートが行われる、
そういう期間を共有できたことは私にとって大きなモニュメントだった。
そしてこの日をもってそれが完結した。