ソフトバンクグループの孫正義社長は6日、トランプ次期米大統領とニューヨークの「トランプタワー」で約45分間会談し、総額500億ドル(約5兆7000億円)を米国でIT(情報技術)分野を中心にした新興企業に投資し、5万人の雇用を生みだすとトランプ氏に約束したとの報道、テレビ放送でもトランプ・孫がにこやかに握手する場面が放映された。
この孫氏の行動に株式市場では株価が6%も上昇し、大いに評価し、喝采を送った。孫氏はオバマ政権下の2014年米携帯3位、TモバイルUS買収に失敗、それは米連邦通信委員会(FCC)が反対したからだ。トランプ政権ではFCC委員長を交代させ、規制を緩和し、Tモバイル買収が出来ると読んだのだろう。
孫社長の行動力はこれまでのM&Aなどで端倪するものがあるが、後継者スカウトでは巨額の報酬(145億)で招いたニケシュ・アローラ氏がそれほどの価値がなく、市場の評価が低かった例もある。
今回のトランプ政権への食い込みは次のような最近の孫社長の動きの延長上で、グローバルに動く政商という感がする。
①サウジアラビアの副皇太子と組み政府系ファンドと1000億ドル(12兆円)規模の投資ファンドの設立。②英半導体設計大手のアーム・ホールディングスを3兆3000億円で買収する際にも、英国のメイ首相に、英国内の同社の雇用を5年以内に2倍にすると表明し、欧州連合(EU)離脱で揺れるメイ首相を喜ばせた。③韓国では9月に朴槿恵大統領と会談し、10年で4500億円を投資すると発表している。
自分の事業のためには政権トップに食い込むというのは理にかなっていると思うが、大きなリスクが有る。政権は変わるものだからだ。今回のトランプとの握手は民主党にとって決して気持ちが良いものではない。近い内に出て来るものは韓国だろう。朴槿恵大統領は今や風前の灯火、4%しか支持のない大統領と何を話したかということが野党の関心を引き、場合によってはソフトバンクに対して悪影響が出てこよう。