粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

飛んでるイスタンブール

2013-06-11 11:24:06 | 国際時事

今トルコは政府によるイスタンブールの都市再開発政策を巡り反対デモが頻発し騒然としている。背景には政府の強権的なイスラム化政策への反発があるようだ。各地に拡散しているが最大都市イスタンブールは当然そのデモの渦中にある。東京と2020年の五輪開催を巡り熱き誘致合戦を繰り広げているが、トルコの争乱の今後が気になるところだ。

個人的なことをいうと、イスタンブールは訪れてみたい都市の五本の指に入る。思えば、イスタブールは人類史上最も長きに渡って栄華を誇った世界都市といえる。4世紀前半、古代ローマ帝国の皇帝でキリスト教を公認したコンスタンチヌス帝がここに遷都して以来、その後継国東ローマ帝国の帝都しかもキリスト教世界の都として君臨した。その栄華は西欧のパリやロンドンなど足下にも及ばない。

東ローマ帝国は末期の混乱で国力が衰退し、15世紀半ばにオスマントルコに滅ぼされる。しかしオスマン帝国は占領地イスタンブールを首都にして、今度はイスラム世界の帝都として繁栄する。つまりイスタンブールはキリスト教とイスラム教の2大宗教の都として長きに渡って世界の人々から憧れの街として崇められていたのである。

東ローマ帝国時代は古代ギリシャからの高度の文化が継承され、これが後のイタリアルネッサンスに引き継がれた。オスマン帝国も厳格なイスラム化を行わず、キリスト教に対して寛大な政策が取られ、スレイマン大帝などの名君により東ローマの高度の文化も保護される。

20世紀初頭帝国が崩壊すると、今度は建国の父ケマル・アタチュルクにより、政教分離などの西洋型の近代化が進められ民主主義も定着している。

つまり、トルコはイスラム教とキリスト教が融合した多元的な世界であるし、その象徴が世界都市イスタンブールということになる。事実街は海峡を挟んでアジアとヨーロッパ両大陸に広がりボスポラス橋が双方をつなげている。

現政権与党は穏健なイスラム原理主義政党であり、これまでは特にイスラム色を全面にだすことはなかった。ここへきてその色を濃くしようという強権的な面がでてきたようだ。トルコ特にイスタンブールにはこの原理主義は決して似合うとは思わない。他文化に寛容的であるのがこの都市の風土である。したがって今回のデモは理解できるし、イスラムの厳格化は決して成功しないと思う。

ただいうまでもなくこの地に住む人々は敬虔なイスラム教徒である。そのベースは強固であり、決して西洋的な生活様式にはなり得ない。おそらく今後も西洋文化に寛容な姿勢を示しながら穏やかなイスラム社会が続いていくのだろうと思う。そんなトルコの多元世界の象徴であるイスタンブールに訪ねてみたい。2020年の五輪はとりあえず東京で開催してもらい、次回はイスタンブールというのが理想だが。