今香港が行政長官の選挙を巡って大揺れである。次の長官は住民の直接選挙になるといっても立候補できるのは中国政府が指名した人物だけだ。香港の民主派勢力は立候補できず、香港住民が望むような民主的な選挙とはなりえない。この決定に怒って学生を中心とする若い世代が抗議デモを繰り広げている。
一方年配者は、ともかく直接選挙ができることでこの決定を是認する傾向があり、世代間で微妙な意識のずれがあるようだ。ただ、若者のデモに対して警察側が催涙ガスで排除する強硬策を取ったために、当局への不信が高まってここへきてデモ参加者も多様化しつつある。そして10万人規模へと次第に増加しているようだ。
香港政府もこのデモの対応に苦労しているようだが、本土の中国政府も相当神経質になっている。形骸化しつつあるとはいっても「一国二制度」の基本原則は維持せずにはいられない。だから、香港に人民軍が駐留しているとはいっても、25年前の天安門のような強硬策は当面とれそうもない。
おそらく、デモが自然に鎮静化するのをしばらく見守るものと思われるが、問題はこのデモが今後どう展開するかだ。今年4月台湾で勃発した学生デモのように広く国民の支持を得られるかが肝心だ。もし香港全体を巻き込む運動に進展するのなら、これは香港のみならず中国の政体を大きく揺さぶるものになる。
ところで、話は横道に逸れるが日本人が香港といって思い浮かぶ人物の一人にアグネス・チャンがいる。かつて彼女は香港の中国返還以前に、結婚して生まれた子どもには国籍を日本、そして英国、留学先のカナダのうちから選ばせると語っていたことがある。その時、中国籍という選択肢がないのを不思議に思っていた。
もしかして彼女は心の底から中国政府を嫌っていたのかと思っていた。しかし、2年前のテレビ番組での発言には仰天してしまった。番組のスタジオも騒然としていた。
「中国は反日教育(=愛国心教育)はしてないんです。あのね、反日教育はしてない。歴史を教えてるだけです」「中国が教えてる歴史も韓国が教えてる歴史も、アメリカで私が学んだ中国とアジアの歴史も一緒なんです。日本の歴史だけが違うんです」
なんと彼女は習近平国家主席が泣いて喜ぶガチガチの親中派になっているのだ。というより、朝日新聞ばりの反日派というべきか。日本に40年以上住んで日本で確たる財産=生活基盤を築いていても所詮中国人の血の方が優先されるのかと愕然とした。ウィキペディアによれば、彼女は「中国に対してウイグル、チベットに関する政策を含め、一切批判的な言説を公開していない」という。
おそらく、今後進展も予想される香港デモに対しても彼女は冷淡であろうと思われる。中国ではあの天安門事件について学校の授業で教えないという。アグネスにとっても「中国の教える歴史」にない以上、あの民衆大弾圧は記憶の彼方にいってしまっているだろう。