粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

小池都政への疑問

2017-02-27 20:51:46 | 国内政治

小池百合子東京都知事が昨年8月に就任して以来、期待は裏切られるばかりだ。特に豊洲移転問題については、多くの建築・土木などの専門家から移転は問題無しという評価がなされている。しかし、移転を延期してしまったことに疑念を抱かざるをえない。

豊洲移転で特に問題視されているのが、当初予定の盛り土が行われなかったことだ。しかし、建物の下に盛り土がなく、地下ピットと呼ばれる空間があることで、地下水が地上に出ることなく遮断される。したがって、たとえ地下水に有害物が含まれていても決して飲料や食品の洗浄などに使われることもない。汚染水も地下室で浄化装置で物質ごとに除去されるのだからどこが問題なのか。

豊洲の土壌に関しては、宇佐美典也氏がブログでその安全性を明快に説明している。つまり、豊洲での環境基準は、摂取の基準である「土壌溶出基準」(70年間人が1日2ℓその土地の地下水を摂取し続けること」による健康への影響)ではなく、「土壌溶出量基準」を適用すべきとしている。これは「70年間その土地の上に人が住み続けること」を前提に「土が舞って口に入る」ことを問題にしている。したがって今回地下水の検査で特に問題になったベンゼンはその基準の対象にさえなっていないほど基準が緩い。

むしろ、盛り土を実施しないで地下ピットにしたことが結果的に正解だったと思う。いやそもそも盛り土そのものが本当に移転事業で最終決定事項だったかも疑わしいという指摘があるくらいだ。

 

宇佐美氏はブログで最後に豊洲問題の現状を非常に嘆いている。

そんなわけで”豊洲市場の安全は既に証明されており移転になんの問題もない”のですから、なるべく速やかに老朽化した築地から移転すべきでしょう。これに異論を唱える政治家や評論家は全て、何らかの政治的意図を持っていると言っても過言ではありません。ただこの問題は科学や法律を超えてすでに政争化しており、こうした当たり前のことがまかり通らないのは大変残念なことです。

 

確かに、これまでの小池都政を見てみると、「政治的意図」「政争化」といった人間の世俗的な事情が政治の世界で優先されている印象が拭えない。そして、その中心で率先してこれを演出しているのが他ならぬ小池都知事であるといってよい。

小池知事は、選挙では都議会で多数政党の自民党から公認を得られず、彼らを敵に回して当選した。選挙の公約の一つが都議会解散という普通到底ありないものだった。それほど自民党への敵対心は相当なものだったが、この反自民が政策の優先課題になってしまった。つまり、議会の自民党勢力を叩いて都知事としても存在を誇示することに政治の情熱が注がれた。

いわゆる「小池劇場」の実態もこうした知事個人の意図が反映している。そして、この劇場で格好の攻撃課題となったのがもちろん豊洲移転問題だ。当初の標的は都議会自民党のドンとされる内田茂幹事長だったが、今や都幹部の頂点だった石原慎太郎元都知事に取って代わった。

「厚化粧の年増女」…石原さんんも言葉が過ぎた。せめて「厚化粧だが、情にも厚い豊島区のおばさん」くらいにとどめておくべきだった。過去の悪しき都政を叩くために「私怨」というバネが加わってしまった。

ともかく、現在の小池都政は問題が山積するのにこれまでの都政を糾弾することに執心しているように思える。結果的に、「過去」を追求するあまり、「現在」「未来」の取り組みが軽視されている印象が強い。

たとえば、豊洲移転を延期することで関係業者に†対して何十億いや何百億もの損害賠償が発生する。さらに築地から移転できないことで選手村がある晴海と都心や競技場を結ぶ環状2号線の工事が進められない。その結果、五輪の開催に間に合わない恐れがある。

しかし、こうした都政の現状にメディアのほとんどが疑念を示さないのはなぜか。むしろ小池劇場の活況にエールを送っている。おそらく、メディア特にリベラル左翼は小池知事の反自民の姿勢がいずれ中枢の安倍政権に向かうことを期待しているのではないか。国民の6割前後の支持を得ていて磐石な安倍政権に対抗できるのは、これまた都民に80%以上の支持率を誇っている小池知事しかいない、と。

小池知事はメディアのそんな期待を意識してか、すでに新党結成に余念がない。7月の都議選には自党で過半数の議席を目指している。そして選挙の争点に豊洲移転問題を前面に出す方針を露わにしている。しかし、これは決して政策ではない。「政局」があるばかりだ。都民はそれによる「政争」も望んでいないはずだ。


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