粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

張本勲の「暴言」

2015-04-13 21:31:22 | スポーツ

スポーツ解説者、張本勲氏の発言がネット上で非難囂々だ。12日のTBSテレビ「サンデーモーニング」でサッカーの三浦知良選手が最年長ゴールを更新したことを報じた。これにに対して張本氏がなんと三浦選手にずばり「引退勧告」を直言したからだ。

「カズファンには悪いけど、もうお辞めなさい」「スポーツマンとして、もう魅力もない」「野球で言えば(J2は)2軍だから、2軍で頑張ってもそんなに話題性もない」「若い選手に席を譲らないと。団体競技だから伸び盛りの若い選手が出られない。だから、もうお辞めなさい」「彼はあれほどの選手だから、(今後は)指導者としてね」「(現役に)しがみつく必要はない」

当然ながらカズあるいはサッカーを愛するファンから激しい非難がネットを中心にわき上がっている。

*「サッカーの『サ』の字も知らないアンタが言う資格はない、一生懸命頑張って結果残しているカズをけなすな」

*「張本よ三浦氏に陳謝すべき、 三浦氏は自分の信念でサッカーを行っている。張本はどの様な気持ちで言ったか判らんが、三浦氏は日本にサッカーを広めた英雄だ。

*張本勲氏はカズさんのゴールが海外でも大きな話題になったの知らないの? 大体、J2が二軍だなんてとんでもない勘違い。 今回の発言は、カズさんだけでなくJリーグでプレーする全ての選手に対する侮辱と言っても過言ではない。 若手に席を譲るべきなのは張本氏の方。

*張さんも三浦カズに辞め云うなら、中日の山本昌はどないする?…

 

自分自身、日頃この番組で張本氏が発言する内容にあまり同調できないところが多い。どこかスポーツを精神論で語る傾向が強いからだ。また今回についていえば、確かに張本氏は、J2をまるで野球の2軍のように扱っているのは大きな事実誤認だ。

しかし、それでもなぜか今回の張本氏の「暴言」に頷く自分がいる。意外と正論を吐いているのではないか、と。張本批判のなかに「中日の山本昌はどうする?」のがある。山本昌投手は三浦選手よりも1歳上の49歳。カズが48歳1月のゴールなのに対して山本は48歳4ヶ月の日本プロ野球勝利だ。わずか3ヶ月の違いだが、その意味は大分違いがあると思う。

サッカーと野球とも同じ団体競技ではあるが、野球の投手の勝利が当人の力量が大きいウエイトを占めているのに対して、サッカーのゴールはチームメートのサポートなどが大きく影響している。試合の状況にもよるが80%対10%ほどの開きがあるように思える。サッカーのゴールの際に味方の動きとともに相手チームのディフェンスやキーパーの防御の度合いが問題になる。仲間のアシストがどれだけ効果的かも重要だが、敵の対応が手薄ならば、簡単にゴールができる。

確かにマラドーナのように、自分たちのゴール付近から一人ボールを保持したまま敵の妨害をかわしながら相手方のゴールに攻め込んだことはあった。しかし、天才によって引き起こされた「奇跡」であって、普通のプロの試合ではあり得ない話である。一方、野球の投手の勝利は個人の力量が充実していれば十分可能だ。つまり野球の投手というのは団体戦とはいいながら、個スポーツの性格を十分兼ねているいえる。

個人スポーツならば、他人から年齢のことをとやかく言われても他の選手よりも成績が上であるとか、相手に勝つという結果であれば、選手生活を続ける資格はある。しかし、団体スポーツの場合は嘗ての名選手であって年齢的のわりに元気でもそれだけでは勤まらない。確かに三浦知良選手は2005年の秋にJ2の横浜FCに入団して目覚ましい活躍を見せて2年後チームをJ1に昇格させた。しかし、それもわずか1年で再びJ2に降格してその後チームは低迷している。

チームにとってはもちろんトップリーグのJ1に定着してサポーターの期待に応えることが至上命題のはずだ。カズの最年長ゴールもサポーターを喜ばせるだろうが、そちらだけが話題として先行するならば本末転倒といわざるを得ない。メディアが三浦選手のプレイだけを注目するようではチームの他の選手は正直と惑ってしまうのではないか。「カズさんがゴールするためにボールをうまく回す」ことに他の選手が気を使うとしたらチームとして最悪である。「試合に勝つ」という本来の目的が疎かにならないか。

三浦選手がいくら頑張っても往年の勢いでゴールに攻め込むのはもはや難しい。10年前の横浜FC入団当時の得点力は既になく48歳の年齢の衰えは如何ともしがたい。「自分の信念でサッカーを行っている」(ファンの声)のは普通はすばらしいことかもしれないが、それが空回りしてチームが低迷するとしたらその代償は侮りがたいといわざるを得ない。


リュージュ五輪選手と女性ハイヤー運転手

2014-12-08 15:25:22 | スポーツ

昨日のブログで冬季五輪のことを話題にしたが、自分自身以前女性冬季五輪選手と2日間を共にしたことがある。といっても艶のある話ではない。かつてリュージュ競技の五輪代表選手だった女性が選手引退後北海道でハイヤー運転手をしていて、自分が旅行中に彼女のハイヤーに乗って観光旅行をしたというものだ。

小清水仁美さん、1984年サラエボ、1988年カルガリーの冬季五輪で代表選手として出場した輝かしい経歴をもつ。成績は84年18位88年21位と振るわなかったが、2人の日本女子選手の一人であること自体すごいことだ。出身地の北海道恵庭市の名誉市民の第1号にもなっている。

小清水さんの実家は父親が北海道観光のハイヤー業を営んでいて選手引退後彼女自身実家の仕事を手伝うようになったようだ。彼女のハイヤーに乗ったのはおよそ20年前の函館でちょうど前のお客の案内が終わり、一休みで駐車していた。こちらは年配の男性と二人これから函館をぶらぶら回ろうとする矢先であった。

目の前に止まっているハイヤーに観光案内してもらおうと思い外から声をかけたらなんと30代前半の若い女性、それもなかなかのスレンダー美人だったのでとても驚いた。会社は恵庭にあるがそこは北海道観光案内が仕事だから、「函館の面白いところ」というリクエストにも手慣れたものだった。

車内の会話も観光だけでなく、珍しい女性運転手の身の上話にも当然及ぶ。そこで彼女が冬季五輪の代表選手であることが明かされた。途中彼女から写真付き名刺が渡されその経歴も記されていた。ただし、そり競技のリュージュなど一般日本人には馴染みが薄く、当然我々二人も彼女の名前など初めて知った。

いくら五輪選手とはいっても実態は練習環境は厳しく活動資金などでとても優遇されているとはいえない。結局、親からの援助で選手生活がやっと維持できる厳しさである。

「親に二回もオリンピックに出してもらって迷惑を掛け放し。だから親孝行のつもりで家の稼業を手伝うことになった」と淡々と経緯を語っていた。一見華やかに見える五輪選手でもその栄光に見合う待遇を得られるのは一握りの選手であることを実感した。

同行の相手が後で彼女の歯並びが悪いことをいっていたが、おそらくこれはリュージュという競技の過酷さを物語っているのだろう。時速120キロにも及ぶ猛烈な速さのなか、そりと座席だけの簡単な装備で滑り落ちる。そのバランスをとるための緊張感から当然歯を食いしばるのに想像以上の力がはいる。歯並びの悪くなるのは致し方ない。それはリュージュ選手の勲章といってよいかもしれない。

あれから、20年小清水さんはどんな人生を送っているだろうか。ネットで検索すると今も彼女の会社は盛業中のようだ。代表者は同姓だから、父親か兄弟だろう。もし、今も家族とともに依然としてハイヤーの運転手をしているのなら、北海道の観光案内に彼女を指名したいと思う。

20年前の別れ際、彼女の方から「お気をつけて」といって握手してきた。いかにも元アスリートらしい明るくさわやかな笑顔だった。少し力の入った腕とともに、今もその笑顔が脳裏に強く焼きついている。


一発屋の人生

2014-09-27 15:15:08 | スポーツ

あのドカベンが亡くなったという。香川伸行、52歳。浪商の捕手として甲子園でも大活躍したが、特に彼の華々しさで忘れられないのは、プロに入団していきなり初打席で場外へホームランをかっ飛ばしたことだ。

世間で注目され人気者の彼が期待どおり、いや期待以上のデビューを果たした。だから、彼の野球人生は底知れぬ可能性に満ちていたように思われた。しかし、竜頭蛇尾というのだろうか、デビュー年は3割をキープしたもの規定打席に達せず失速著しかった。さらに翌年以降も成績はぱっとせず、いつしか彼のことがプロ野球の話題になることがなくなっていった。

むしろ私生活でスッチーだった夫人と直ぐに離婚したことが、吉本の女性漫才のネタになるくらいで、遂には10年も立たないうちに現役生活にピリオドを打つ。その後ローカルのラジオ番組で野球解説をしているのを聞いたことがあるが、30歳にもならないOBが老練の超ベテラン監督の采配を批評する姿は痛々しく感じた記憶がある。

報道では死因は心臓発作のようだが、あのドカベンの風体そのままのスッシリした肥満体が災いしたのかもしれない。香川といえば、いつまでも高校球児時代の人懐っこく愛らしい顔しか思い出せない。現役引退してもタレントで活躍する道もあったが、それも活かせず残念である。合掌。

それにしても人気の高校球児がプロデビュー戦でとてつもなく華やかな成績を飾ったものの、意外とその後の野球人生はぱっとしないことはよくある。たとえば1973年の甲子園で優勝した銚子商業の土屋征勝投手だが、その年ドラフトで中日に入団した。翌年のデビュー戦であの全盛時代の王貞治選手と初対決したが、なんと3球3振で世界の王を打ち取った。

当時王さんにとっては新人との対決に惨敗したことが相当ショックだったという。一方土屋選手にとってはしてやったりでそれこそ今でいう「ドヤ顔」であった。ただその後の成績はパッとせず、1軍と2軍を行ったり来たりで12年後に引退。通算では8章22敗というプロとしては不本意な成績であった。

同じ中日の選手で甲子園でも活躍した近藤真一選手は、1987年のプロ初登板で巨人を相手にノーヒットノーランを達成した。初登板での達成はプロ野球史上初という偉業であった。その年4勝をあげ、翌年8勝と順調に進むかに見えたが、その後肩や肘に故障に悩まされ結局7年で現役を終了した。通算成績12勝17敗、つまり3年目以降は勝ち星を挙げていないのだ。

以上華々しいデビュー戦を飾りながら、その後はかばかしくない成績で終わった野球人を挙げてみた。もちろんデビューもよくてその後も大活躍した選手も多くいるだろう。しかし、野球をそれほど詳しくなく素人同然の自分がこんな鮮やかに先の3人を記憶に留めているのも確かだ。つまり彼らの野球人生は瞬間であっても輝き、そのまばゆさが人に脳裏に今も焼き付いているのだ。

スポーツ以外でもたとえば歌手でもデビュー曲が大ヒットしたが、その後鳴かず飛ばずという人はたくさんいる。しかし、その一曲がリアルで聞いた人々ばかりでなく、後世も歌い継がれていくことも少なくない。だから一発屋でもいい。一瞬の輝きだからいつまでもその余韻は尾を引くのだ。肩書きに「あの○○の△△さん」という枕詞がしっかりついている。枕詞はいつしか勲章になる。


松山英樹のライバル

2014-06-03 13:39:19 | スポーツ

プロゴルファーの松山英樹が米ツアーで初優勝した。日本人では最年少22歳での優勝、プロになってわずか2年目での快進撃だ。

その陰で同じ22歳の石川遼はこの試合で47位、最終ホールはダブルボギで終わった。松山が最終でバーディーを決めプレーオフで勝利をもぎ取ったのとは対照的だ。もはやライバルというのもおこがましいくらいに差がついてしまった。

わずかに石川がリードしているのはテレビCMの露湿度だけか。それもあの英会話では英語の習熟よりゴルフの上達の方が先だと陰口を叩かれそうだ。

温室育ちの石川と雑草育ちの松山というイメージが余計ついていしまう。石川の場合3日目まで好調でも最終日に大きく崩れるパターンが多い。それに引き換え松山は終盤で追い上げてまさに勝利を切り開くようなパワーがみなぎってる。

以前、自分のブログで「石川遼君失速の原因」なる記事を不躾ながらも書いた。失速は既に3年前から始まり残念ながら今だ浮上の気配がみえない。同県人(埼玉)なので今後も叱咤激励をしたい。余計な優等生ぶりなどかなぐり捨てて頑張って欲しいと思う。

それはともかく、飛ぶ鳥を落とす勢いの松山だが、現在ライバルは誰になるだろうか。自分が考えるにゴルファーというより別のアスリートを思い浮かべる。松山より2才上のテニスプレイヤー錦織圭だ。既に世界ランクでもトップ10に入ってこれから一層磨きがかかる存在だ。

松山と錦織に寄せる期待はいうまでもなく「メジャータイトル」制覇である。ゴルフでいえば、マスターズ、全米オープン、全英オープン、全米プロでの初勝利。テニスでいえば全英、全米、全仏、全豪オープンの初優勝だ。どれもいまだ日本人が獲得していない悲願のタイトルだ。

松山と錦織、どちらが先に手にするか。二人とも年内に勝ち取ることも決して夢でなくなった。できれば両者が今年中に獲得して欲しい。そうすれば日本のプロスポーツにおいて今年は画期的な年になると思う。今月始まるワールドカップともに期待が大きく膨らむ。


浅田真央がキム・ヨナに最後は勝利

2014-02-23 10:55:36 | スポーツ

これは負け惜しみであるが、ある面正しいと思える。すなわちソチでの試合の後で、二人に対する報道では明らかに浅田真央がキム・ヨナに比べて輝かしいヒロインになっているからだ。

真央ちゃんに対しては、世界のフィギュアの現役、OBを問わず圧倒的な絶賛の嵐。キム・ヨナ、ミッシェル・クワン、プルシェンコ…。そして世界中のファンからも感動したという熱い声、それは敵国?の中国のネットからも例外でない。

一方キム・ヨナといえば、韓国民が採点を不服として署名活動をする騒ぎになっている。この国お得意の「ロビー活動」がスポーツの世界でも通用すると思っている。気持ちは分からないでもないが、これを世界はどう見ているかだ。

きっとキム・ヨナ自身はこんな「贔屓の引き倒し」に心を悩ましていることだろう。表彰台に立ったキム・ヨナは銀であっても充分な演技を成し遂げたという満足感に溢れていた。なぜそんな彼女に賛辞を送らないのか、どこか気の毒にさえ思えてくる。

というわけでこの大会で試合の結果とは別に印象面で二人のライバルは明暗を分けたと言える。真央ちゃんがエキシビションでみせた満面の笑顔がそれを物語っている。改めて真央ちゃんのこれまでの功績に大感謝だ。