テログループイスラム国による日本人人質事件は、ヨルダンの空軍パイロットの処遇も絡んでこう着状態が続いている。日本のマスコミには、テロ側の戦術に日本やヨルダンが翻弄されているといった報道が多いが必ずしもそうとはいえないようだ。
よく指摘されていることだが、テログループの闇資金源といわれる占領地域の石油資源が原油価格の急落で大幅減収に追い込まれ、経済的にかなり厳しい環境にある。また有志連合の空爆で軍事的にも劣勢にたたされていれ、最近要衝地がクルド人に奪還されたという。
こうした状況で、テログループを形成しているイラクアルカイダ、フセイン政権残党、外国人グループなどの間で亀裂が生じているといわれる。最近のテログループからは今回の事件で以前のような明確なメッセージが示されず、情報によると事件を巡り内紛状態にあるともいう。
日本の一部のマスコミが安倍首相がテロに厳しい態度を示したことが事件を誘発したと批判している。そういう側面が全くないとはいえないが、いつまでも日本が曖昧な態度を取り続けるわけにはいられない。それを考えると安倍首相の姿勢は特別批判される性格ではないと思う。実際イスラム国は日本の本気で身代金を最初から工作していたようで、安倍首相の厳しい態度で方針を修正したともいわれる。
ともかく、イスラム国は弱体化は明確であり、日本そして世界はそれを一層進める対策を講ずるべきであろう。具体的にはイスラム国の経済力と軍事力を削ぐことに全力を尽くすことが肝心である。その点で、イスラム国を今後も厳しい態度を取り続ける選択肢しかない。
イスラム国をイスラム教と関連づけることは適当ではない。あくまでもテロ集団として峻別するべきだ。そうすることで、イスラム国が孤立して崩壊していくのは時間の問題だと思う。しかし、それで中東が安定化するとはいえない。イスラムの分派特に過激派が新たなテログループをつくって新たな緊張をつくり出すことが考えられる。
思うに中東は強力な軍事政権でなければ、押さえきれないような感じがする。これまでの中東の軍事政権をみると、一番原理主義勢力に敵対的でむしろイスラムの世俗化を推進してきた。そして国民に対して経済的な公平を担保すれば社会も安定する。国政の民主化はその後になるのは致し方ない。
中東でそれが最も成功した国はトルコであろう。トルコは第一次大戦後に軍事政権主導で政経分離を徹底させ近代化を推進した。結果的に民主化が深化していった歴史が一つの見本になるのではないか。