粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

福島は「アンダーコントロール」

2016-12-05 22:38:17 | 福島への思い

毎日新聞にしては珍しく「まともな」記事だった。
「福島沖は今 魚の調査続く 線量は低下傾向続く」 
 原発事故後の福島沖へ自主的に船を出し、魚の放射性セシウム濃度を測定する市民組織「いわき海洋調べ隊 うみラボ」が精力的に活動を続けている。最近ではヒラメなどの底魚でも一般食品中の国の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を上回る例はなく、県の調査でもほとんど検出されていない。…
記事には全長90cmもある大きなヒラメを釣り上げて笑みを見せる若い女性の画像が添えらえている。この女性、記事にある「うみラボ」という民間で自主的に福島沖の魚の放射線量を測定している組織の取り組みにプライベートで参加したようだ。彼女がヒラメを釣ったのは福島原発からわずか2km沖だという。そしてこのヒラメの放射線量は14.6ベクレル(1kg当たり)だった。
もちろん、食品基準の100ベクレルを下回って食べて問題ないレルベルだ。しかもこのヒラメ、年齢では12歳ぐらいの高齢の成魚で、放射性物質が影響が残りやすい部類だという。事実、「うみラボ」の代表者は当初「数十ベクレル」程度を予想していたようだ。
記事では福島のヒラメについて、集荷の現状をこうも解説している。
地元漁協は福島第1原発の半径20キロを除く海域で試験操業を実施しているが、県によると、15年4月以降に取れた魚で国の基準値を上回った例はなく、ヒラメも含めほとんど検出されていない。
これを踏まえ国は今年6月にヒラメの出荷制限を解除。9月には試験操業の対象種に加えられた。
出荷制限解除とはいっても、原発から20km以上の沖に制限されている。しかし、このヒラメは近海というより「沿岸」の2Kmで基準値をはるかに下回っていた。これは福島の海で放射線量の低下が進んでいることを示している。
福島では常磐ヒラメ」として人気のヒラメを始め「44種類の魚介類について出荷制限を指示、現在はイシガレイやクロダイなど15種類まで減少している」という。残りの15種類も早く解除され日本の食卓に新鮮で美味しい福島の魚が上ることを大いに期待したい。
安倍首相が東京五輪誘致の際に「福島は完全にコントロールされている」と主に原発の汚染水を念頭に現状での福島の安全性を強調した。しかし、反原発の言論人たちが猛烈に反発し、五輪招致に今も冷淡な態度を見せている。いわゆる「アンダーコントロール」発言への激しい嫌悪感である。
確かに原発事故で今も汚染水対策には手を焼いている。しかし、汚染水が福島の環境特に海洋を汚染しているかといえばさにあらずだ。微量の放射性物質が排水口から海側に漏れているかもしれない。しかし、それは防潮堤の内海に留まっていて外界への影響はないといってよい。つまり福島の環境に影響はない。これこそ「アンダーコントロール」そのものではないか。その証明のサンプルが2km沖の高齢ヒラメといえるだろう。
未だに反原発を標榜する一部左翼マスコミが原発の影響を過剰に煽って福島が危険だという印象操作を続けている。テレビ朝日の「報道ステーション」による「甲状腺がん」特集などその最たるものだ。そこにあるのは「原発は危険でなくてはならない、だから福島は安全であってはならない」という底意地の悪い?考え方だ。
毎日新聞もその傾向はあるが、今回の記事は読んで納得してホッとさせられる。これは毎日のウェブ記事で読んだのだが、面白い関連記事があった。「福島第1原発・正門周辺 4日正午現在」として「4日正午現在 0.575マイクロシーベルト毎時 数値は東京電力の計測結果から 前日は0.572マイクロシーベルト毎時」とある
現在も「正門前」の放射線量を毎日紹介しているのだ。「0.575マイクロシーベルト」なら年間で5.037ミリシーベルトになる。「正門周辺」というのが正門からどのくらいかわからないが、おそらく正門まで歩ける近距離であろう。除染はされているとはしても極めて低い線量だ。世界では年間5ミリシーベルトを超える場所も少なからずあるが、そうした場所で健康被害があったという話を聞かない。福島でも避難が解除された地域ばかりでなくそれ以外の避難区域でも「アンダーコントロール」が着実に進んでいるということだろう。


こんな看板早く撤去を!

2015-06-08 19:48:22 | 福島への思い

「原子力明るい未来のエネルギー」、福島県双葉町に残った看板の撤去を決めた地元町議会に対して、この標語を考えた町民がこれに反対し、「永久保存」を求める6502人の署名を提出した。この町民は39歳の男性で現在茨城県の古河市に避難しているようだが、「歴史的価値がある看板を原発遺構として残し、町の未来を考えるきっかけに」と署名を呼びかけたという。(東京新聞本日記事)

どうも男性の心境がよくわからない。普通なら、この標語をつくったことで、事故を起こした東電や推進した政府の片棒を担いでしまったという忸怩たる思いがあるはずだ。一刻も早く撤去して欲しいと望むはずなのに、「歴史的価値」があるなどと固執するのは全く腑に落ちない。

おそらく、ご本人は井戸川双葉前町長のような反原発色の強い人物でないかと想像される。「鼻血」が出て「福島は住めない」とでもいいたいほどに、原発はとんでもない凶器だと思っているのかもしれない。しかし、事故以前は前町長同様、原発を推進し東電城下町に住んでその恩恵を受けていたはずだ。そして避難には同情するが、その補償は十分受けていることは、容易に想像される。だから東電などへの思いはもっと複雑であるはずだ。

双葉町議会が看板の撤去を決定したことは理解できる。いつまでも事故の忌まわしい記憶から脱却して、新しい双葉をスタートさせようとすしているのに、こうした看板は厄介な刺でしかない。

確かに双葉町は原発の廃炉作業や中間貯蔵施設の操業で今後とも原発の地元として何十年も継続していかなければならない。しかし、双葉町同様に原発立地自治体の大熊町では、これらを町の基幹産業として再生を目指す雄々しさをみせている。

双葉町もそんな逞しさが求められるのではないか。それを、看板を歴史的価値」などと考えるのはいかにも過去を引きずっているようで感心しない。こんな看板、反原発デモのプラカードとは違った意味で、自分には空々しく感じる。

 

原発事故避難民補償金漬けの日々「その後」

2015-03-14 19:35:58 | 福島への思い

去年7月に自分のブログに当時の週刊新潮の記事を取り上げたら、予想外の反響があった。福島第一原発事故で避難を余儀なくされた地域住民が、実は多額の補償金を得たことで逆にその派手な散財ぶりが週刊誌で問題にされたのだ。結果的に福島県の避難先の地元民と軋轢を起こしているという内容だった。

そして、週刊新潮が今年震災4年の現在、再びこの問題に追及している。1億5000万円貰った世帯もごろごろ、「原発補償金」ジャブジャブの日常的荒廃、という過激なタイトルになっている。内容自体は前回の記事を補強している感じで特別新味はないが、記事の冒頭からいわき市内のソープランドでの話から始まるなど避難民の豪遊ぶり(極端だと思うが)が露骨に書かれている。

いわき市内の仮設住宅に住む20代前半の男が2日連続でソープに通い、両日とも9時間店に居座り女の子とっかえひっかえして遊んだ。2日で30万円以上の支払い。普通なら上客だろうが、その無茶ぶりにソープ嬢からブーイングがおこって出入り禁止になったほどだ。男は事故の補償金で手にした600万円を風俗で遊ぶことを店の子に豪語していたという。また別の60代の男は結婚相手を捜すため毎回長時間通いつめて最終的にソープ譲の伴侶を射止めたという。

昨年の記事でも、避難先のいわき市内の住宅を避難民が買いあさってこれが住宅バブルを引きこしているとの記述があったが、今回はもっと具体的に書かれている。市内の新興住宅地では地価が高騰し震災前は坪14万円程度だったものが、現在は20万円以上になり、場所によっては32万円にもなる。こうした分譲地の新築を避難民が競って購入しかも大半がキャッシュだという。あるいは来年竣工予定の分譲マンション125戸が既に完売したが、その半数は避難民の購入ということだ。こうした住宅バブルは、地元住民に価格高騰と物件不足を及ぼすだけで迷惑この上ない話だ。

ところで、今回の記事では避難民に支給される補償金の内訳と金額が具体的に示されているのも特徴だ。それは主に4種類に分別される。

1、避難対象区域に事故当時住民票があった人々全てに2011年3月から避難民1人につき、精神的損害賠償として月0万円の慰謝料が支給される。

2、震災前の給与と現在の収入を比べ、減額分を補給する補償だ。したがって現在収入がなければ、震災前の給料全額が支給されることになる。現状は仕事を探さず無職でいる人間が少ないなくないという。就労不能損害賠償ともいわれるるものだ。

3、避難対象区域での家財道具や土地や家屋への損害賠償金が支払われる。また避難先で新たに住宅(持家)を購入した人にはそれにかかった費用の一部(補償金では足りない部分)を補填する。

4、現在来帰宅困難区域になっている地域と双葉町と大熊町の移住を余儀なくされた避難民に対する慰謝料だ。事故当初は750万円が支給されたが、新たに700万円が増額されこれらは一括で支払われる。またこれらの地域に隣接する二つの区域(避難指示解除準備区域、居住制限区域)でもそれに準ずる賠償が施されている。

記事のタイトルになった「1億5000万円も貰った世帯」というのは、これらの補償を4人世帯の家族が最大で支給された際の金額であるが、週刊新潮によればこの金額に近い世帯は400から500にも上るという。彼らは税金や医療が免除され、住居の保護がされている。こうした人々の一部が前述の「ソープ豪遊」など派手な散財となって避難先の地元民の顰蹙を買っているといえる。あるいは住宅バブルでの元凶ともなっている。

たた、ここへ来て補償金の支払いに歯止めをかける動きが出てきている。2の就労不能損害賠償の支給がこの2月で打ち切られるという。3ヶ月ごとの就労に対してその翌月に東電から請求の書類が届き申請するわけだが、3月以降はそれがない。しかし、会社の負い目のためか、東電は打ち切りを避難民に周知徹底していないようだ。したがって今後の支給を当てにしていた人々に混乱が起こりかねないとして新潮は「6月危機」を指摘している。

水が低い方に流れ落ちるように、一度仕事もせず贅沢を経験すると人はなかなか元の生活に戻れない。避難のっ苦渋生活を解消し、事故以前の日常を取り戻すための補償であったのに現状はどうか。6月危機となって、これまであまりマスコミで問題にされていなかった補償金の影の部分が表面化するかもしれない。

記事の最後はこの週刊誌特有の皮肉で結ばれている。

避難民の生活を立て直すために原発補償金が、郷里で再建を目指す被災者の自立を逆に妨げるケースを生んでいるとすればこれほど滑稽なことはない。今後も続く補償のあり方を、根本的に見つめ直す時期が来ているといえよう。

左派系のメディアは相も変わらず、仮設住宅での苦しい生活や放射能の被曝の不安に悩む地域住民の声ばかりを取り上げている。確かにそうした被害者としての避難民への視点も当然だし、それ相応の補償も必要だ。ただ、それだけで原発問題は解決しないし、福島の復興もあり得ないと思う。まして、原発再稼働に反対するためにプロパガンダの材料に使うなどもってのほかだ。

もちろん、多くの避難民は批判されるような散財とはかけ離れた慎ましい生活を送っていることだろう。ただ、補償金支給の不備が一部の放蕩を生み世間の誤解を与える土壌をつくっていることは確かだと思う。震災4年を機会に新潮が指摘するように「根本的に見直す」べきだろう。

新潮記事1ページ

新潮記事2ページ

新潮記事3ページ

新潮記事4ページ

 


大熊町の挑戦

2015-03-11 20:26:48 | 福島への思い

本日、東京ニッポン放送の報道番組「ザ・ボイス」で飯田浩司キャスターが最近大熊町を取材した様子を伝えていた。番組で、ある町民が復興計画を語っていたが、とても興味深く期待を抱かせる内容だった。

福島県大熊町といえば、北部で福島第一原発が隣町の双葉町とまたがっていて、まさに原発の地元の町だ。当然、町民は皆避難を余儀され住民の帰還はまだ見通が立たない。

ただ、原発の作業員は7000人が常時作業に従事していて、決して町がゴーストタウンというわけではない。最近、大熊町内に中間貯蔵施設を建設することを町と県、政府とも合意してそれに向けて本格的に動き出した。そうなれば、この作業にも新たに雇用が生まれる。

現在町内の除染作業が比較的線量が低い町の西部(町の中枢部にあたる)で急ピッチで行われている。これが進行していけば、住民や作業関係者(現在大熊町以遠から原発に通っている)の居住も可能になる。西部地区が避難指示解除準備区域であり、町民には町の復興の拠点にしようという動きがみられる。

番組で登場した町民は今後の町の復興を熱くではあるが、非常に現実的に語っていた。原発廃炉作業と中間貯蔵施設での収集・処分作業を町の産業の中枢として積極的に捉えて、それを中心に関連企業を呼び込み町の産業を活性化しようというものだ。すでに除染が終わった大河原地区の場所には給食センターが完成し、原発内へ作業員3000人分のためにこの4月から届けられるという。

これまでは遠いいわき市の給食センターからだったから、町内ならば供給はスムーズになる。センターで働く人員には町民が多くいて住民の雇用につながっている。また原発作業員や今後始動する中間貯蔵施設作業員が居住する住宅の建設も進んでいる。そうなれば町に住民が定着し町自体が活性化する。

番組のスタッフが除染が進む大河原地区で線量を計ったらなんと毎時0.1マイクロシーベルト程度だったという。原発から5キロ以内の場所と思えないほどの低線量である。住民の早期帰還の期待がますます広がる。

原発の廃炉作業にしても、中間貯蔵施設の作業にしても30年単位の長期のものになる。皮肉な話だが、これが逆に長期の雇用につながるわけだ。二つの事業に付随する種々の産業も同様だ。今後、原子力関連の新しいテクノロジーの産業が生まれるかもしれない。

中心の二つの事業は原発事故の負の遺産としてマイナスイメージと見られがちだが、ここは逆転の発想だ。原発直下の町として避難による補償も必要だが、大熊町民の力強くしたたかな取り組みには大いに注目したい。

 

来年のサミットは福島で

2015-02-25 16:44:54 | 福島への思い

相変わらず、反原発の左翼新聞が福島第一原発の危険」を煽っている。

「汚染水、外洋にに垂れ流し 1年前に把握、放置 福島第一原発」

東京電力が、福島第一原発の排水溝から高濃度の放射性物質を含む水が外洋に漏れ続けるのを放置していたことが二十四日、分かった。外洋への継続的な漏出を昨年四月に把握しながら公表せず、排水溝を専用港内に付け替えるなどの対策も取っていなかった。(東京新聞2月25日)

1~4号機の山側を流れる排水溝の水は、外洋に流れにくい専用港にではなく、外洋に直接出るようになている。その出口では「比較的高い」濃度の汚染水が検出されている。外洋の出口付近で最大でセシウムが1リッ、トル辺り1010ベクレル、ストロンチウムが1050ベクレルだったという。ただ、それを記録したのが昨年8月、2号機建屋の屋根から流れる汚染水が原因のようだ。

どうも今頃になって昨年8月のデータが公開されるのがよくわからない。しかも、これは雨天時の最大値で晴天時では100分の一程度だ。東電では自社が実施する外洋の濃度測定でセセシウムとストロンチウムなどは同一レベルで以下であるとして、「外洋には影響がない」と説明している。自分もそう思う。リットル1000ベクレル程度の汚染水が年に数回流れても海水で拡散してすぐに問題ないレベルに薄まってしまう。したがって、福島県近海の漁業には全くといってよいほど影響はない。

東電もここんな数値は大して問題ではないと本気で考えていたのかもしれない。しかし、反原発のメディアに取っては「今も続く隠蔽体質」(東京新聞)と格好の東電叩きの材料になってしまった。また、昨日のNHKやテレビ朝日の報道では当然のごとく福島県の漁業代表者を登場させ、「信頼関係が損なわれた」といったコメントをさせている。批判されれば東電も表立って反論はできない。

ただ東電に限らず、なぜ今頃になって昨年8月のデータが蒸し返されるのか疑問に思うのではないか。もちろん、公表を怠ってきたことは責められるが、これは雨期の最大数値であり、日常的にはさほど騒ぐほどの数字ではない。「今も福島を裏切り続けている」と東京新聞は得意げに書いているが、はしゃぎ過ぎでどこか陰謀論的匂いを感じないわけにはいかない。

それはともかく、東電は原子炉建屋地下の汚染水をいかに処理するかという世間が注目する課題に頭がいっぱいなのだろう。こんな屋根の雨水には神経を注ぐ余裕がないのではないか。そうした気持ちの隙を反原発メディアに突かれたといえる。

ブログで過去に何度も書いたが、なぜ政府は福島の事故の処理をいつまでも東電に任せっきりなのか。安倍首相は原発事故の影響は制御されているとうことを世界に宣言したが、どうも発言だけで事故処理を全面フォローする気概を感じない。アベノミクスや国防外交政策ばかりが優先され、原子力政策は腰が引けている。

いまこそ、東電としっかり連携をとって具体的で有効な汚染水処理を積極的に推進して欲しい。こんな反原発メディアの意地の悪い横やりを軽くいなすのが一番だ。

それと同時に、政府は福島の安全をもっと内外にアピールしてほしい。先日テレビ朝日の報道ステーションで古館伊知郎キャスターが「福島の甲状腺がん検査で福島県は事故での被曝の影響が現在見られないといっているが、いまだわからないことが多い。こうした視点も尊重すべきだ」といった趣旨の発言をしていた。このコメントはいかにももっともらしく聞こえるが、悪しき「両論併記」にしか思えなかった。

福島でチェルノブイリのような高濃度の被曝をした子供たちはいない。被曝度は桁が二つも違う。その違いを明らかにするための甲状腺検査であったはずだ。つまり福島では甲状腺がんが増えることはないという前提で検査が始められた。そして現在、検査結果がはっきりそれを証明している。だから、政府は悪しき両論併記ではなく「福島は安全」という福島県の見解を共有すべきだと思う。

そして最後に安倍首相にもう一つ提案したい。来年日本で行われる先進国首脳会議サミットはぜひとも福島で開催してほしい。世界に福島の安全をアピールすることが福島の復興に大きく寄与するはずだ。反原発のメディアや言論人が大反発するだろうが、後世英断として評価されるに違いない。