粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

上杉隆氏と退会騒動

2013-01-30 14:47:14 | 煽りの達人

自由報道協会の上杉隆氏が、経済ジャーナリストの池田信夫氏やその運営サイトを名誉毀損で訴えた裁判は、昨日最初の口頭弁論が行われた。裁判の今後はどう見ても上杉氏に不利なことは明白だ。上杉氏は自分が提供した資料を読売の資料と同じ内容だと認めたが、記事の発信は読売が先になっているので記事盗用疑惑は遺憾ともしがたい。

ここでその記事云々を論ずるつもりはない。驚いたのは昨日の口頭弁論に原告としては上杉氏本人が出席せず「老弁護士1人」だけだったことだ。被告の池田氏側が6人の大弁護士団だったのとは対照的だ。池田氏が「こんなやる気のない原告ははじめてみた」と酷評していたのもうなずける。自由報道協会の内紛を乗り切りためのアリバイづくりといわれても仕方がない。

先月も12人の理事の一人畠山理仁氏が会を離脱した。畠山氏が退会の経緯を自分のブログで激白していた。

「取材者たちが自由に取材する権利を確保することで、多様な情報が世の中に流通する」ことを目指して彼もその設立メンバーに名を連ねていた。しかし、現実には組織の中核になる理事会が、即席の寄り合い所帯といった性格が強く、その経済的基盤も脆弱だ。自由報道協会のサイトを見て、まず気がつくには「寄付」の依頼の文字である。協会の理想とは裏腹に運営面での資金的な厳しさが窺える。

各省庁で記者会見を開くにも自前の会見場をもっていない。会見の運営費(会場費、人件費など)も当初会員の持ち出しによって工面するほどであった。しかし、それで運営は立ち行かず広く寄付を募っているのが現状だ。

畠山氏自身も慣れない事務の雑事に没頭され、本来の報道活動の障害になっている。しかしブログで明らかにしていたが毎月の10万円程度の手当てさえも、厳しい財政事情を考えたら心苦しく感じていたようだ。

しかし、関連書籍出版を巡る畠山氏への不当な嫌疑が協会不信を引き起こし、今回の上杉氏の盗作疑惑が決定打になって彼を退会に追い込んでしまった。自由報道協会の理事らが共同出筆した書籍(被災支援を趣旨とした内容)を出版するに当たって、出版元から印税と制作費が支払われた。普通編集は外注するのだが、経費節減のため自前で編集作業を行った。編集は協会とは別に協会の有志が独自に進めていたが、畠山氏も理事として唯一その作業に加わっていた。100万円近くなる印税は被災地支援の活動資金に回され、制作費25万円が編集者たちに分配された。畠山氏はそのうち3万6千円を受領した。原稿料は無償だという。

しかし協会仲間からは印税をも「つまんだ」のではないかと疑われてしまう。会計報告が遅れたことはあるが、こうした嫌疑は彼には身に応えたようだ。そして今回の上杉盗用疑惑。協会規約に「ジャーナリストの職業倫理の向上」を唱っているのに上杉氏は満足な回答をしない。報告書を出すといっていたが、一向にその気配がない。仕方なく畠山氏が裁判所で訴状を閲覧し「真相」確認する有様だ。(まちろんそれを読んでも納得するには程遠かった。)

それでころか上杉氏は自分から緊急理事会を招集して、先の出版での「不明瞭な運用費」を問題にして畠山氏を追求する始末。ここに堪忍袋の緒が切れたということだ。

協会の理念は素晴らしい。しかし、会員の言動が良きにつけ悪しきにつけ注目を集めれば、結果として「会員の評価」が「会の評価」に影響を及ぼす可能性があります。いくら「自由報道協会はメディアではない」と内部の人間が力説しても、外部からは理解されないのではないか。

その理念とは裏腹に、協会内部のドロドロした世界から畠山氏が弾けだされた印象が強い。理想を掲げて旗揚げしただけに、こんな現実を見せられては幻滅に転じるのは早い。まして寄付を募るのなら尚更だろう。

私はその責任を取るためにも、協会を退会することにいたしました。精神面での疲弊とともに、経済的な面での疲弊も一因だったことも申し添えます。

上杉氏以下、依然協会で留まる理事たちはこの悔悟さえ窺える無念の思いをどのように感じているのだろうか。



放射線影響検証委員会の設置を

2013-01-29 14:14:48 | 過剰不安の先

最近、原発事故での放射線被曝の影響について、特に甲状腺がんの不安を払拭するするニュースが相次いでいる。

12月10日/国連、福島事故の人体への健康被害を確認せず(2011年に日本の当局は、これを含む食物と水の消費を抑制して、福島県の子供たちを守った。日本の子供が受けたと考えられる被曝は最大で35mSvという。)

1月12日甲状腺被ばく4.6ミリシーベルト 浪江町民、弘前大が調査 

1月28日/原発周辺の1歳児の甲状腺被曝、大半が30ミリシーベルト以下(放射線医学総合研究所発表)

このうち弘前大学の発表は事故4、5ヶ月後の浪江町住民約2400人のセシウム内部被曝から推定したものだ。これとは別に、事故1ヶ月後の浪江町住民62人に対する放射性ヨウ素の内部被曝調査では最大33ミリシーベルトの被曝だった。

甲状腺がんでは事故初期の放射性ヨウ素の内部被曝で問題になるが、いずれ3例とも福島県民の被曝は30~35ミリシーベルトとほぼ同水準になっている。この数字は甲状腺被曝予防用に飲む50ミリシーベルトを大きく下回っている。

昨年朝日新聞が弘前大学の結果を最高87ミリシーベルトと「早合点?」で報道して、物議をかもした。あるいは世界保険機構が福島県の1歳児が甲状腺被曝は100~200ミリシーベルトと衝撃の報告をしていたが、これも放射医学総合研究所の数字を見る限り誇大であることがわかる。

事故による甲状腺への影響については福島県が18歳以下の県民エコー調査を実施している。すでに8万人を調べたが一人の甲状腺がんが報告されたものの、原発由来ではないことを明らかにした。ところがこれに異議を唱える反原発派が、検査結果にのう疱やしこりをもつ子供が多いことを理由に大騒ぎした。しかしこうした検査は東京や神戸でも同じ結果がでていることで福島県の報告が妥当だったことが証明されている。

ただ、いまだに原発事故による甲状腺がん被害をことさら強調する反原発派の声は根強い。これもその原因となる放射性ヨウ素の半減期が8日と短く早期の被曝検査が出来ずに、正確な実態がわからないことによる。

先日NHKのテレビで事故直後の放射性ヨウ素の分布状況を検証する科学者たちの試みを紹介していた。それによると、福島県沿岸部で最大100万ベクレル/m3を超える放射性ヨウ素が空中に運ばれたとしている。そして被曝状況を算出すると5歳児24時間野外で3月12日から31日まで同じ場所にいた場合50ミリシーベルト以上の内部被曝をしたことになるという。

しかしこれは調査した科学者が指摘した通り「過大評価」を免れない。24時間野外にいるというのは非現実的だ。ひとつの検証の参考データにはなるが、今後より正確な検証が必要だ。すなわち50ミリ以上というのは被曝は計算上の最大値であり、実際30ミリ台が最大で多くは数ミリ程度か不検出が大半であろう。

甲状腺への影響に関しては、事故直後は誇大な被害が喧伝されていたが、時期を過ぎるに従い段々下方修正されているのが現実だ。しかし放射セシウムのよる被曝による影響とともに、放射線被曝で国民全体が共通した認識を持つには至っていない。

思うに、昨年政府と国会が事故調査委員会がしたような大掛かりな検証が必要なのではないか。「放射性物質の拡散状況と人体に対する影響」を検証する公的な試みだ。そうでもしなければ、なかなか放射能被害を巡る国民認識の混乱は静まらない。

場合によっては民間の有力機関も独自に検証して欲しいと思う。それといまだに影響の大きさを強調する学者、たとえば武田邦彦中部大学教授、小出裕章京大助教、矢ケ崎克馬琉球大教授、早川由起夫群大教授らも自由報道協会などと組んで独自にプロジェクトをつくって検証をすればよい。原発事故から2年近くなって多くの国民は、今やこれらの検証を冷静に見直し判断する目をもっていると思う。


北朝鮮の核と餓死地獄

2013-01-28 14:34:21 | 厄介な隣国

昨年の弾道ミサイル発射に対する国連安保理事会の制裁決議に反発して北朝鮮が核実験を強行しようとしている。これはアメリカと取引するための威嚇メッセージだといわれている。アメリカと直接交渉して「体制保証」を認めたもらう思惑があるようだ。

しかし、北朝鮮が望む最終的な目的は単なる体制保証ではなく、経済支援だと思う。といっても北朝鮮当局にとってその支援の対象は大部分の飢えた聴衆ではなく、あくまでも一部支配者でしかない。労働党、軍部、保安部でも上層の権力者が中心だ。多くの国民は実際眼中にない。

最近産経ウェブで北朝鮮に関するショッキングな記事を目にした。「飢餓地獄の北朝鮮で人肉食相次ぐ」南西部の穀倉地帯が昨年春以来5万人に及び餓死者を出しているという。食人肉など日本の終戦直後でも聞いたことはない。江戸時代の飢饉に遡るくらいの遠い日の悪夢だが北朝鮮では現実の話なのだ。

この原因は昨年報じられていた旱魃による凶作だけではない。なんと国家が、現地の食料倉庫を強制的に調達し、軍部などに回したことも大きい。いわば国家による強奪である。北朝鮮の支配層は農民の食料を横取りしてまで、先軍政治という国家方針を維持しようとしている。

おそらく外国の食料援助が実現しても、その食料はこうした支配層や軍部に回されることは間違いなんだろう。ミサイル1代分が北朝鮮の米輸入額の2年分に相当するという。おそらく、こんな簡単な算数を北朝鮮のトップに説明してももはや無駄な話だ。

そんなことを分かっていれば金正日いや金日成がとっくの昔に無駄な軍拡を止めていただろう。金正恩以下北朝鮮支配層は、自分たちの贅沢三昧の享楽を保証してもらうために体制を保証してもらいたいのである。単なる国家の維持ではない。


NO NUKESヌード

2013-01-27 00:17:15 | プロ市民煽動家

38歳でこの肢体、どうなんだろう?フライデー「千葉麗子決死の反原発ヌード」まあ、ある程度自分の裸に自信があるからこんなグラビア雑誌に出たのだろう。反原発著名女性とはいっても、落合恵子氏や香山リカ氏ではとてもお呼びがかからないだろうが。失礼!

胸や局部を「NO NUKES」(反原発)と印刷された黄色いベールで隠している。こういうのをメッセージ性があるというのだろうか。よく欧米で動物愛護を主張する女性活動家たちが、毛皮コートなどの不買運動を訴えるためにヌードを披露する話を聞く。しかし千葉女史のヌードはそれほどの切迫感を感じない。「決死」どころかどこか拍子抜けで「ダラケた」感じがするのは自分だけであろうか。

おそらく、このヌードグラビアが1年前に出たなら、物議をかもしただろう。きっと反原発側からも「不謹慎」と非難されたのではないか。とてもこのヌードが反原発運動を喚起するどころか、軽薄さばかりが見えて運動のイメージダウンになった気がする。

逆に今だからこそこんなヌードも大目に見られるといえる。要するに今、反原発運動も一時の切迫感を失い、ある種ファッション、エンターテインメントに変節してきたのではないか。雑誌社でもそんな空気を察してOKサインが出たのだろう。

しかもフライデーお得意の袋とじだ。そこに「メッセージ性」はない。読者の性の欲求を高める商品効果を目論む雑誌社のあざとさしかない。あの究極の原発煽り報道で世間の顰蹙を買った講談社。今は昔、反原発も娯楽の一部分になった。これを商魂というのだろうか。

千葉麗子女史も「決死」とはとてもいえない。彼女は「売名行為」を否定するだろうが、本人の意志とは関係なく、端から見るとそれだけの結果に終わってしまった。かつては電脳アイドル、今は盛りを過ぎた反原発ヌードルとして名を馳せる。花の色は移りにけりな…、本人の花の色はいかに?


中国の内憂

2013-01-26 10:02:40 | 厄介な隣国

中国の習近平総書記が訪問中の公明党山口代表と会談し日中問題を「対話と協議によって解決していく努力が必要」と語り、改善に前向きな発言ををした。この会談をこれまでの対中強硬姿勢が一気に対話方針に変わるとは思わないが、中国側のひとつのシグナルとはいえる。

これには、今中国が抱える内政の弱点が影響していると考える。特に注目するのは2点だ。ひとつは経済成長の鈍化である。これまで二桁の経済成長を続けることで雇用を促進し国民生活の底上げを進めてきたが、これも対外輸出や国内投資の減少で成長にブレーキがかかっている。労働賃金の上昇は輸出競争力を弱め、海外からの投資も減少させていく。

その分国内消費が増えていけばいいのだが、一部の富豪や共産党幹部だけが富を独占し多くの一般国民との所得格差は増すばかりだ。消費拡大の鍵となる中間層が育っていない。経済成長から取り残された国民の政府に対する不満はその成長鈍化により高まることはあっても収まることはない。最近急激に増える労働争議は暴動を伴って一層過激になっている。

もうひとつは環境汚染が深刻化していることだ。農地は荒れ、飲料水の汚濁も深刻だ。河川から流れついた沿岸の海水も海産物に深刻な影響をが与えているといわれている。それ以上に最近問題になっているのは、大気汚染だ。石炭燃料は有毒物質を多く含み、工場で出る焼却ガス、そして自動車の排気ガスは人口規模が大きいだけにその被害は桁違いだ。特に微粒のPM2.5と呼ばれる化学物質が人の呼吸器を蝕みで昨年4000人の死者が出ているという。

こうした環境汚染は中国の経済成長の阻害要因になっているばかりか、これを抑制するどころか放置している行政、すなわち国家権力に国民が暴動やデモで対抗する。これは先挙げた格差に伴う暴動と連動して一層の社会不安を高めていく。共産党政権はもはやこうした国民の不満を力では抑えられない。いわば健全な国民生活の向上を真剣に配慮しなければならない時期に来ている。これを克服しなければもはや政権は存続しない。

日本に対してもいたずらに対立を煽るばかりでは国内の経済が立ち行かない。それほど日中関係は深く密接に繋がっている。日本の投資や国内雇用は、先進国の中でもトップクラスであり、その存在は無視できない。さらに環境問題対策で日本の技術力は貴重であり、日本は中国の環境汚染対策では貢献すべき潜在能力をもっている。

そういった点で今回の習近平の姿勢は、内政安定のために日本の力を取り込もうとする意思の表れである。日本もその辺りの意図を充分に汲み取り対応すべきだろう。ただ一方では中国は決して対外拡張を止めることはないだろう。表面的にはおとなしく見えても基本原則は変わらない。日本は一方では歩み寄り、一方では緊張を緩めない冷徹な政治力が求められている。