粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

香港の吉野家

2014-03-29 10:35:52 | 過剰不安の先

産経新聞の記事に、「香港の吉野家で『福島産なし、安全』香港吉屋の31店舗がポスター」というのがあった。

牛丼チェーン吉野家の香港にある全61店舗で「香港吉野家は、福島の米や食材を一切使っていません」として「良心的な品質、安全食材」と主張するポスターを張り出していることが28日分かった。

香港では昨年末ごろから「吉野家は全ての米を福島産にすると発表した。がんになることを恐れないなら食べに行って」など、吉野家を中傷する誤った情報が携帯電話のアプリで拡散。ポスターはこれに対応するため作製され「100%絶無 日本福島食材」と赤いはんこを押したようなイメージも付けられている。

約2カ月前から掲示を始めたといい、店舗の外からも見えるようガラス壁に張ったり、店内のメニューの横に張ったりしている。香港吉野家の広報担当者は、福島県の食材を使用しているのかと多くの問い合わせがあったとして「われわれがやらなければいけないのは客の懸念を取り除き安心させることだ」としている。

吉野家HD(東京)は「現地の運営は現地に任せている」としている。(記事全文引用)

最初この記事を読んで酷く不快に思った。昨年、自分のブログでも吉野家が福島で現地の農家と提携して自社米を生産するという報道を取りあげて、吉野家の取り組みを歓迎したのに、今回の件にはそれに冷や水を浴びせられる思いだ。

ただ、残念ながらこれが海外で日本の食を展開する上での厳しい現実ともいえる。日本国内のように、「食べて福島を応援」などという同胞愛は望めない。

香港といえば、原発事故当時雨後のタケノコのように増殖した日本食店、特に寿司店が風評被害で大打撃を受けたことが記憶に生々しい。ただ日本食という名前だけで、食材の多くが東日本とは関係なかったり、あるいはそもそも日本産でさえないのに、敬遠され客足がばったり止まり多くが廃業に憂き目にあった。

そんな過去の傷が消えない中、外食産業の激しい競争もあって福島産への理不尽なデマが香港の街を飛び交い拡散していったのだろう。それでなくとも香港という中国人社会にあって、やはり反日という意識が人々の心の底辺に根強く残っている。放射能汚染の恐怖という過剰な不安がこうした反日意識によって増幅され疑心暗鬼が渦巻いてしまったといえる。

こうした香港人の意識に中で「風評被害払拭」を訴えても残念ながら通用しない。そもそも香港に吉野家が61店舗もあることが驚きだ。こうした実績を確保している香港の吉野家サイドが「福島産なし」のポスターを出したことは苦渋の選択だったともいえる。

異邦人に「風評被害払拭」などと理想論を唱えても現実は厳しい。いまだに日本でも「風評被害は東電の実害」などと曲解や否定をする人間がいるくらいだから、大きいことはいえない。せめて日本国内だけでもそんな風評に動じない風土を確たるものにしたいものだ。吉野家は今後もこれに懲りずに福島米の生産をさらに推進して欲しいと願うばかりだ。


あまりに深い「溝」

2014-03-28 14:16:22 | 過剰不安の先

今でも反原発活動家の最右翼(左?)に立っている木下黄太氏の本日のブログ(3月28日)を読んで改めて考えさせられた。その「溝」というものを。本日の記事にはこの春幼稚園児になる娘を持つ母親の声が紹介されていた。千葉に住む母親は地元の3カ所の幼稚園を見学して娘の入学先を決めるつもりでいた。

彼女の選択肢で大きなポイントになるのが園内での給食だ。弁当持参の有無を含めて幼稚園がどういう方針なのかが判断材料になっていた。

木下黄太氏の読者のメールだから当然、放射能被曝を拘るいわゆる「放射脳ママ」であることは致し方ない。以下はその母親がある幼稚園を訪ねた時に職員と交わした会話だ。ちなみにこの幼稚園は「完全給食(園内で独自調理)、牛乳あり(千葉県産)」ということだ。


母親「食材の産地は、 どのあたりですか?」

職員「(明らかに険しい表情に変わり)・・・何を気にされているんでしょう?」

母親「原発事故があったので、もちろん放射能ですよ」

職員「(ため息をつきながら)あの~それは気になさら    なくて大丈夫なんですよ!」

母親「??何がどの様に大丈夫なんですか?ですから、産地を教えてください」

職員「地元産(千葉県産)が多いですが、東北だろうと関東だろうと、たとえ福島だろうと、産地は特定してませんよ」

母親「そうですか」

職員「椎茸だって、うちは全然普通に出しますからね~笑 みんなよく食べてくれますよ」(実際の本文では「母親」が「私」になっている)


「「絶句」した母親は追い打ちにこの職員から「暴言に近い捨て台詞」をいわれたという。

職員「うちには、給食の食材や産地に口出しする保護者はいませんよ」「お弁当持参可の幼稚園は他にあるでしょうから、どうぞそっちの幼稚園に行ってください」


木下黄太氏は、こうした職員の対応からこの幼稚園は「放射能は気にしない、福島のものも、シイタケもどんどん子供に食べさせ、うちの方針にぐずぐず文句をつけるな」と考えているとしている。そして結論で「体制に従いたい、保守的な要因が強い場所では放射性物質が大量にあると、普通の懸念もなさなくなる」とし、最後は「なんだか戦前の日本そのままの展開ですね。」と彼お得意の体制批判が飛び出す。


でも「戦前の日本そのまま」といわれても小生にはピンとこない。彼自身も戦前の日本がどういうものか果たして分かっているのか。それはともかく、記事を読むと対応した幼稚園職員が非常にぞんざいで悪意がありそうに人物に見えてくる。はたしてそうなのか。

おそらく、職員は食品の安全は常識といえるほどに国、自治体、農家、業者の管理を信じきっているのだろう。あるいは食品の仕入れ先と日頃懇意にしていて、母親がそうした人々にケチをつけたことを不快に思っているのかもしれない。さらには食品の安全に彼なりの科学的な見識を備え、ある種確信を持っていたとも考えられる。だから、母親の問い合せには「何を今更場違いなことをいうのか」といういらだちがあったように思う。

一方の母親は、「ともかく東日本の食材は放射能に汚染されていて、まして福島の食品などとんでもない」と思っているのだろう。自分の娘のことを考えると余計不安ばかりが募る。

自分からするとどう見ても多少対応に難はあるが、この職員に軍配を上げたくなる。政府が定めた食品基準1キロ辺りセシウム100ベクレル以内という数値ではもともと世界的な厳し過ぎる基準だ。市場に流通しているものは皆それ以下であり、実際は不検出のものが圧倒的に多い。確かに母親が望むような細かい測定をマメには農家や業者が行なっていないかもしれない。しかし、過去の検査して問題なければその後の新たに基準を超える食材がでることは考えにくい。福島の食材について逆に意味で安全ともいえる。いまだ消費者にはその先入観が強く、生産者がその安全性には神経質になっておりきっちり検査をしていると考えられる。

そして、こうした食品への信頼性はすでに世間的にも常識になりつつある。不安先行の母親は非常に少数派になっている。雑誌のアエラが以前こんな母親たちを「隠れキリシタン」になぞらえていた。だから、なかなか食の不安を口外することにためらいを感じているようだ。その不満をこんなマイナーな「反原発原理主義」サイトに訴えざるをえないのかもしれない。

それにしても、こうした食品安全確信主義者と放射能隠れキリシタンとの間の「溝」の深さを今更ながら痛感する。これがさらに深くなるとしたら問題だろう。「戦前の日本そのまま」などとこじつけるようではこの先暗い。食品の安全に対する正しい認識と理解が求められる。


困った大統領、愚かなマスコミ

2014-03-27 11:24:58 | 厄介な隣国

果たしてこれが「首脳」会談といえるのだろうか。日本、アメリカ、韓国の3首脳がオランダのハーグで取り行なった様子を見て心底首を傾げる。安倍首相が韓国語で話しかけても朴大統領はそれに応じる風もなく硬い表情のままだ。

一番問題なのは二人の間にオバマ大統領が入っていることだ。オバマ大統領が日韓の仲介役を務めたようだが、どう見てもオバマさんは「架け橋」ではなく、「壁」になっている。これでは昨年日韓両首脳も出席したAPECとさほど変わらない。

韓国のマスコミは逆に朴大統領の「つれない表情」に注目し歴史認識で日本に妥協しない姿勢を示したと評価していた。逆に言えば、朴大統領としても世論の支持を得るためにはおいそれとは安倍首相に「優しい態度」はとれないということだろう。

しかし、実はマスコミが大統領と一同様、いや輪をかけて歴史認識を絶えず持ち出し反日報道を執拗に繰り広げたことも事実だ。それによって世論を反日に誘導する。いわば大統領とマスコミが二人三脚で反日を展開しているのが今日の韓国の状況といえる。困った大統領、愚かなマスコミといわざるを得ない。

日本の一部メディアや「識者」は日韓がお互い胸襟を開いて冷静に歴史認識の相互理解に取り組むべきだと理想論を主張する。しかし、そもそも歴史認識を共有することが果たして可能だろうか。非常に疑問に思う。

それぞれの国が自分たちにとって誇るべき歴史を持っている。たとえば心酔すべき英雄がいる。モンゴルでいえばジンギスカンだろう。しかし周辺イスラム諸国から見れば大虐殺をした野蛮な人物と考えているはずだ。フランスのナポレオン然り。

スケールは小さいが、朝鮮の安重根など韓国では朝鮮統監の伊藤博文を殺害することで日本の朝鮮支配に抵抗を示したと映っているのだろう。しかし、日本から見れば単なるテロリストであり、しかも初代首相を暗殺した極悪人になる。

慰安婦問題についても同様だ。朝鮮女性が旧日本軍の慰安の対象にされたと韓国側は主張するが、実際は慰安婦が高額の報酬を受けていて比較的自由であった多くの事例をを日本側としては挙げることができる。もちろん、軍が強制連行したり性奴隷として虐待したというのは事実とはかなり違う。

こうした歴史認識の溝を埋める事は不可能に近い。安易に相互理解などと殊勝なことをいうのも無責任だと思う。お互い譲れない。ただ問題だったのは、これまで日本が韓国に甘い態度をとり続けてきたことだろう。これは過去の自民党政権にも大いに問題がある。

今後朴政権とどう向き合っていくべきだろうか。決して韓国に歩み寄って、歴史認識を韓国側に合わせることはできない。それがさらなる災いをもたらすことは河野談話を表明したことによって慰安問題が激化したことがそれを物語っている。

日本が出来る最大限の譲歩は慰安婦問題を当面棚上げにすることを韓国側に呼びかけることだ。しかし、今の韓国ではとてもこうした自制さえ応じることはしないし出来そうにないだろう。もしそれが可能となるとしたら、韓国がそんなことに拘る余裕がなくなるときだろう。

たとえば、擦り寄った中国が経済的な破綻や混乱に陥り韓国も巻き添えを食って経済危機を引き起こす場合だ。あるいは北朝鮮が体制内の混乱から暴発して朝鮮半島が戦乱に覆われたり、北朝鮮の政体が崩壊してそれが韓国に及んで大混乱をきたすことだ。

中国の経済破綻は日本にとり影響は大きいが、それ以外のケースも日から見て対岸の火事では決して済まない。だから韓国との融和は一筋縄ではいかないし、覚悟して日韓関係に臨むしかない。



帰還を促すのは当然

2014-03-26 14:53:15 | 反原発反日メディア

本当にこの記者、「隠蔽」という言葉が好きだなと感じる。毎日新聞東京社会部日野行介記者。過去にも福島県民健康調査の「隠蔽」体質を攻撃して逆に抗議されたことがあった。

今回のターゲットは内閣府原子力被災者生活支援チームという長たらしいチームだ。このチームが福島県の田村市、川内村、飯館村の避難指示解除の予定区域を専門機関に昨年9月に被爆線量を調査させた。この結果を原子力規制委員会や該当する市町村に報告して住民帰還の資料にすることになっていた。学校の建物内外や民家の屋内外さらには山や農地に線量測定器を設置して調べた。それに住民の滞在時間を勘案して住民の日常の被曝を算定したのだが、川内村では年間被曝が予想以上に高いことがわかった。そこで支援チームは専門機関に滞在時間のうち室内の時間を増やして調整するように指示したというのだ。

川内村の最初の算定では年間被曝2.6~6.6ミリシーベルトになってしまう。できれば1ミリシーベルト台が望ましいということにしたい、というのが支援チームの意向のようだ。しかし、こうした話が日野記者の「地獄耳」に入り、早速記事にされてしまった。そして結論は「調査結果を隠したうえ、操作した疑いがあり、住民帰還を強引に促す手法が批判を集めそうだ。」とお得意の「隠蔽批判」になる。

確かに、この支援チームの卑屈さにも問題がある。あるいは算定方法にも疑問が残る。住民個人個人によって生活習慣が違ってなかなか算定が難しい。個人が線量計をつけたままの方が低くでているという声も多い。

しかし、一番の問題は相変わらず、年間1ミリシーベルト被曝(追加分)が基準になっていることだろう。世界の空間線量で数ミリシーベルトになる地域などたくさんある。あるいは東京世田谷の民家で問題になったラジウムによる年間30ミリ以上の被曝。それで健康被害が起きたという話を聞かない。

さらに日野記者の偏見が著しいと感じるのは「帰還を強引に促す手法」という物言いだ。「強引」という言葉はこの記者の主観でしかないと思う。政府の支援チームそしてこの結果を報告する該当の市町村が何よりも住民の帰還を政策の最優先に考えているのは当然である。住民帰還こそ自治体の存亡に関わるからだ。

事故とかに関係なく、日本全国の自治体で過疎が深刻な問題になっている。まして事故で避難を強いられている自治体ならなおさらだ。それを「帰還強引」という正義を気取った言い方でこうした関係者の努力を貶めることには怒りさえ覚える。

この毎日の記事に呼応して昨日またテレビ朝日の報道ステーションが同じ内容の批判報道をしていた。11日の福島の甲状腺がんの報道では日野記者が出演していた。どうも報ステと日野記者が「つるんでいる」いるとしか思えない。双方の共通点は事故での放射能被曝を必要以上に喧伝してその恐怖を執拗に煽り続けること、そして住民の帰還を軽視し福島の復興を妨げることだ。


ドイツに学べない脱原発

2014-03-25 16:08:17 | エネルギー政策

日本が脱原発先進国のモデルにしているドイツでエネルギー政策が厳しい局面を迎えている。今世紀初頭より推し進めてきたドイツの脱原発は日本の事故もあってそれに拍車が掛かった。確かに、既にドイツでは全電力消費に占める再生可能エネルギー(太陽光、風力など)の割合は23%に及んでいる。(日本は0.6%)

ただ、よくいわれる事だが、こうしたエネルギーは天候、昼夜、季節の違いで発電能力に相当な変動がある。ドイツ在住の作家川口マーン恵美氏のレポートによれば、条件が悪いと発電能力の5%二も満たない場合があるという。したがって電力が足りず、火力をフル稼働したり、電力を近隣諸国から輸入するしかない。

こんな不安定な電力なのにドイツ政府は積極的に導入を進めてきた。特に、固定価格買取制度を採用してこうしたエネルギーを全て電力会社が引き取る仕組みになっている。だから気象条件が良過ぎると逆に電力が大量に余るのだが、この制度によって電力会社が引き取らざるを得ない。

結局今度はこれを隣国に売る事になるが、他国の事情でなく、こちらの事情で売るので他国の需要をオーバーする事が多く、その価格は下がる。前述の川口氏の話だと、最悪只で引きとって貰うケースもあるという。こうしたことで、電力会社の業績を悪化させているのが現状のようだ。

苦しいのは国内の消費者も一緒だ。再生可能エンルギーを固定価格で引き取った分は価格に転嫁できることになっている。隣国で売る電力の価格と国内消費者への電力は全く別ものである。23%と再生可能エンルギーが増えたことによって固定価格で買い取った費用が膨らんで消費者用の電力価格が急増して企業や家系を圧迫する。最近の試算では電力料金のうち20%が固定買取による増加分ともいう。

日本ではあまり報道されていないが、ドイツでは脱原発とはいっても前原発16基のうちまだ9基が起動している。2022年までに徐々に減らしていく予定だ。しかし、安定電源で再生可能エネルギーの欠点を補完しているのがここ原子力なのに、減っていくことには最近疑問や危機感が出てきているようだ。

原子力が後退して、再生可能エネルギーが増えていけば電力料金がさらに電力料金が上がっていく。もちろん電力の供給も余計不安定になって、火力の負担が大きくなり、隣国との輸出入もさらに大拡大する。ドイツが電力を安く輸出して隣国から高く輸入する傾向が強いがそれが今度一層顕著になりそうだ。

ヨーロッパでは脱原発国はむしろ少数のようだ。チュコやポーランドなど続々原発の設置を推進している。ドイツの国内の原発はなくなっても隣国から原発で発電された電力を買うことになる。すでに全電力の8割を占めるフランスとドイツとの電力の輸出入では圧倒的にフランスの供給が多い。

隣国とは電力の売買もできない島国の日本。同じ日本でも東と西さえもなかなか供給ができない。だからこんな不安定な再生可能エネルギーでエネルギー問題が解決できるなどと考えるのは絵空事に近いといえる。まずは安全な原発を再稼働して安定電源をしっかり確保することが先決だろう。もちろん再生可能エネルギーの開発も進めていけばいい。しかし、足下をじっくり見て取り組むべき課題だ。敢えてドイツの失敗に学べと言いたい。