粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

「放射能パニックからの生還」を読んで

2012-05-12 16:00:01 | 過剰不安の先

都内でセミナー企画などを営業する主婦の白井由佳さんが体験した「放射能パニック」とその帰還は、日頃自分が感じていることをまさに身を以て証明してくれたといえる。そして現在もその深刻な症状に陥っている多くの主婦たちへの強烈なメッセージとなっている。

白井さんは原発事故当時、自分の仕事や子育て、人間関係に悩んでいたようだが、放射能不安をメディアが掻き立てるのに呼応するかのように、そのパニックで逆に自分の不安をリセットしようとした。全ての問題を放射能不安に結びつけることで納得させ安心させようとしたのだ。

その方向性はまさにカルトそのものであることがわかる。もはやネットの悪い情報しか信じることが出来ず、科学的事実を一部学者が説明してもそれは「御用学者」のいうことで信用できない、と自分の考えを誘導しようとする。いま「放射能ママ」と呼ばれている女性たちの典型と言えるのではないか。

しかし白井さんは一時疎開した北海道から東京多摩に落着き、「しっかりした本」を読んでいくうちにバランス感覚を取り戻していった。決定的なのは福島から避難してきた人が受けた差別・苦しみを聞いてからだった。そのとき本人も一時パニックの最中、逆に差別の加害者になっていたことを自覚したのだった。

しかしいまだ国内には「放射能カルト」に陥っている人達は多い。白井さんの貴重の体験がそうした人々の強い援護になるとことを望むばかりだ。

追記:「放射能パニック」に関して、以前ブログ(昨年10月13日)で紹介したある女流作家のことが思い出される。芥川賞作家、金原ひとみさんだ。今どうしているんだろう、「生還」はしたのだろうか?