粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

島田市がれき反対派の「危険情報」への疑問

2012-05-30 08:40:02 | ガレキ広域処理問題

静岡県島田市で今月23日から岩手県のがれきの広域処理を本格的に始めたが、ここへきて反対派は2つの「驚くべき数値」を提示しがれき処理の危険性を強調している。


1、市民グループが5月22日午前、静岡県政記者クラブにおいて、静岡県島田市伊太小学校730Bq / kg,大津小学校1970Bq / kg のセシウム汚染があると発表。島田市内では試験焼却前は10Bq/kg程度だった。

2、市の焼却場でバグフィルターによるセシウムの除去率が50%~60%に過ぎず放射性物質がダダ漏れになっている。10万ベクレルが行方不明になっている。


しかし2点とも疑問点が大いにある。

まず1の小学校での高濃度汚染についてであるが、問題はサンプルの少なさである。各小学校1箇所だけの数字である。また測定場所も側溝や樋下など放射性物質が溜まりやすく、濃縮されやすい局所だ。別表の線量データを見る限り試験焼却前後に差異はないのはそんな限定的な場所だからだろう。

しかも比較すべき試験焼却前の各々の場所の濃度も出ていない。「以前は10Bq/kgであった」というのは何を根拠に言っているのかと思ったら、別の市民グループの調査を引用していた。なんと自分が以前ブログでも紹介した木下黄太氏の2月の市内の土壌検査をそっくり採用しているのだ。

木下氏が「おそらく20Bq/kg以上はまず出ないだろう」との期待感から調べたものだ。したがって「小学校樋下」といった「きわどい場所」は測定していないので、今回の比較には全くなり得ない。結果的に広域ガレキ処理の危険を証明したものとはなっていない。今回の「驚くべき」データを島田市長に提出して「ガレキ処理での再考」を促したいのだろうが、これでは「却下」になりそうだ。

2の焼却場での「セシウムダダ漏れ」に関しては環境省が明快な反論をしている。その内容を読めばその疑問は氷解するのではないだろうか。専門用語が多くすぐに理解できるとはいいがたいが、内容そのものは難しいものではない。論旨は3つに集約される。

①バグフィルターからてきたガスからはセシウムが検出されなかった。正確には検出限度以下だった。

市民団体のいう除去率50~60%なる低評価はその算出方法がそもそも疑わしい

③外部に出たガスのばいじんを調べてみると定量下限0.004~0.005g/m3未満であり、充分除去機能が果たされている。

まず①の不検出であるが、測定器の精度は「ろ紙部分」が0.33~0.46Bq/m3(煙突出口)、ドレン部分(排水口)が0.98~1.3Bq/m3だ。つまり環境省が決める濃度の基準30Bq/m3を検出限度以下ぎりぎりでも大幅に下回っており、極めて安全な水準であることがわかる。さらに実際は精度限界よりもずっと低いことが考えられる。

次に②の外部の市民グループの「ダダ漏れ」の指摘に対して、その算出方法に異議を唱えている。彼らがどういうふうに算出したか不明なので、ここで詳細を云々するのも難しい。ただ環境省が指摘するのは、市民側が排出ガスを過大に算出していることだ。さらに問題なのは①での「不検出評価」を逆手に取ってガス中のセシウム濃度を検出限界の数字で計算していることだ。実際の濃度はもっと低いことが考えられる。したがって除去率はずっと高いといえる。ただ島田市の測定機では充分にわからない。

そこで③の空気中のばいじん濃度が決め手になる。島田市の試験焼却では定量下限0.004~0.005g/m3未満となっている。その正確な総量はわからないが、トン単位のゴミからすれば問題にならないくらいの微量だということはわかる。

さらに、環境省では福島の焼却場で実際にセシウムの除去率をもっと精度の高い検査機で計っている。それによると99.9%という高い除去が確認されている。

以上、環境省の説明から市民グループの「放射能タダ漏れ」批判は、説得力あるものとはとても思えないことが分かる。

しかし武田中部大学教授はそれでも相変わらず、煽りを繰り返している。(5月26日コラム)

島田市は「バグフィルターの除去率が99.9%であり、煤塵濃度は0.004~0.005g/m3N以下だから大丈夫」としていますが、セシウム137は1グラムあたり3兆ベクレルですから、仮に0.003gでも1立方メートルあたり100億ベクレルになり、同じ文章の安全性の目安とされる30ベクレルの実に3億倍になります。

まるで、ばいじんがセシウム全てのように言っている。焼却時に発生した物質のほんの一部に過ぎない。実際島田市のバグフィルターで、セシウム不検出すなわち1Bq/m3以下(実際はさらにずっと少ない)ということがはっきりしている。なぜ100億ベクレルになるのか。この教授のどこに科学があるのかさっぱりわからない。



追記1:バグフィルターのセシウム「除去率60%」を主張する内容のサイトが見つかった。おそらく環境省の反論は、この主張をふまえてのものだろう。やはり不検出限界の数値(0.33~0.41Bg/m3)(煙突)をもとに算出していた。またガス排出量を17,000m3・20,000m3毎時で計算していて環境省はこれを「過大」としている。(当初ガス排出量を1桁少なく書いてしまいました。お詫びして訂正します。

追記2:文中の冒頭でリンクした市民グループの記者会見では、ジャーナリストの青木泰氏が広域がれき処理よりも焼却場のセシウム除去の不備を問題にしていた。小学校の高濃度は、廃棄処分になった茶葉や災害地からの不法な投棄を焼却したことによるとしている。同席の女性活動家たちとの意志の疎通がしっくりしてないような印象がある。しかし環境省の指摘通りに焼却場のセシウム除去に問題ないとしたら、一連の反対運動の正当性をどう説明するのだろうか。

追記3:ガス排出量を環境省がいう13,000m3毎時とする。しかも17時間の焼却時間のうち最後の4時間は実際焼却をしていない。その間の飛灰の量は環境省が指摘する通りそれ以前13時間と比べはるかに少ないと考えられる。4時間平均で半分とすると6,5000m3毎時のガス排出量しかないのと同じことになる。したがって焼却時間全体の排ガス総量もさらに少なくなり、11,500m3毎時相当として計算すべきだ。

このガス量で全体の飛灰に含まれるセシウムを計算すると228735Bqとなり原灰に含まれるセシウムの209380Bqに近い数字になる。これで計算すると91.5%の除去率になる。それでも8.5%は除去されないことになるが、焼却後半4時間の飛灰が実際はもっと少なくなることは充分考えられる。そうすると限りなく原灰に近づくがその辺りは正確なところわからない。しかし市民グループのいう60%の除去率の主張が実態から相当はずれていることは間違いない。