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…漁師アトムの航跡… ~ある沖乗り漁師の綴記~

漁船と蓆の意外な関係!

2009年10月21日 | ブログ

「蓆」(むしろ)が船上で使われている事は案外知られていない!

蓆は水分を含むと滑り止めに効果を発揮します!

ローリングやピッチングなど、船上は揺れの世界…!

甲板上はアルミ甲板でも板敷き甲板でもカゴなどが滑り、

船の揺れによって動き、わりと危険を伴います。

秋刀魚漁では氷をカゴに入れて、ある程度積み重ねておきますが

濡らした蓆を敷いて積み重ねると滅多に動きません!

また、漁艙付近での作業(水揚げのタモ立て)など足の踏ん張りが

必要な箇所に敷いて滑らないように足場にする事もあります。

鮭鱒漁では特に、いろんな箇所でフル活用です!

まずは鮭を入れる前に漁艙の底部に敷きます。

蓆の上に塩を振って処理後の鮭を積み重ねていきますが

塩蔵凍結なので凍りつくまで、魚の水分は下へ下へと流れます、

一番底の鮭は積み重ねていった魚の重みで隙間が小さくなり、

溜まった水が抜けずそのまま氷ってしまうと水揚げ時には

魚を傷めたりしますので、底部に敷いた蓆から適度に

漁艙の溜りまで水が抜けるように使用しています。

ほとんどの鮭鱒漁船がここに「蓆」を使っている筈です!

他にも二重デッキ内部に下処理後の鮭を送りますが

操業中、二重デッキ内は、ほぼ一人での作業なので

板で作った「メザラ」の上に蓆を敷いて、鮭が滑らないようにし、

メザラの上に敷いた蓆の上に膝をついて振り塩等の作業をします。

(二重デッキ内は高さが限られたスペースで、ほぼ中腰くらい)

長時間直接メザラに膝を付けているより、蓆の上で行なうと

負担も軽減しますし、水温が低いので体感温度も違って来ます。

滑り止めに関しては「カーペット」も使った事がありますが、

「むしろ」の効果には敵いませんでした。

鮭鱒漁出港時に漁艙へ塩を積み込んで行く場合にも

下には蓆を敷いて、その上に塩を積み重ねます。

海水温の変化により漁艙内につく結露の水分を

蓆は吸収し、直接塩が濡れるのを補助してくれるのです。

畳一畳ほどのサイズを百枚単位で仕込みしていきますが、

一度に全部使う事はありませんので

使用時寸前まではできるだけ濡れないようにしています!

港町で漁具を扱う仕込み店へ注文し購入しています。

自然に帰る原料なのでエコな素材ですよね!

我々にとって蓆(むしろ) 藁(わら)の香りは

ある意味、鮭鱒漁の匂いでもあります…