blog-atom 2

…漁師アトムの航跡… ~ある沖乗り漁師の綴記~

【秋刀魚漁・10 航海目】!

2012年09月28日 | モバイル

9月25日朝6時・大船渡出港!

「暑さ寒さも彼岸まで」と昔の人が言ったらしいが、

本当に気候が一転し、三陸沿岸の海上も涼しくなった…。

北東からのうねりが少し高めの三陸沿岸を兄弟船2隻が並んで航走。

その後、8号は沖よりに針路をとり、次第に離れて行った…

日付けが変わり2時30分・S/B。

風が吹いている、雨が降っている、うねりも高く時化模様…

漁灯を上下させるロープが1本、LED パネルの縁で擦れて切れており、

応急で結び、漁灯を出しおえて、3時・操業開始!

しかし船首側の竹(棒受け網の棒)を巻いたり送り出したりするワイヤーが

ドラムの中で合巻きして、ワイヤーがグチャグチャになってしまったらしく

一旦落とした網を巻き揚げ、ワイヤーを切り、新替え!

不思議なもので時間がなくてサンマが見える時にかぎって

こういうトラブルが発生する…

その後、操業開始も東の空が明るんできた…

トラブルにより、僅かの漁獲に終わり、漂泊…

応急で結んでいたロープ等を替えて気持ちも切り換え…!

26日、14時30分から漁労長による水温調査、

風とうねりでピッチング・ローリングが激しい…!

日が暮れてから調査開始、あまりよい反応がなく南下…

18時30分頃より操業も魚体組成が悪く、

東の高水(18℃・澄んだ青色の水色)を

調査・操業も魚体組成が悪かった…

西北西に調査も魚体組成が悪かった…

日暮れのポイントに戻ると、やっと割合のよい群れにあたり、

付近の調査・操業で漁獲を纏めた…。

盛漁期と云っても、簡単にはサンマは獲れない…!

27日、操業準備を整え日暮れを待つ間、漂泊中の船の左舷海面にオットセイが…

しばし観察!

サンマを捕食しているようだ。

漁灯の下に集まっていた薄群れの中から1匹に狙いを定めて追いかけて捕食…

オットセイの狩りの他、数百メートル向こうの海面では

鯨がジャンプ…!

鯨のジャンプを数回観る事ができた。

野性動物の珍しいショーを楽しみ、17時10分・日没!

日没後、付近を微速で旋回しライト点灯、薄暗い辺り一面に銀色と白色…

船の漁灯の下にサンマが向かって来る!

操業開始!

サンマの動きの割には大群操業ではなかったが、連続操業で漁獲を纏めた。

20時過ぎから各船一斉にチェックポイント向け…

台風が近ずいているため、各船陸よりに避航。

4時間程航走、厚岸沿岸で小型船数十隻に大型船数隻が調査・操業中!

久々に友達が指揮を執る船(第6安洋丸)と遭遇…

衛星水温図に冷海水域の渦が新たに標示された西側の分枝のポイント…。

沖のポイントよりうねりが低い!

しかしまだ海水温は高く澄んだ青色の20℃台…

サンマの足が速く、網を入れても入りが悪い…

西側・東側への調査航走で低水を探したが無いようで

小型船の操業している船団の中に入り、微速で船を縫うように調査…

ライトの光に呼応するようにサンマは跳ね、漁灯の下に集まるのですが

魚探の反応はすぐに消えてしまう…

夜明け前に船の付近一面に跳ねるサンマの群れ、スピーディーな操船・操業!

やっと纏まった漁獲で締めくくった…!

雨が降りだし、風も強まってきた。

荒天準備後、南下帰途航走・大船渡向け。

隣りを航走しているのは偶然にも兄弟船(第8三笠丸)

この航海出港時も並走して来たが、帰りも一緒になるとは…

台風は17号・18号と2つ来ている…

28日、午後から夕方が台風18号による風のピークのよう…

18時・風、うねり共に強く大時化!

船はローリングが激しい…!

陸よりを微速で南下、深夜の入港予定。


【生産調整】!

2012年09月27日 | モバイル

解禁から不漁・薄漁で1ヶ月程推移してきた今期の秋刀魚漁ですが、

約40日を要し盛漁期入りとなったようです!

それに伴い、サンマの浜値は一気に下落…!

道東以外の内地各港の魚市場・水産関連施設で

震災前の水準でサンマを受け入れできるのは千葉県・銚子市場くらい…

それでも、岩手県の魚市場は(久慈・宮古・大船渡)

水揚げ受け入れ量が若干安定。

震災前(過去10年)北海道道東の花咲港に次いで

サンマの水揚げ量が多かった

宮城県の魚市場は(女川・気仙沼)

1日/約2隻分程の水揚げ量しか処理できず、

入港順に次の日に繰り越しとなる。

22日の段階で漁場はまだ道東沖合…

千葉・銚子まで運ぶにはまだまだ遠く、

全体的に浜値が下落した今、リスクがあり、

銚子港まで南下して行く船は数隻のみ…

花咲・厚岸・釧路など道東各港にはどうしても水揚げが集中し、

次に岩手各港となる…!

水産加工関連施設のダメージはかなり大きく、復旧が進んでいない現実がある!

道東各港への集中水揚げと内地各港の処理能力に対応する為に

各船1週間に1度の24時間休漁という生産調整

各船、1週間に2回の水揚げ規制(小型船3回)

9月22日を起点に10月6日までの2週間…!

という生産調整が 「全さんま」 の会議で決まり、施された。

が、23日が日曜日で入港船が各市場に停泊、月曜日の水揚げでは浜値が下落…

タイミング悪く、日本・中国の国際的な問題も加わり、

サンマの輸出が滞っているらしく…!

今後の主漁場の推移によっては更に下落が懸念される…!

震災前の秋刀魚指定水揚げ各港(市場)への

水揚げ許容量は全体で1日/約3000t…。

東北各港の市場・水産加工関連施設の受け入れや

処理能力が回復していない現状では

一次産業が生産を伸ばしても合理性を欠く…

情況に応じた生産調整で商品価値を、ある程度維持していかなければ…!

*********************************************************************************

23日2時40分・第18三笠丸、大船渡入港。

市場には兄弟船、第15三笠丸が停泊していた。

第8三笠丸も朝には入港して来るらしく、久々に兄弟船3隻が母港に揃う…。

入港後、岸壁に網を拡げてメンテナンス!

機関部も補機のオイル交換等のメンテナンスを済ませて網作業に、

操業中、モウカサメ(ネズミ鮫)の歯によって傷んだ箇所や、

大群操業によって傷んだ箇所の網の入れ替えで次の操業に備えた!

朝6時

「第15三笠丸」と共に弟が乗る「第2大慶丸」が出港して行った。

前日の水揚げだったようだ…!

お彼岸の中日と云う事で、お盆には出来なかったお墓参りの為、帰宅。

ブログにUPできずにいた画像を数点UP。

外はいつの間にか雨で風も強まっていた!

夕方から船に戻り、24日朝水揚げ。

水揚げ中には今年の秋刀魚漁新造船、長崎の第3太喜丸が入港して来た!

以前乗船していた第2源榮丸で機関長をしていて、定年で引退後

第1太喜丸に2年程乗船した事があり、今回新造船という事で

第3太喜丸に1年間乗船する事になった機関長は、

大船渡入港後、私に会いに来てくれた。

水揚げ中であった為、話が出来ず挨拶程度だったので作業を終えてから

第3太喜丸を訪船、話をしながら機関室を見せていただいた!

指揮を執る漁労長は、船主の長男である…!

思えば、当時・東京海洋大学生で、卒業論文に秋刀魚漁を選び、

源榮丸に数日間乗船し、レポートをまとめていた…

資格を取得、卒業後は第1太喜丸に船長として乗船、

現在の第18三笠丸漁労長の下で働いていた。

今年は、新造船に新漁労長として頑張っている!

…水揚げ・氷の積み込み作業後、

甲板の排水ポンプ不調で夕方まで作業となった…!

現在 各船、1週間に1回・24時間休漁する事で生産調整中…!


【群青の輝き・三笠丸のサンマ】!

2012年09月23日 | モバイル

【群青の輝き・三笠丸のサンマ】!
船上で乗組員が手動選別・箱詰めした船上選別箱詰めサンマ

漁師直送 「群青の輝き・三笠丸のサンマ」

船上では主に(20尾入れ) を造っています!

販売の統計では20尾入れが、一番人気らしい。

魚体組成が良く比較的漁獲の少ない薄群れ操業の合間の調査航走中に

みんなで選別し、冷水で締めた後、箱詰め・冷水・氷・収納を分担で行い

手間隙かけて製品化、準備室と呼ばれる凍結室と凍結室の間に収納、

ある程度まで冷却、冷蔵保存の状態で運び、発送します。

秋刀魚は鮮度が命!

秋の旬の味覚の代表「秋刀魚」秋の風が心地好くなるこれからの季節

サンマがもっとも美味くなる時期です…!


【秋刀魚漁・9 航海目】!

2012年09月22日 | モバイル

20日6時・大船渡入港。

まだまだ暑い大船渡港での水揚げ・氷の積み込み後、14時30分・出港!

帰航中のうねりはおさまり、凪良く北上。

三陸沿岸の海水温はまた少し上昇、市場で冷水艙に補給した清水に、

航走しながら取水した海水を海水滅菌装置を通して

海水クーラーで冷却しながら冷水艙に循環させ、冷水を造るのだが、

さすがに取水時の海水温が高いと、なかなか冷えてくれない…!

襟裳岬沖通過時から久々に風向が北北西に変わり、秋風を感じながら

21日13時・漁場着!

15時S/B。

最高の凪、霧もない、広範囲に渡って船が見える…

すぐ傍に、ロシアの秋刀魚漁船(トロール型)が見える…

P1090684

遠くには台湾の秋刀魚漁船も見える、

今期初めて纏まった主漁場が形成されたようです!

西側の水平線が真っ赤に染まる夕焼けと、

東西南北ぐるりと秋刀魚漁船の漁り火…

日没後、船が少なめの南東側に調査航走、

秋刀魚の水(緑がかった濁水)の範囲もかなり広くなったようだ…。

前航海が高いうねりの中での操業だったので、

ライトのガラス面にかかった波しぶきが、ライトの熱で塩状になっている…

操業を終えての帰航準備時は漁灯をしまい、船を早く航海態勢にする為、

ライトには急いでカバーをしてしまう…

次の航海のS/B後、カバーを外してから清水で流し、塩を取り除いてから拭き、

曇りを取った後、駆動部には注油している。

ライトの探照先に明るい光を通し、ライトの駆動部も軽い方が良い。

些細な事ですが、意外と大事…

自分のこだわりである…!

17時30分頃、航走ストップ・後進・ほどなく操業開始!

右舷側ライトを廻している最中に漁労長が窓から顔を出す、

「こまい(小さい)んじゃない?」と私。

「反応がでかいんだ」と漁労長。

「了解」!

そんなわずかなやりとりがあり、

ライトを消して、網に向かう途中に見る魚探には

いい色の反応がでている。

揚網時の赤灯でサンマが跳躍り海面を持ち上げ、

銀鱗に赤が反射して海面に数回、花が咲く…。

大群操業である…!

一回目から慌ただしい操業となったが、二回目には更に網にサンマが入り、

氷艙を開けるのに時間を要した!

10時30分・4回の操業でほぼ満船に…。

魚体組成はイマイチだが、今期初の短時間操業。

その後、南下しながら甲板を整理していると、再び航走ストップ…

船の周りで跳ねるサンマ…

魚体組成がガラリ一変…

漁灯に集まったサンマを見るかぎり、魚体組成が良く、大主体…!

大群操業がこれだったら  とか思いながら、操業再開!

大群操業中には忙しくて造れなかった

スチロール箱への船上手動選別箱詰めサンマを造る作業。

日付けが変わり、01時30分・終わり!

サンマの群れは濃くなってきた!

P1090697

各船も漁獲量を伸ばしたと思われる…

いよいよ今期の秋刀魚漁は盛漁期!

道東各港への集中水揚げを防ぐ事と、内地各港の処理能力に合わせる為の

生産調整で、週一回の休漁が決まったらしい…。

船は23日早朝・大船渡入港予定!


【秋刀魚漁・8 航海目】!

2012年09月20日 | モバイル

17日朝6時、大船渡出港

15日に大船渡市場に水揚げした休漁明けの4隻が、

南東からのうねりが若干高めの三陸沿岸を北上。

衛星水温図の表示に冷海水の流入を示す低水温域が

ロシアのチェックポイント付近を通過して南西側に伸びてきた!

日付けが変わり、18日2時30分  S/B。

北上航走中の南東からのうねりは、道東沖にくるにしたがって弱まった。

相変わらずの濃霧の中、

漁灯を出す作業を急ぎ、広げた漁灯順にLEDが点されると

漁灯の光に秋刀魚が見えはじめている…

S/B 完了で船橋右舷のライトに昇る途中にレーダーを見ると、

帰航中の小型船と思われる船影が並んで来ている!

その2哩程先には操業中らしい大型船が2隻、

左舷後方側からは我々と同じく沖出し航走中らしい1隻の船影が確認できた!

と同時に船は減速、後進…!

ライトを点灯、濃霧の海面を勢いよく漁灯の下に秋刀魚が跳ねて来る!

ライトの探照先でも秋刀魚が跳ねる…。

瞬く間に船の周りを秋刀魚が群れる!

大群操業も、秋刀魚を網の中から汲んでいる途中に明るくなり始めた…

夜明けである…!

まわりが白く明るんできた中、秋刀魚は漁灯の下で泳いでいる…

連続で網を入れるも揚網では秋刀魚が入っていない…。

夜明け後、沖よりに1時間程潮昇せして漂泊!

夜明け前に同海域で操業した3隻は、

それぞれ宮古・久慈から休漁明け出港してきた他船団の船でした。

操業した海域は低海水特有の、緑がかった濁水、いよいよ秋刀魚の水が来た!

18日の日暮れ頃から、うねりが高くなってきたが

霧がなく、各船の漁り火がよく見える。

休漁明けで各港から出港してきた船が集まり、久々に周囲の漁り火が賑やか…!

しかし、肝心の秋刀魚が見えない…

南側に調査、濁水が続いている。

20時頃からサンマが見えきたが、様子が違う…

サンマは深いようだ…!

漁労長が群れにのせたであろう船の周りの海面を、

ライトの探照先でゆっくりと大きく叩くと

漁灯の灯りの下の濁水から沸き上がるようにサンマが集まって来る…!

大群操業とまではいかないが、纏まった群れを数回操業している間に、

南東からのうねりが高まり、そして霧もやってきた…

うねりが高くなっての操業は漁労機具にも身体にも負荷が強い…

各持ち場の機具の操作や合図は、より慎重に、トラブらないように注意して!

津軽海峡沖の気象ポイント予報が悪いらしく船首側の魚艙1つには入魚せず、

3時、操業終わり、南下帰途航走

南東からの高いうねりは益々高くなり、

襟裳岬沖からは、やや左舷側からの向かい風が強くなって微速航走…!

船は20日朝、大船渡入港予定。