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80年代Cafe

80年代を中心に、70年代後半~90年代位の懐かしいもの置いてます。
あなたにとって80年代はどんな時代でしたか。

ゲームブック・さまよえる宇宙船・社会思想社

2007-03-03 22:08:12 | ゲームブック

 『さまよえる宇宙船』(85)は、ファイティングファンタジーの4作目であり、S.ジャクソン作品です。第1弾の『火吹き山の魔法使い』から始まって、『バルサスの要塞』、『運命の森』とファンタジーを舞台にした作品が続いてきましたが、シリーズ初のSF作品であり、常に新しい設定やルールを生み出す、S.ジャクソンらしい異色作となりました。

 プレイヤーは、セルツィア空間(ブラックホール)に吸い込まれてしまった、宇宙船トラベラー号の船長となり、様々な星を廻ってそこから抜け出すための座標を探す事になります。今作で採用された特殊なルールとして、プレイヤーの分身(船長)だけでなく、科学官、医務官、技官、保安官、警備員2名の計7名のキャラを作成し、指示を出す必要があります。また戦闘も通常の戦いのほかに、宇宙船同士の戦い、フェザー銃を使った戦い(ショックか致死を与える集団戦)とルールが異なっています。基本的には、宇宙空間を移動して、惑星に到着したら誰を連れてゆくかを選択してビーム着陸を行い、調査をするというのがゲームの流れになります。

 巻末の安田氏の解説によれば、TV映画『スタートレック』的な世界をゲームブックとして展開したもののようです。もともとTRPGには『トラベラー』という古典的なSF作品があり、スペースオペラというのも主なジャンルとして定着しているようです。この作品は、そこらあたりを狙った作品だと言う事になります。ファイティングファンタジーシリーズは、シリーズが進んでゆくにつれて物語世界が構築され、タイタンという架空の世界を舞台にしたものが主流になるのですが、もう一方で『宇宙の暗殺者』、『宇宙の連邦捜査官』、『サイボーグを倒せ』、『ロボットコマンドゥ』などのSF作品も作られてゆきます。またホラー作品『地獄の館』、マッドマックス風『フリーウェイの戦士』、東洋風の世界観をもつ『サムライの剣』などの異色作も続々作られてゆきます。この辺りの、世界観が一挙に多様化した頃が、ゲームブックが一番面白かった絶頂期に当たるのではないかと思います。

 この『さまよえる宇宙船』は、S.ジャクソンの世代的なものもあるのでしょうが、SF作品としては、設定がちょっと古めです。50年代、60年代の『禁断の惑星』だとか、『宇宙家族ロビンソン』だとか、ああいうレトロ調のSFといった感じです。迷宮の通路の代わりに宇宙空間を進み、部屋のかわりに惑星探査を行なうといった感じで、大きな流れは通常のゲームブックと代わりません。雰囲気は良いのですが難点として、パラメーター数が340しかないこと(普通は400前後)、惑星や住人の文明描写に多くページを割く必要があることなどから、わりとあっさりと終わってしまう(世界が狭い)という印象がありました。ゲーム自体を楽しむというよりも、古典的なスペースオペラ世界を体験するための作品というのが、正しい捉え方なのかもしれません。

 ハヤカワのSF作品などに慣れ親しんだ人ならば、より楽しめる作品かもしれません。私は『スターウォーズ』に衝撃を受けてSFに目覚めた方なので、残念ながらスタートレックはあまりわかりません。スタートレックがわかる人ならば、元ネタも理解できてより細部まで味わえるかも。ただ、懐かしい古典的なSFの雰囲気は、なかなか味があってよい感じです。

ゲームブック・運命の森・社会思想社

2007-02-24 21:23:37 | ゲームブック

 『運命の森』は、イアン・リビングストンの手による作品で、ファイティング・ファンタジーシリーズの第3弾です。1982年の『火吹き山の魔法使い』の好評を受ける形で、2作目『バルサスの要塞』(S・ジャクソン)に続いて、同じ83年に発表されました。日本では、社会思想社より85年に出版されています。

 第1作目の『火吹き山』が、RPGの基本に忠実な、ダンジョンを舞台にしたものであるのに対して、第2作目『バルサス』は、要塞を舞台としたキャッスル・アドベンチャー、第3作目の今作は、舞台を野外の森に移してのフィールド・アドベンチャーになります。また、第4作目の『さまよえる宇宙船』ではSFを、5作目『盗賊都市』では、町を舞台としたシティ・アドベンチャーと、RPGの基本を一通り体験できるようになっています。このあたりのバランス感覚のよさが、ファイティング・ファンタジーシリーズが、常にゲームブックブームの中心にあった理由の1つであるような気もします。

 今作でプレイヤーは、ダークウッドの森を探索して、ドワーフの村より盗まれた『戦いのハンマー』を探し出し、森を抜けた所にあるドワーフたちの領地・ストーン・ブリッジへと届ける事になります。森の入り口には、高レベルの魔法使い『ヤズトロモ』の塔が立っており、ここで彼よりマジックアイテムを購入する事になります。第2作目『バルサス』にも似た設定ですが、これは金貨2枚とか3枚などの値段の付いた完全なアイテム扱いとなっており、プレイヤーは魔法の使えない戦士(あるいはレンジャー?)という事になります。またここで、いたずら心を出してヤズトロモに襲い掛かると、お約束ともいえる仕打ちが待っており、高レベルの魔法使い(彼には勝てない)という設定に、より深みを持たせるようになっています。

 ゲーム自体は、実はシリーズ中でもかなり簡単な部類に入ります。閉鎖的な迷宮と異なり、オープン・フィールドということもあって、どこか牧歌的でハイキングのような雰囲気ももっています。森の入り口には、お約束とも言える左右の分岐看板とカラスがとまっており、彼にどちらに行ったらよいかアドバイスを貰うところから冒険が始まります。設定では、昼なお暗く木々が鬱蒼と茂る迷いの森なのですが、迷路の構造がシンプルなので(2~3本くらいしか分岐がない)、迷うはずもなく実にあっさり風味です。登場する敵も、ホブゴブリン、オーガー、半魚人、猿人、盗賊などと、基本に忠実な感じです。またダークウッドの森を抜けた後、森を迂回してヤズトロモの塔に戻れる迂回路があるという設定のため、(生命力が残っていれば)何度でも挑戦できるシステムになってますので、それがより難易度を下げています。

 私は、ゲームブックに関する思い出というと、寒い冬の夜に勉強するフリをして熱中した思い出だとか、土曜日の帰り道などにデパート内の書店によってどれを買おうかと迷ったりした事だとか、楽しげなイメージがくっ付いています。書籍という印象よりも、もっと楽しげなゲームソフト的なイメージです。そのため今でも、この手の本を見つけるとけっこう楽しげな気分になります。実際買っても、遊んだりはほとんどしないのですが、そのほんわかとした気分を感じるために、手に取っているのかもしれません。

ゲームブック・スーパーブラックオニキス・東京創元社

2007-02-11 13:50:34 | ゲームブック

 『スーパーブラックオニキス』は、1987年に東京創元社より発行されたゲームブックです。作者は、ドルアーガ3部作の鈴木直人氏。PCで人気だったCRPG『The Black Onyx』の世界をゲームブックで再現したものです。また同時期に、FC版でもスーパーブラックオニキスが発表されていました。


 オリジナルの『The Black Onyx』は、CRPG出始めの作品ということもあって、純粋に戦闘を繰り返してキャラの成長を楽しむ、ほとんどイベントらしいイベントも無いWIZタイプのゲームでした。このゲームブック版では、物語性をもたせるためにオリジナルキャラの追加など、幾つかのオリジナル要素を加えてあります。その上でパーティを組んで街と迷路を行き来することができるなど、ゲームブックでは不可能だと思われるようなCRPGの再現も試みられています。写真は、MSX版『The Black Onyx』


 物語は、呪われた町ウツロに赤毛の若者がたどり着いたところから始まります。ここには富と永遠の若さをもたらす秘宝Black Onyxが隠されており、町は司法官マサイヤによって管理されています。主人公は秘宝を求める探索を続けるうちに、町を覆う事件に巻き込まれてゆくことになります。オリジナル版のウツロの町には、領主や管理者らしき者は存在しませんでしたので、司法官マサイヤはゲームブック版の独自キャラになります。表紙にでかでかと登場する坊主頭の人物がそうなのですが、独自キャラのクセになかなか強烈な人物です。この人物がゲームの鍵を握り、ラスボス的な役割を果たす事となります。

 またオリジナル版では職業の概念がなく、全員が戦士のパーティで冒険をするようになっていました。今作では、盗賊、魔術師、僧侶からなるパーティを組むことになります。驚くべきことに、それぞれの職業ごとに性格の異なる3種類ずつのキャラが準備され、選んだキャラによってイベントが変化するなど、非常に凝っています。またダンジョンには何度でも入ることが可能で、前作ドルアーガ3部作でも使われた双方向の移動ができるようになっています。町と迷宮を往復して装備を強化したり、アイテム収集をするなどの、CRPGの要素をゲームブック上でできるだけ再現しようとしているわけです。


 この凝ったシステムをどのようにして再現しているかというと、キャラクターシートにチェック表が備えられており(実に70箇所にも及ぶ)、どこかで何かを行ってフラグがたった場合に、チェックするようになっています。また同時に時間制限もあり、ウツロの町に入って20日間が経過してしまうと、マサイヤの野望が完了してしまうためゲームオーバーになってしまいます。そのためチェックシートにも、日にちを管理するカレンダーが付いています。前作ドルアーガでみせたゲームブックの限界に挑戦する試みが、さらに突き詰められた形で行われているわけです。そのため作者本人も、上級者むけだとわざわざことわっているほどです。日本製ゲームブックとしては、最も良く出来たもののうちの1つだと言えるでしょう。


 作中の雰囲気も、オリジナル版とは異なった独特な世界観になっていますが、神秘性は失われておらず、なかなかいい感じです。これはオリジナルキャラ、司法官マサイヤが成功している事もあるのでしょう。現在遊ぶ場合ですが、当時ものをブックオフなどで手に入れることはなかなか難しいと思います。創土社より復刻が予定されていますので、そちらを待って入手されるほうが確実だと思います。

ゲームブック・バルサスの要塞・社会思想社

2007-02-10 22:08:59 | ゲームブック

 ファイティングファンタジー第2段『バルサスの要塞』は、1983年(日本では85年)に発表されたスティーブ・ジャクソンの作品です。前作『火吹き山の魔法使い』の好評を受けるかたちで執筆され、要塞を攻略するキャッスルアドベンチャーと呼ばれる形式のシナリオとなっています。また新要素として魔法の概念が加えられています。

 主人公(読者)は、魔法使いの若き弟子となって、ぎざ岩高地にある塔に住む邪悪な妖術使いバルサス・ダイアの要塞に侵入し、彼を倒す事が目的となります。今作の売りのひとつでもある魔法は、魔法点に応じてあらかじめ何種類かを選んでおくシステムとなっています。攻撃用の魔法の他、千里眼、浮遊、怪力など、どれが冒険に有効で必要なのか悩みつつ、持ってゆく魔法を選択することとなります。感覚としては、魔法のアイテムや御札、スクロールを選んで持ってゆくような感じです。

 舞台は敵の要塞で、主人公の目的は敵に悟られる事なくそこに侵入することですから、嘘をついて門番を上手くかわすなど、なるべく争いを上手に避けて進む必要があります。要塞の中庭を横切って(ここでも敵を欺く必要がある)、今度は要塞の中に入るために衛兵に合言葉を言わなくてはなりません。途中で敵にやられても、必ずそこで終わりというわけでもなく、牢屋に捕まってそこから脱出する展開になったりと、要塞という設定が上手く生かされています。また要塞内の図書館で調べ物をしたり、バルサス夫人の寝室に飛び込んだりと、要塞内での敵の生活を感じさせる描写もなかなか見事です。それ以外にも堀の真ん中においてある宝箱や、生きている干し肉などの罠も印象的で、こういう細かい世界観にこだわる設定というのは、海外作品ならではの部分だったと思います。

 シティアドベンチャーの傑作『盗賊都市』(リビングストン著)や、この『バルサスの要塞』などで得た着想の集大成が、のちに『ソーサリー』として結実しているような感じをうけます。ソーサリー4巻『王たちの冠』は、最終ボスの要塞を攻略する話ですが、その原型をこの『バルサス』に見ることができます。余談なのですが、王達の冠では要塞内に傭兵たちの便所の描写まであって(ご丁寧に汚いイラスト付き)、そこは病気になったり気分が悪くなるトラップになっているのですが、そりゃ傭兵が居ればそういう設備は必ず必要だよな、と妙に納得してしまった覚えがあります。こういう本編とは直接関係のない、細かな描写が作品内世界にリアリティを与え、登場する生物にも実存感を与えたりするのでしょう。

 当時遊ばれた方には、お馴染みのヒドラやガンジーを倒すと、バルサス・ダイアとの対決となります。当時遊ばれた方のほとんどが、同じことを感じたと思うのですが、実はバルサス・ダイアは怪物ではありません。若々しく輝く、鍛え抜かれた肉体をもったモヒカンの妖術師なのです。表紙に大きく登場している彼は、実はバルサスではありません。雑魚敵としても登場せず、彼が一体何者なのかは作品中でも語られないまま終わってしまいます。このあたりの不思議な感覚も、海外作品独特のような気がします。


 現在遊ぶ場合には、扶桑社より復刻版が発売されています。またFF初期作品で、かなり売れたためかブックオフなどでも入手しやすいと思います。日暮れとともに要塞に侵入して、夜明けとともにバルサスを倒す展開で、実はたった一晩の冒険の話です。そのため非常にコンパクトに纏まっていて、FFシリーズの中でも良く出来た作品の1つだと思います。

ゲームブック・ソーサリー・東京創元社

2007-01-28 13:31:18 | ゲームブック

 『ソーサリー』は、1983年~85年にかけて発表された4部構成のゲームブックです。ゲームブック第1人者スティーブ・ジャクソンの作品であり、彼の代表作というだけではなくゲームブックの最高傑作と言われる事もあります。日本では、東京創元社により85年に出版されました。また最近になって創土社より復刻版も発売されています。


 85年といえば『スーパーマリオ』の大ブームにより、一般的にもファミコンやゲームが認知され始めた年でした。前年84年にゲームブック第1弾の『火吹き山の魔法使い』も出版されて、ゲームブック的にも盛り上がっていた頃だったと思います。『火吹き山の魔法使い』は、S・ジャクソンと、I・リビングストンという2人のゲームデザイナーによる共同作品だったのですが、それ以降の単独作品では、ストーリーや世界観に凝るリビングストンと、新しいルールや仕掛け・ゲーム性に凝るジャクソンという、2人の個性の違いがよく現れていました。例えばジャクソンは、FFシリーズ第2作『バルサスの要塞』で魔法を使うシステムを導入したり、『モンスター誕生』では主人公を自分の意思で操れない怪物にしたりといった具合です。もう一方のリビングストンは『盗賊都市』や『死の罠の地下迷宮』など、世界観を表現する事に重きをおいた作風でした。


 冒険の始まり魔法使いの丘、割とオーソドックスな作り。


 盗賊都市と並ぶインパクトを誇る城塞都市カーレ。


 急展開をみせる七匹の大蛇。


 パラグラフ800項を誇るクライマックス王たちの冠。

 本作はジャクソンの最高傑作と呼ばれる事もあり、物語もシステム的にも凝りに凝ったものとなっています。まず1つには、4つのシナリオを横断してゆくキャンペーンと呼ばれる形式をとっています。主人公は第1巻『魔法使いの丘』で旅立ち、『城塞都市カーレ』を抜けて、途中で敵の諜報員である『七匹の大蛇』を阻止して、『王たちの冠』で敵の要塞に乗り込む事となります。これらひとつひとつが、一冊のゲームブックに匹敵するボリュームを持っていて、それぞれフィールドアドベンチャー(1巻)、シティアドベンチャー(2巻)、スパイである7匹の大蛇を何匹倒せたかを競う追跡もの(3巻)、キャッスルアドベンチャー(4巻)と異なった形式のシナリオになっています。FFシリーズの標準的なパラグラフ数は400前後ですが、この『ソーサリー』は1巻(456)、2巻(511)、3巻(498)、4巻にいたっては(800)となっていますので、そのスケールの大きさが伺えます。


 ある意味一番のインパクトを放つ、カーレの下水道に潜むスライムイーター。

 また本作の一番の特徴といえるのは、3文字のアルファベットを組み合わせた個性的な魔法のシステムでしょう。プレイヤーは、冒険前に戦士か魔法使いかの職業を選択します。魔法使いを選んだ場合には、冒険に出る前に魔法の書に目を通して魔法を覚える必要があります。この魔法は、ZAPとかGOB、WALなどの3文字の組み合わせからなっており、冒険に出た後では、魔法の書を見ることはできません。(秘密が漏れるのを防ぐため持ち歩けない) 意味のわかりやすい組み合わせならよいのですが、ほとんどは意味のわからない3文字の記号になっていますから、プレイヤーの理解度がそのまま主人公の魔法熟練度になるという、かなり画期的なシステムだったと思います。意地悪な事に、効果のない実在しない組み合わせも選択肢中に登場しますので、デタラメではなかなか通用しないようになっています。


 これは、当時累計120万部のベストセラーとなったそうで、書店や古本屋などでも良く見かけました。個人的には、古本屋で入手してズルをしながら読み進める感じで、楽しんだ記憶があります。まともに遊んだら、4巻を通しての難易度は半端じゃなくありますので、当時悪戦苦闘された記憶のある方も多いのではないでしょうか。ネタばれになりますので詳しくは書きませんが、4巻ラストのトリックは目から鱗が落ちるような出来で、ゲームブックという枠を超えていたように思います。現在でも創土社より復刻版が発売されていて、携帯版やソーサリーリプレイを題材にしたブログなどもあるようです。古本屋でも結構見かけますので、もし見つけたら手にとって当時を思い出してみるのも良いのではないでしょうか。