
『ソーサリー』は、1983年~85年にかけて発表された4部構成のゲームブックです。ゲームブック第1人者スティーブ・ジャクソンの作品であり、彼の代表作というだけではなくゲームブックの最高傑作と言われる事もあります。日本では、東京創元社により85年に出版されました。また最近になって創土社より復刻版も発売されています。

85年といえば『スーパーマリオ』の大ブームにより、一般的にもファミコンやゲームが認知され始めた年でした。前年84年にゲームブック第1弾の『火吹き山の魔法使い』も出版されて、ゲームブック的にも盛り上がっていた頃だったと思います。『火吹き山の魔法使い』は、S・ジャクソンと、I・リビングストンという2人のゲームデザイナーによる共同作品だったのですが、それ以降の単独作品では、ストーリーや世界観に凝るリビングストンと、新しいルールや仕掛け・ゲーム性に凝るジャクソンという、2人の個性の違いがよく現れていました。例えばジャクソンは、FFシリーズ第2作『バルサスの要塞』で魔法を使うシステムを導入したり、『モンスター誕生』では主人公を自分の意思で操れない怪物にしたりといった具合です。もう一方のリビングストンは『盗賊都市』や『死の罠の地下迷宮』など、世界観を表現する事に重きをおいた作風でした。

冒険の始まり魔法使いの丘、割とオーソドックスな作り。

盗賊都市と並ぶインパクトを誇る城塞都市カーレ。

急展開をみせる七匹の大蛇。

パラグラフ800項を誇るクライマックス王たちの冠。
本作はジャクソンの最高傑作と呼ばれる事もあり、物語もシステム的にも凝りに凝ったものとなっています。まず1つには、4つのシナリオを横断してゆくキャンペーンと呼ばれる形式をとっています。主人公は第1巻『魔法使いの丘』で旅立ち、『城塞都市カーレ』を抜けて、途中で敵の諜報員である『七匹の大蛇』を阻止して、『王たちの冠』で敵の要塞に乗り込む事となります。これらひとつひとつが、一冊のゲームブックに匹敵するボリュームを持っていて、それぞれフィールドアドベンチャー(1巻)、シティアドベンチャー(2巻)、スパイである7匹の大蛇を何匹倒せたかを競う追跡もの(3巻)、キャッスルアドベンチャー(4巻)と異なった形式のシナリオになっています。FFシリーズの標準的なパラグラフ数は400前後ですが、この『ソーサリー』は1巻(456)、2巻(511)、3巻(498)、4巻にいたっては(800)となっていますので、そのスケールの大きさが伺えます。

ある意味一番のインパクトを放つ、カーレの下水道に潜むスライムイーター。
また本作の一番の特徴といえるのは、3文字のアルファベットを組み合わせた個性的な魔法のシステムでしょう。プレイヤーは、冒険前に戦士か魔法使いかの職業を選択します。魔法使いを選んだ場合には、冒険に出る前に魔法の書に目を通して魔法を覚える必要があります。この魔法は、ZAPとかGOB、WALなどの3文字の組み合わせからなっており、冒険に出た後では、魔法の書を見ることはできません。(秘密が漏れるのを防ぐため持ち歩けない) 意味のわかりやすい組み合わせならよいのですが、ほとんどは意味のわからない3文字の記号になっていますから、プレイヤーの理解度がそのまま主人公の魔法熟練度になるという、かなり画期的なシステムだったと思います。意地悪な事に、効果のない実在しない組み合わせも選択肢中に登場しますので、デタラメではなかなか通用しないようになっています。

これは、当時累計120万部のベストセラーとなったそうで、書店や古本屋などでも良く見かけました。個人的には、古本屋で入手してズルをしながら読み進める感じで、楽しんだ記憶があります。まともに遊んだら、4巻を通しての難易度は半端じゃなくありますので、当時悪戦苦闘された記憶のある方も多いのではないでしょうか。ネタばれになりますので詳しくは書きませんが、4巻ラストのトリックは目から鱗が落ちるような出来で、ゲームブックという枠を超えていたように思います。現在でも創土社より復刻版が発売されていて、携帯版やソーサリーリプレイを題材にしたブログなどもあるようです。古本屋でも結構見かけますので、もし見つけたら手にとって当時を思い出してみるのも良いのではないでしょうか。
日本のRPGはアニメなどの影響が強くて小綺麗な印象がありますが、あちら製のものは、リアル嗜好で無骨な印象ですね。これは街の下水の中に落ちたり、そこにはスライムイーター(肥喰らいと訳されていた)がぬるぬる、どろどろと潜んでいたり・・徹底的にリアルで汚いです。
海外のゲームって決して遊びやすいとはいえないのですが、なんだが捨てがたい魅力もありますね。
先日RSSリーダーに次のアプリの情報が入りました。
ゲームブックとくれば「80年代Cafe」様。
コメント欄を借りて紹介させていただきます。
古典ゲームブック『ソーサリー』が iPadで復活、『魔法使いの丘』から (動画) - Engadget Japanese
http://japanese.engadget.com/2013/05/02/ipad/
以前のHPでの『死神の首飾り』のリプレイが未完結ですが、
先にソーサリーのリプレイやりたいなと思っていたりします。
久しくプレイしていないので最善ルートの記憶が曖昧、
だからこそ波乱万丈のリプレイになりそうでワクワクです。
いつ始めるか未定ですが、(時間があれば)たまには覗いてみてください。
あの世界観を再び追体験できるものが出来れば、懐かしく楽しいものになるかもしれません。